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新しい出会い

36.領地1

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 その後、貴族子弟は、行方不明となったままで、帰ってくることはなかったのだ。親の立場でも、もともとごくつぶし的なところがあったので、無理に探さず。放っておいた。

 叙勲の時のジャクリーン・アナザーライト子爵に渡す領地が決まる。

 今日は、それの視察を兼ねて、エルモアとキャサリン王女と共に王室属領の一部を見に来ている。

 エルモアは、この地を訪れるのが2回目、前世から数えて3度目の訪問となる。

 前世は、キャサリン王女と婚約直前にGame Overとなってしまい、泣く泣くこの世に戻ってきた。今年はそれが1年生の時にかなうとは、夢にも思っていなかったことに、少々興奮している。

 やっぱり、悪役令嬢と共に行動していると、いろいろと好都合なことが起こるかもしれない。

 馬車は王家の領地の前に止まり、それを見て回ることにした。

 「どれを頂けるのかしら♪」

 「「は??」」

 エルモアとキャサリン王女は、同時に声を上げる。

 「どれって、ここ全部の土地ですわ。」

 「そうだよ。ジャッキーの好きなように開拓してもらえばいいのだよ。」

 「へ?そうなのですか?もう、個々の土地?はわたくしのものなのですか?」

 「そういうことになるな。」

 「それでは、実験します。」

 ジャクリーンは、頭の中で土地を異動させる。と、本当に数メートルだが、横にズレる。

 「ウソ!?動いた。」

 「なんだ?ジャッキーは、通路のために領地が欲しいと言ったのか?」

 「領地だなんて申しておりません。不動産を下さいとお願いしたはずです。」

 「同じことではないか!?」

 「いやいや相当違いますわ。もうマンションは、いっぱいで、落ち着かないので、新しい建物でもいただければいいかな?と思っただけです。」

 「はぁ……。」

 エルモアは心底呆れたという風に、大きくため息を吐く。

 「でも、せっかくなので頂戴することにいたしますわ。わたくしが通路を作ることにより、この国の流通がおそらく革命的に進化するはずでございますから・

 「そうだろうな。」

 まずは、ここに一膳めし屋を作ることにしよう。旅人は、新しい土地に来ると、まずそこで、飯を食べたいものだろう。カラダにやさしい薬膳もいいかもしれない。前々々世で培った、バランスの良い料理を提供できれば、繁盛すること間違いなし。

 この土地では、オーガニックな野菜を作ろう。自給自足ではないが、それを飯屋で提供する。

 そして、前世の高速道路のインターチェンジのように通行税をとり、一瞬で行ける通路をたくさん作る。商人から1回あたり、いくらでという取り決めを考えなきゃなんないけど、それは商業ギルドに任せてしまった方がいいだろうか?

 前世のような料金所を置き、そこで徴収すれば問題ないかな?

 ジャクリーンは、この広大な土地を目の前にして、思いついたことをノートに書き写していく。前世からのクセで、思いついたことは何でも書き写すことにしている。

 国民のために利益となる土地を有効活用する。それが本来与えられた天領?の使命だとさえ感じるのだ。

 それにレバトリー家の領地とつなげたいという思いもある。そして、もう一つはこの土地に大型の病院を建設すること。老人介護施設も兼用できるような施設がいいと思う。

 できれば、郊外のニュータウンのような大型ショッピングセンターと団地の建設。この世界の人には、まだなじみが薄いかもしれないので、30坪~50坪程度の新築1戸建てをプレハブで建てたい。

 プレハブの利点は、重心が下にあり、壊れにくい。パネル工法と言い、同じパネルを何枚か組み合わせることにより、コストを削減できる。

 できれば、学校も。学園のような高校からでなく、小学校から大学までを一貫教育を目指したい。

 レバトリー家で収穫した農作物をこの地で販売できたらいい。

 ここまで考えて、問題点を見つけることも容易くなってきた。まず人材。次に資源。次にお金。これらを一挙に解決する方法をまだ全然考えていない。

 この土地は、元来、王家の王族の保養地であったことを目的としている。だから、ここに住む人間は必要最低限度の人数しかいない。

 まずは人手を確保すること、それが先決。次に住むところ、仕事を増やす。それの潤滑剤がお金ということ。

 なぜ、大学時代に、もっと金融経済を勉強してこなかったのかと今更ながら、悔やまれる。短い一生、いい男をつかまえることにしか興味を持てなかった人生は儚い。

 やっぱり、大検目指そうかな?でも後2年と3か月後には断罪劇が待っている。もう今更何をしても手遅れ感がある。

 今世こそ、Game Clearしてもらいたいと切に希望します。

 「お兄様、申し訳ないのですが、考えを整理したいので、いったんマンションの書斎へ帰ります。つきましては、お兄様たちはどうなさいますか?」

 「どうって、言われてもな。この土地の領主はジャッキーなのだから。」

 「では、王城の馬車駐めのあたりまでなら、送ることができますが、そこでも構いませんでしょうか?」

 「ああ。頼むよ。」

 この辺に料金所をと、思っていたあたりで、王城の馬車駐めを思い浮かべると、先ほどまでのだだっ広い景色は一部なくなり、微妙に歪んだ空間ができる。

 「ここをまっすぐ行ってもらえると。たぶん、馬車駐めに行けるかと存じます。では、ごきげんよう。」

 「たぶんって、なぁ。おい!」

 ジャクリーンは、踵を返して、女子寮を目指す。
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