前世記憶持ちの悪役令嬢は聖女様呼ばわりされることが嫌で嫌で仕方がない~乙女ゲームのヒロインにゲームクリアしてもらうために奮闘する

青の雀

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新しい出会い

13.デビュタント

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 前世、幸せのまま最後を迎えたので、今世は最初からマーロン・ブラウデン狙いに絞る。エルモアもブルオード国の王女様といい雰囲気になったとかで、嫁にするつもりだ。と息巻いている。

 今度こそ、乙女ゲームのヒロインにハピエンして、ゲームクリアしてもらいたいもの。

 いつかは、現代ニッポンに帰りたい。また乙女ゲームの世界だなんて、うんざりよ。そのために悪役令嬢の座を降りたというのに、乙女ゲームの強制力か、他人の妻になってまでもなお、旧姓のアナザーライト呼ばわりされるなんて、たまったものではない。

 乙女ゲームの世界のように、とびきりの美人でなくても、十人並みの容姿で、大好きな人から愛される存在であり、毎日お風呂に浸かって、温かいお味噌汁が飲めればいい。そんな平凡な夢しかない。

 だから今度こそ、ゲームクリアしてほしいと切実に願っているわけで、でもこの世界のマーロン様に不満はない。だから、また転生して、マーロン様の妻になれるのであれば、この世界で生きる意味もあろうかと思う。

 ところが、12歳になり、エドモンドの婚約者は相変わらずスルーできたものの。肝心のマーロン様との婚約が暗礁に乗り上げることになってしまう。

 第1王子殿下の婚約がまだだというのに、公爵家の嫡男の婚約は難しいというのがブラウデン公爵家側の言い分なのだが、前々世でカーネルの婚約者の令嬢が急遽、マーロン様と婚約したいと言い出したことがきっかけで、アナザーライト家との調整がつかないというところが本音のようだ。

 やっぱりデビュタントまで待たないと無理かなぁ。

 普通に考えれば、前々世の婚約者の方が、家格が上だろうから、やんわりと断られているのかもしれないけれど、15歳まで様子見して、それでダメならブルオードへ留学することも視野に入れよう。

 そうよね。マーロン様は人気があって当然だと思うわ。物腰が穏やかで優しい物言い、それにセックスも上手ときたら、ふつうの令嬢が放っておくはずがない。

 エドモンドと比べれば、月とスッポン状態だもの。

 そうこうしているうちに、デビュタントが近づいてくる。ドレスは前世と同様の仕立て屋さんに頼むが、コルセットだけは、前々々世通販のネットショッピングでストラップなしのボディスーツを買い込む。これなら自分で脱いで着ることができる。

 ついでにパンティストッキングも買っておこう。ハイヒールを履いても、これなら靴擦れの心配をしなくてもいい。

 今は薄いガードル上のもので、かなり見た目シェイプできるものも売っているけど、それではブラジャーをヌーブラにするには、ちょっとジャクリーンは放漫すぎる。だからボディスーツならブラジャー部分もカバーしてくれる。

 仮縫い時、そのボディスーツを着込んで仮縫いしたから、たぶんサイズ的にこれで大丈夫だと思う。

 デビュタント当日、女の子の日にならないように、ピルで調整する。

 いい男がいれば、カラダを投げ出してまでも取りに行かなきゃ。誰かに取られてしまう。

 デビュタントの日が来た。今世はどういうわけか、エドモンドがエスコートしてくれることになったので、嫌な予感がする。ファーストダンスもエドモンドが、率先してパートナーになってくれた。

 えー!マジー?

 エルモアは、とみると同じように公爵令嬢に取っ捕まっている。双子だからわかる。独特の嫌そうな笑顔を張り付け、次から次へと公爵令嬢の間を渡り歩いているよう。

 エドモンド殿下は、ダンスの最中から、しきりに話しかけてくるが、つまらない話ばかり。適当に聞き流すことにしていると、最後の方になってから、とんでもないような提案が聞こえてくる。

 「この後、二人で控室に行かないか?」

 エドモンドは頬を紅潮させ、明らかにアノ目的で誘ってくる。

 「イヤです。」

 「へ?」

 間抜けな声が聞こえてくる。

 「ごきげんよう。」

 曲が終わったので、そそくさとエドモンドから離れる。

 そして壁際によりかかるようにして、あー気持ち悪い。と独り言をつぶやく。その声が聞こえたのか、クスクスと笑われ、声の方を見ると、茶髪にブラウンアイのなかなかのイケメンが佇んでいる。

 こんな人、いたっけ?でもこの場にいるということは、貴族令息なのだろう。

 「レディ・ジャクリーン。よろしければ私と踊っていただけますか?」

 エドモンドよりはマシかと思い、その手を取る。

 その男性は宰相閣下の嫡男で、シャルマン・レトリバー公爵令息ということがわかる。

 マーロン様とは違い、物静かで穏やかな性格でいらっしゃる。それにものすごく聡明な方だと思う。

 前々々世でもここまで頭がキレる人も珍しいというぐらい。

 必要なことだけをおっしゃり、余計なことは一切言われない。それでもジャクリーンのことを気遣ってくださる優しさは垣間見える。

 ダンスが終わった後、壁際のテーブル席に戻り、この国のこと、将来の夢のことと話は尽きない。

 ふと、よそ見したら、ちょうどマーロン様が令嬢を味見しに休憩室へと向かわれるのが見えた。少し、寂しそうに目で追ってしまった様子をシャルマン様がご覧になっていて、

 「マーロンは、一種の病気だから。男には種の保存という本能があるから、エドモンド殿下とマーロンは、それに忠実なだけですよ。」

 えっ!?

 マーロン様って、そうなの?そういえば、当時17歳で、あそこまでセックスが上手な人も珍しいとは、思っていたけど……まさかね。

 あれは相当に経験を積んだに違いないって言うほどテクニシャンだったような?それにエドモンドもそうだとは、だからヒロインが転入してくるたびに、浮気するような男だったのか。妙に納得する。
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