前世記憶持ちの悪役令嬢は聖女様呼ばわりされることが嫌で嫌で仕方がない~乙女ゲームのヒロインにゲームクリアしてもらうために奮闘する

青の雀

文字の大きさ
上 下
13 / 76
新しい出会い

13.デビュタント

しおりを挟む
 前世、幸せのまま最後を迎えたので、今世は最初からマーロン・ブラウデン狙いに絞る。エルモアもブルオード国の王女様といい雰囲気になったとかで、嫁にするつもりだ。と息巻いている。

 今度こそ、乙女ゲームのヒロインにハピエンして、ゲームクリアしてもらいたいもの。

 いつかは、現代ニッポンに帰りたい。また乙女ゲームの世界だなんて、うんざりよ。そのために悪役令嬢の座を降りたというのに、乙女ゲームの強制力か、他人の妻になってまでもなお、旧姓のアナザーライト呼ばわりされるなんて、たまったものではない。

 乙女ゲームの世界のように、とびきりの美人でなくても、十人並みの容姿で、大好きな人から愛される存在であり、毎日お風呂に浸かって、温かいお味噌汁が飲めればいい。そんな平凡な夢しかない。

 だから今度こそ、ゲームクリアしてほしいと切実に願っているわけで、でもこの世界のマーロン様に不満はない。だから、また転生して、マーロン様の妻になれるのであれば、この世界で生きる意味もあろうかと思う。

 ところが、12歳になり、エドモンドの婚約者は相変わらずスルーできたものの。肝心のマーロン様との婚約が暗礁に乗り上げることになってしまう。

 第1王子殿下の婚約がまだだというのに、公爵家の嫡男の婚約は難しいというのがブラウデン公爵家側の言い分なのだが、前々世でカーネルの婚約者の令嬢が急遽、マーロン様と婚約したいと言い出したことがきっかけで、アナザーライト家との調整がつかないというところが本音のようだ。

 やっぱりデビュタントまで待たないと無理かなぁ。

 普通に考えれば、前々世の婚約者の方が、家格が上だろうから、やんわりと断られているのかもしれないけれど、15歳まで様子見して、それでダメならブルオードへ留学することも視野に入れよう。

 そうよね。マーロン様は人気があって当然だと思うわ。物腰が穏やかで優しい物言い、それにセックスも上手ときたら、ふつうの令嬢が放っておくはずがない。

 エドモンドと比べれば、月とスッポン状態だもの。

 そうこうしているうちに、デビュタントが近づいてくる。ドレスは前世と同様の仕立て屋さんに頼むが、コルセットだけは、前々々世通販のネットショッピングでストラップなしのボディスーツを買い込む。これなら自分で脱いで着ることができる。

 ついでにパンティストッキングも買っておこう。ハイヒールを履いても、これなら靴擦れの心配をしなくてもいい。

 今は薄いガードル上のもので、かなり見た目シェイプできるものも売っているけど、それではブラジャーをヌーブラにするには、ちょっとジャクリーンは放漫すぎる。だからボディスーツならブラジャー部分もカバーしてくれる。

 仮縫い時、そのボディスーツを着込んで仮縫いしたから、たぶんサイズ的にこれで大丈夫だと思う。

 デビュタント当日、女の子の日にならないように、ピルで調整する。

 いい男がいれば、カラダを投げ出してまでも取りに行かなきゃ。誰かに取られてしまう。

 デビュタントの日が来た。今世はどういうわけか、エドモンドがエスコートしてくれることになったので、嫌な予感がする。ファーストダンスもエドモンドが、率先してパートナーになってくれた。

 えー!マジー?

 エルモアは、とみると同じように公爵令嬢に取っ捕まっている。双子だからわかる。独特の嫌そうな笑顔を張り付け、次から次へと公爵令嬢の間を渡り歩いているよう。

 エドモンド殿下は、ダンスの最中から、しきりに話しかけてくるが、つまらない話ばかり。適当に聞き流すことにしていると、最後の方になってから、とんでもないような提案が聞こえてくる。

 「この後、二人で控室に行かないか?」

 エドモンドは頬を紅潮させ、明らかにアノ目的で誘ってくる。

 「イヤです。」

 「へ?」

 間抜けな声が聞こえてくる。

 「ごきげんよう。」

 曲が終わったので、そそくさとエドモンドから離れる。

 そして壁際によりかかるようにして、あー気持ち悪い。と独り言をつぶやく。その声が聞こえたのか、クスクスと笑われ、声の方を見ると、茶髪にブラウンアイのなかなかのイケメンが佇んでいる。

 こんな人、いたっけ?でもこの場にいるということは、貴族令息なのだろう。

 「レディ・ジャクリーン。よろしければ私と踊っていただけますか?」

 エドモンドよりはマシかと思い、その手を取る。

 その男性は宰相閣下の嫡男で、シャルマン・レトリバー公爵令息ということがわかる。

 マーロン様とは違い、物静かで穏やかな性格でいらっしゃる。それにものすごく聡明な方だと思う。

 前々々世でもここまで頭がキレる人も珍しいというぐらい。

 必要なことだけをおっしゃり、余計なことは一切言われない。それでもジャクリーンのことを気遣ってくださる優しさは垣間見える。

 ダンスが終わった後、壁際のテーブル席に戻り、この国のこと、将来の夢のことと話は尽きない。

 ふと、よそ見したら、ちょうどマーロン様が令嬢を味見しに休憩室へと向かわれるのが見えた。少し、寂しそうに目で追ってしまった様子をシャルマン様がご覧になっていて、

 「マーロンは、一種の病気だから。男には種の保存という本能があるから、エドモンド殿下とマーロンは、それに忠実なだけですよ。」

 えっ!?

 マーロン様って、そうなの?そういえば、当時17歳で、あそこまでセックスが上手な人も珍しいとは、思っていたけど……まさかね。

 あれは相当に経験を積んだに違いないって言うほどテクニシャンだったような?それにエドモンドもそうだとは、だからヒロインが転入してくるたびに、浮気するような男だったのか。妙に納得する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚しましたが、愛されていません

うみか
恋愛
愛する人との結婚は最悪な結末を迎えた。 彼は私を毎日のように侮辱し、挙句の果てには不倫をして離婚を叫ぶ。 為す術なく離婚に応じた私だが、その後国王に呼び出され……

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます

平山和人
恋愛
聖女のロザリーは年齢を理由に婚約者であった侯爵から婚約破棄を言い渡される。ショックのあまりヤケ酒をしていると、ガラの悪い男どもに絡まれてしまう。だが、彼らに絡まれたところをある青年に助けられる。その青年こそがアルカディア王国の王子であるアルヴィンだった。 アルヴィンはロザリーに一目惚れしたと告げ、俺のものになれ!」と命令口調で強引に迫ってくるのだった。婚約破棄されたばかりで傷心していたロザリーは、アルヴィンの強引さに心が揺れてしまい、申し出を承諾してしまった。そして二人は幸せな未来を築くのであった。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...