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悪役令嬢として転生
7.魅了魔法
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お妃教育の帰り道、ついふらふらと悪役令嬢ジャクリーンの店に入ってしまったことを今更ながらに後悔しているリリアーヌ。
でも、本当にあこがれを持つぐらい綺麗な顔をしていらっしゃるジャクリーン様。たまたま準備中だったから、2階にある歯医者の方へ先に行く。
さすが世界一の美貌を誇るアナザーライト家の嫡男だけのことはある。正面から、横顔、後姿まで完璧なまでの美形。
攻略対象の5人なんかと比べ物にならない。なぜ、このエルモア・アナザーライトが攻略対象にならなかったのか、いまだにわからない。
受付で、名前と生年月日、住所などを書き、順番に並ぶ。初診の場合だけ、問診票を書きながら待つ。
この世界は魔法がある世界だから、大抵の病気やけがは魔法で何とかなるというものだけど、歯だけは、そういうわけにはいかない。
折れた歯、抜けた歯は、そのままで一生生えてこない。
リリアーヌ自身は、大変魔力量が多いが、それで、攻略対象の中でも、王太子殿下を狙い、玉の輿にあと少しで乗れるところなのだが、なかなか妃教育が難しくて、厳しい。
王太子殿下の婚約者は、皆、貴族令嬢だから5~6年も勉強すれば、基礎ができているから、そう苦労なしに修了できるかもしれないけど、リリアーヌは、つい1年ほど前までは、市井に暮らす平民だったので、努力してもしきれない。
少しでも間違えるようなことがあれば、容赦ない叱責と鞭、体中みみず腫れができているというのに、エドモンドは何もしてくれない。
それどころか、帰宅してからまで、炊事洗濯が待っているという現実。これなら女中と変わらない。
平民の頃の方がまだマシだったと思う。
もし、あの卒業パーティの時に戻れるのならば、ジャクリーン様と婚約破棄しないで、と申し出たことだろう。リリアーヌは、エドモンド殿下に愛されればそれだけで十分です。側室になるのなら、こんな厳しい妃教育を受けなくてもよかったと心から後悔している。
歯医者のリリアーヌの順番が回ってくるや否や、エルモアには、妹の恋敵だとわかる。
「本日は、どのようなことで参られましたか?」
エルモアは、問診票もロクに見ずに、リリアーヌに問う。
「え……と、歯並びの矯正と虫歯があるかどうかを調べていただきたくて……。」
「それでは、まずはレントゲンを撮りましょう。こちらへ来てください。」
リリアーヌはおっかなびっくりで、小部屋に入る。内心、れんとげんとは???
「はい。もういいですよ。」
目の前の光る台に、レントゲンを並べていく先生は、ものすごくかっこいい。本当はマスクを外して、顔をよく見せていただきたいと思っているが、恥ずかしくて、言えない。それに何やら、白いコート状の上着も清潔感溢れかっこいい。
「虫歯は数本ありますね。この黒く見えるところが虫歯です。歯並びの矯正をするには、まず虫歯の治療をしてからとなりますが、大丈夫でしょうか?」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「では、虫歯を削っていき、歯の代わりに詰め物をしますね。痛かったら、手を挙げてください。」
テルモアは、大丈夫な歯も削ってやろうかと一瞬考えたが、医者としての衿持があるから、踏みとどまった。
胸に紙のエプロンを着けてもらい、リリアーヌは緊張しながら、診察台に横たわる。
診察台は、前世から持ってきたもので、靴を履いたまま椅子に腰かけ、背もたれが倒れるというもの。
患者さん目線では、正面にテレビのディスプレイがあるが、ビデオを見せてもいいが、何かとうるさいので、ディスプレイの上に絵画をかけている。
どの患者さんに対してでも、そうなのだが歯の治療を行っている間は、口元以外の顔に白い目隠し上の紙をかぶせる。
それでも紙の上からでもハッキリわかる。リリアーヌ嬢は魅了魔法の使い手だと感じる。
幸い治療時は、細菌から目をガードするために伊達メガネを着用しているため、裸眼であることには変わりがないが、魅了魔法はかかりにくくなっている。
エドモンドや側近の貴族令息の態度は、この魅了魔法にかかっていたのだと推察する。この世界でも王族に対しての魅了魔法は禁忌で、場合によれば極刑となることも免れない。
ただ本人には自覚がないのだろうと思われる。無自覚、無意識に魅了を垂れ流していたとしても重大な罪に問われるだろう。
それに加え、今回の事件を引き起こすきっかけになったと言われれば、もしリリアーヌ嬢が学園に転入してこなければ、王太子殿下をはじめとする貴族令息は、廃嫡廃籍の憂き目にあうこともなかっただろうし、その婚約者であったそれぞれの令嬢の人生も違ったものになったかもしれない。
ドイル男爵の責任も問われることになりかねない。
どうしたものかと思う。父アナザーライト侯爵に打ち明け、王家に報告すべきことではあるが、どちらにせよ不憫な未来しか見えない。
自業自得と言えばそれまでだけど。魔力が膨大であれば、魔術学園ではないところを選んで入学してくれと言いたい。
リリアーヌに簡素な麻酔を嗅がせ、とりあえずジャクリーンに事の仔細の報告だけをする。
ジャクリーンは治療後のリリアーヌのために簡単に食べられて、滋養がつく軽食を用意してくれた。
「これは、お代金は不要です。胃にやさしい食材ばかりを選んで作りましたから、どうぞお召し上がりください。」
ジャクリーンとエルモアからのせめてもの餞別。
でも、本当にあこがれを持つぐらい綺麗な顔をしていらっしゃるジャクリーン様。たまたま準備中だったから、2階にある歯医者の方へ先に行く。
さすが世界一の美貌を誇るアナザーライト家の嫡男だけのことはある。正面から、横顔、後姿まで完璧なまでの美形。
攻略対象の5人なんかと比べ物にならない。なぜ、このエルモア・アナザーライトが攻略対象にならなかったのか、いまだにわからない。
受付で、名前と生年月日、住所などを書き、順番に並ぶ。初診の場合だけ、問診票を書きながら待つ。
この世界は魔法がある世界だから、大抵の病気やけがは魔法で何とかなるというものだけど、歯だけは、そういうわけにはいかない。
折れた歯、抜けた歯は、そのままで一生生えてこない。
リリアーヌ自身は、大変魔力量が多いが、それで、攻略対象の中でも、王太子殿下を狙い、玉の輿にあと少しで乗れるところなのだが、なかなか妃教育が難しくて、厳しい。
王太子殿下の婚約者は、皆、貴族令嬢だから5~6年も勉強すれば、基礎ができているから、そう苦労なしに修了できるかもしれないけど、リリアーヌは、つい1年ほど前までは、市井に暮らす平民だったので、努力してもしきれない。
少しでも間違えるようなことがあれば、容赦ない叱責と鞭、体中みみず腫れができているというのに、エドモンドは何もしてくれない。
それどころか、帰宅してからまで、炊事洗濯が待っているという現実。これなら女中と変わらない。
平民の頃の方がまだマシだったと思う。
もし、あの卒業パーティの時に戻れるのならば、ジャクリーン様と婚約破棄しないで、と申し出たことだろう。リリアーヌは、エドモンド殿下に愛されればそれだけで十分です。側室になるのなら、こんな厳しい妃教育を受けなくてもよかったと心から後悔している。
歯医者のリリアーヌの順番が回ってくるや否や、エルモアには、妹の恋敵だとわかる。
「本日は、どのようなことで参られましたか?」
エルモアは、問診票もロクに見ずに、リリアーヌに問う。
「え……と、歯並びの矯正と虫歯があるかどうかを調べていただきたくて……。」
「それでは、まずはレントゲンを撮りましょう。こちらへ来てください。」
リリアーヌはおっかなびっくりで、小部屋に入る。内心、れんとげんとは???
「はい。もういいですよ。」
目の前の光る台に、レントゲンを並べていく先生は、ものすごくかっこいい。本当はマスクを外して、顔をよく見せていただきたいと思っているが、恥ずかしくて、言えない。それに何やら、白いコート状の上着も清潔感溢れかっこいい。
「虫歯は数本ありますね。この黒く見えるところが虫歯です。歯並びの矯正をするには、まず虫歯の治療をしてからとなりますが、大丈夫でしょうか?」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「では、虫歯を削っていき、歯の代わりに詰め物をしますね。痛かったら、手を挙げてください。」
テルモアは、大丈夫な歯も削ってやろうかと一瞬考えたが、医者としての衿持があるから、踏みとどまった。
胸に紙のエプロンを着けてもらい、リリアーヌは緊張しながら、診察台に横たわる。
診察台は、前世から持ってきたもので、靴を履いたまま椅子に腰かけ、背もたれが倒れるというもの。
患者さん目線では、正面にテレビのディスプレイがあるが、ビデオを見せてもいいが、何かとうるさいので、ディスプレイの上に絵画をかけている。
どの患者さんに対してでも、そうなのだが歯の治療を行っている間は、口元以外の顔に白い目隠し上の紙をかぶせる。
それでも紙の上からでもハッキリわかる。リリアーヌ嬢は魅了魔法の使い手だと感じる。
幸い治療時は、細菌から目をガードするために伊達メガネを着用しているため、裸眼であることには変わりがないが、魅了魔法はかかりにくくなっている。
エドモンドや側近の貴族令息の態度は、この魅了魔法にかかっていたのだと推察する。この世界でも王族に対しての魅了魔法は禁忌で、場合によれば極刑となることも免れない。
ただ本人には自覚がないのだろうと思われる。無自覚、無意識に魅了を垂れ流していたとしても重大な罪に問われるだろう。
それに加え、今回の事件を引き起こすきっかけになったと言われれば、もしリリアーヌ嬢が学園に転入してこなければ、王太子殿下をはじめとする貴族令息は、廃嫡廃籍の憂き目にあうこともなかっただろうし、その婚約者であったそれぞれの令嬢の人生も違ったものになったかもしれない。
ドイル男爵の責任も問われることになりかねない。
どうしたものかと思う。父アナザーライト侯爵に打ち明け、王家に報告すべきことではあるが、どちらにせよ不憫な未来しか見えない。
自業自得と言えばそれまでだけど。魔力が膨大であれば、魔術学園ではないところを選んで入学してくれと言いたい。
リリアーヌに簡素な麻酔を嗅がせ、とりあえずジャクリーンに事の仔細の報告だけをする。
ジャクリーンは治療後のリリアーヌのために簡単に食べられて、滋養がつく軽食を用意してくれた。
「これは、お代金は不要です。胃にやさしい食材ばかりを選んで作りましたから、どうぞお召し上がりください。」
ジャクリーンとエルモアからのせめてもの餞別。
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