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最後の妻 なおみ

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 まどかの事件後、俺が最初に向かったのは、さなえのところだった。
 正直、まだ、さなえを愛していた。ただ、彼女からの離婚を受け入れざるを得なかった。愛していたから、愛した人の最後の望みをかなえたかった。

 深夜にもかかわらず、さなえは「取締役会をしたい。」という俺を受け入れてくれた。
 もう一度、ヨリを戻したいと言った。俺の言葉をさなえは、否定した。

 「今は、仕事が楽しいの♪」
 「今度、課長になれるのよ♪」

 高卒のさなえを管理職に据える上場企業は、大したものだと思った。学歴でなく実力で評価する企業は、素晴らしい会社と言えるだろう。

 「良かったな。」

 その日は、泊った。
 最後に、さなえを抱いた。相変わらず、素晴らしい柔らかさのおっぱいだった。パイ擦りだけでも堪能したが、どうしても挿れたい。一緒に迎えたい。だが、全摘をしたさなえの中は、当たるところがなく物足りなかった。
 そんなことはおくびにも出さず、俺は演技した。最後に優しく抱きしめ、全身にキスをして別れた。

 次に向かったのは、なおみのところだ。
 俺が大学を卒業してすぐの頃、ひっかけられた女だった。今の俺があるのは、なおみのおかげだと言っても過言はない。なおみには、感謝しきれない恩義がある。

 なおみは、何も言わず温かく俺を迎え入れてくれた。以前からの夫婦であったように、甲斐甲斐しく俺の世話を自然にしてくれた。
 
 傷ついた俺には、有難かった。夜、求めても自然に応じてくれた。さなえもそうだったが、最近、若い女とばかり、相手をしていた俺にとって、新鮮だった。ガツガツせず、ゆったりとした大人の女は心地よかった。

 なおみとの間に息子がいる。
 息子は、俺と同じ轍は踏みたくないと言って、法曹界に進んだ。
 俺は、反面教師だと思った。今は、判事をしているそうだ。

 まどかの事件があったから、判事を辞め弁護士に転身するそうだ。

 「なぜ?」

 判事は、身内に事件関係者がいると肩たたきされるそうだ。
 息子は30歳にして「ヤメ半」になる。俺のせいだ。息子の将来に傷を残した。
 俺が若い肉にばかり、うつつを抜かしていたせいで、と悔やんだ。

 俺は、息子を顧問弁護士に選任し、顧問料1億2千万円を支払って、会社の代表権を息子に譲った。

 息子は、一度もまどかとのことを責めず、白い歯まで見せてくれた。

 俺は、一研究員に戻った。
 初心に戻り、一心に研究した。
 すぐいいアイデアが思いついた。
 また、特許を申請した。認められた。
 売れた、〇場製作所が製品にして、航空会社がPBにしてくれた。
 俺の手元に入る金は、研究開発費と取締役報酬だけにした。
 これでいい。
 これだけでいい。
 ありがとう。なおみ

 完
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