転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

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来世:タータン国宿屋の女将として

71.家門の格

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 アイリーンは、ウイルソンのことが前々世の弟に見えて仕方がなかったのだ。

 変ね。このカラダからは年上だというのに。

 結局、国王陛下御夫妻の滞在期間は、一週間にも及んでしまったが、その間、事故もなくスムーズに終わり、機嫌よく帰って行かれることになった。

 アイリーンは、ケビンが心配で、こっそりとケビンのカラダに結界を張り、怪我や病にかからないように祈念する。

 まだ姉根性が抜け切れていないのだ。そういえば前々世の弟は剣聖の異能があったっけ。異能なしと冷遇されていたので、家出した途端、エストロゲンの弟妹の異能メッキがはがれたって聞いたわ。

 今世は、ケビンがこの家を離れるまでは、してあげようと思っている。今回は異能と全く関係ないからね。

 騎士団では、あのマイケルって子がずいぶん、嫌がらせをしてきているみたいだけど、アイリーンの結界のおかげで、怪我ひとつしないケビンは、騎士団の中で、根性があるとみんなに認められてきたそうだ。

 ケビンは、それをあのベッドのせいだと思っている。どんなに疲れて帰ってきても、一晩、ベッドでぐっすり眠れば、翌朝スッキリ、疲れもスッキリになるから。

 だいたい、この宿の一室を貸してくれと申し出たのも、ベッドと食事が特によかったからで、実家の伯爵家のベッドよりも寝やすい。きっと、この宿は親父さんの代から冒険者が多数訪れるような宿だったからかもしれない。

 それをこんな安い値段で、貸してくれるなんて、人が好いのも程があるって言いたいところだけど、助かっていることも事実なのだ。

 新人団員のお給金など、たかが知れている。それにマイケルは意地悪で、いけ好かない奴だ。けど、マイケルが派手に嫌がらせをしてくれたおかげで、今まで雲の上の人だと思っていた団長のロバート・ロンリー公爵がヤケに親切にしてくださる。ひょっとして、ケビンに気があるのか?それはそれで、気持ちが悪い。

 ロバート・ロンリー公爵は、ケビンを通じて、あの双子のことを調べている。

 なぜ、あの双子姉妹のことを調べているかと言うと、国王夫妻には、実子となる子供がいない。それで、どちらか片方だけでも養女に迎え入れ、それに婿を取らせて王国の後継者にしようと思っているのだ。幸いにも、あの双子には、親権者なるものが存在しない。成人しているとはいえ、親権者が養子縁組となると、口出ししてくることは必定で、父親は逝去しているし、母親も牢の中にいる。

 それになにより、あの双子姉妹には、王女にも優るというぐらいの気品とオーラを兼ね備えている。

 それでロバートは、あの双子に変な虫が寄り付かないようにお目付け役を秘かに仰せつかったのだ。

 だが、ロバートは、妹のアフロディーテのことが気になって仕方がない。国王は、二人とも養女にできるのなら、一人は要人に嫁がせてもよいというお考えだが、それならば、自分が娶りたいと思っている。

 ロバートは、両親を事故で早く亡くし、13歳で家督を継いでから、寄ってくる女は腐るほどいたが、どうもコレという女に巡り会えないでいる。

 姉のアイリーンも可愛いタイプだが、ロバートはクールビューティなアフロディーテの方が好みなのだ。

 それでケビンをダシにして、度々、宿屋「石湯」に出向いている。

 それにしても、ケビンは短い間にずいぶん成長したようだ。上官のしごきに耐えたからか、陛下の行幸後、見違えるほど、逞しくなっていく。身体能力が抜群に上がっている。もともとウイルソン家は、騎士の一家だからかもしれない。

 それに引き換えマイケルのダメなことと言えば、一目瞭然で、あれほど年下のケビンにライバル心を燃やしていたというのに、今ではすっかり見る影もないほど、落ちぶれていく。

 マイケルの家は、平民だからか、こういうところに家門の格が出るというところか。
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