68 / 79
来世:タータン国宿屋の女将として
68.オカン
しおりを挟む
アイリーンとアフロディーテの日常は穏やかで、こういう仕事なら、いいかもと思えるほどだった、冒険者だった父の死後、瘴気は急速に消え失せた。なぜなら、アイリーンがその娘のカラダに憑依したこともあるが、父が魔物にかなりのダメージを与えたもので、ほぼ相討ちという形となってしまったから。
本当のカラダの持ち主はさぞかし無念だったろうけど、この双子、実はカラダが弱く、父が死んだと聞いて、二人ともショック死になろうというところを、アフロディーテとともに、憑依したのだ。
それで奇跡的に命を取り留めたということになっているが、中身は全く別人の女神様二人がカラダを乗っ取った形になった。
まあ、もっとも生活力がない双子では、あっという間に宿屋を閉めることになるだろうし、そこそこ美形なら騙されて、どこかに売り飛ばされている可能性もなくはない。だから、二人の女神が憑依したおかげで、この家ども潰れずに済んだというもの。感謝されこそすれ、とやかく言われる覚えはない。
そんな時、来てほしくない客が来てしまったのだ。それは、蒸発したはずの実母が、男に捨てられ、舞い戻ってきた。
アフロディーテは、いっそ、このまま死んでもらおうか?などと物騒なことを言いだす始末で、とても愛の女神さまだとは思えない発言に苦笑いしかない。
「何しに来たのよ?」
「ちょっとお留守していたぐらいで、母欧に向かって、なんて口の利き方をしているの!その根性を叩きなおしてあげるわ!」
その女は思いっきり手を振り上げ、アイリーンを打とうとするが当たらない。女神さまの結界があるからだ。
「あら???……生意気な!」
「お父ちゃんとアンタは離縁しているのよ、それを今更、どの面下げて帰ってきたというの?とにかく、ここにアンタの居場所も部屋も何もないのよ!さっさと出ていけ!」
「なに、言っているのよ。お父さんが亡くなったって話を聞いたから、アナタたちを手伝ってあげようと思って、帰ってきたのに、何、その言い草は。それにアナタたちだけで宿屋の経営をするには無理があるでしょ?」
「何も困ることはありません。むしろアンタみたいな淫乱穀潰しが宿屋にいる方が、よほど迷惑です」
「また母親に向かって、なんて口の利き方をするの!」
「アンタなんか、母親だと思ったことなど、一度もありません。わかったらさっさろ出ていけ!でないと実力行使するわよ?」
その時、表のドアが開き、いかにもガラの悪そうな男たちが3人、入ってくる。
「ほう。威勢のいいネエチャンだな。いったい、どうやって、実力行使をするって言うんだ?それによく見たら二人とも、母親に似なくて、えらい別嬪じゃないか!これは、高く売れるぜ」
舌なめずりをしながら、男たちは近づいてくる。
「ちょっと、手荒な真似はしないでよ」
「わかってるって、おとなしく店の権利書を出せ!お前たちは、俺たちがたっぷり可愛がってやるからよぉ」
「ぅほぅ、こりゃ、年増より、可愛がりようがあるってもんだぜ」
「ちょっと、と閉まって誰のことよ?」
「そんなこと、決まってんじゃねえか?」
「「「ガハハハ」」」
男たちは大笑いしながら、さらにアイリーンとアフロディーテに近づいてくる。
二人の女神さまは、目配せをして、十分な距離感になるまでこらえている。近づけば、近づくほど威力が増すからだ。
そして、1メートル以内にまで、迫ってきて、ドアが開いていることを目視で確認すると、思いっきり笑顔で、結界をぶっ放した。
女神さまに悪意を持って、近づいてきた奴らを王都から締め出すほどの威力がある結界をその場ですぐに発動させたのだ。
「ドーン」という音とともに、男たちは、後ろ向きにドアの向こう側、向かいの宿屋の壁を破って、そこで気絶しているようだった。
「いつもながら、ウチの防犯システムは完ぺきよね?お父ちゃんが作ってくれただけのことはある」
訳知り顔で頷きあっていると、オカンは真っ青な顔をしながらブルブル震えている。
「アンタ、まだいたの?アンタも同じ目に遭わせてあげようか?」
そこへ騎士団がやってきて、事情聴取が始まる。
めんどくさくなった女神様二人は、ごろつきとオカンのやり取りを音声付映像で流すと、目を白黒させる。
そんなに驚くことかしらね?
「この動く絵は、魔道具か何かか?」
「よくわからないけど、お父ちゃんが作ってくれたものなのです」
死人に口なしだから、なんでも冒険者の父のせいにしておく。
「素晴らしい!さすがロビンソン様(お父ちゃんの名前)は、やることが違う。きっと後に残された二人のお嬢様のためにと思って、作っておられたのでしょう」
それで、すぐ納得してもらって、悪いのは、オカンとゴロツキということになり、一網打尽となったのだ。
後から考えるとあのオカン、前々世のエストロゲン夫人に魂の色がそっくりだったなぁと考えこむアイリーンがいる。
そうだったら、もう一度アフロディーテに石に変えてもらった方がよかったのかもしれない。
本当のカラダの持ち主はさぞかし無念だったろうけど、この双子、実はカラダが弱く、父が死んだと聞いて、二人ともショック死になろうというところを、アフロディーテとともに、憑依したのだ。
それで奇跡的に命を取り留めたということになっているが、中身は全く別人の女神様二人がカラダを乗っ取った形になった。
まあ、もっとも生活力がない双子では、あっという間に宿屋を閉めることになるだろうし、そこそこ美形なら騙されて、どこかに売り飛ばされている可能性もなくはない。だから、二人の女神が憑依したおかげで、この家ども潰れずに済んだというもの。感謝されこそすれ、とやかく言われる覚えはない。
そんな時、来てほしくない客が来てしまったのだ。それは、蒸発したはずの実母が、男に捨てられ、舞い戻ってきた。
アフロディーテは、いっそ、このまま死んでもらおうか?などと物騒なことを言いだす始末で、とても愛の女神さまだとは思えない発言に苦笑いしかない。
「何しに来たのよ?」
「ちょっとお留守していたぐらいで、母欧に向かって、なんて口の利き方をしているの!その根性を叩きなおしてあげるわ!」
その女は思いっきり手を振り上げ、アイリーンを打とうとするが当たらない。女神さまの結界があるからだ。
「あら???……生意気な!」
「お父ちゃんとアンタは離縁しているのよ、それを今更、どの面下げて帰ってきたというの?とにかく、ここにアンタの居場所も部屋も何もないのよ!さっさと出ていけ!」
「なに、言っているのよ。お父さんが亡くなったって話を聞いたから、アナタたちを手伝ってあげようと思って、帰ってきたのに、何、その言い草は。それにアナタたちだけで宿屋の経営をするには無理があるでしょ?」
「何も困ることはありません。むしろアンタみたいな淫乱穀潰しが宿屋にいる方が、よほど迷惑です」
「また母親に向かって、なんて口の利き方をするの!」
「アンタなんか、母親だと思ったことなど、一度もありません。わかったらさっさろ出ていけ!でないと実力行使するわよ?」
その時、表のドアが開き、いかにもガラの悪そうな男たちが3人、入ってくる。
「ほう。威勢のいいネエチャンだな。いったい、どうやって、実力行使をするって言うんだ?それによく見たら二人とも、母親に似なくて、えらい別嬪じゃないか!これは、高く売れるぜ」
舌なめずりをしながら、男たちは近づいてくる。
「ちょっと、手荒な真似はしないでよ」
「わかってるって、おとなしく店の権利書を出せ!お前たちは、俺たちがたっぷり可愛がってやるからよぉ」
「ぅほぅ、こりゃ、年増より、可愛がりようがあるってもんだぜ」
「ちょっと、と閉まって誰のことよ?」
「そんなこと、決まってんじゃねえか?」
「「「ガハハハ」」」
男たちは大笑いしながら、さらにアイリーンとアフロディーテに近づいてくる。
二人の女神さまは、目配せをして、十分な距離感になるまでこらえている。近づけば、近づくほど威力が増すからだ。
そして、1メートル以内にまで、迫ってきて、ドアが開いていることを目視で確認すると、思いっきり笑顔で、結界をぶっ放した。
女神さまに悪意を持って、近づいてきた奴らを王都から締め出すほどの威力がある結界をその場ですぐに発動させたのだ。
「ドーン」という音とともに、男たちは、後ろ向きにドアの向こう側、向かいの宿屋の壁を破って、そこで気絶しているようだった。
「いつもながら、ウチの防犯システムは完ぺきよね?お父ちゃんが作ってくれただけのことはある」
訳知り顔で頷きあっていると、オカンは真っ青な顔をしながらブルブル震えている。
「アンタ、まだいたの?アンタも同じ目に遭わせてあげようか?」
そこへ騎士団がやってきて、事情聴取が始まる。
めんどくさくなった女神様二人は、ごろつきとオカンのやり取りを音声付映像で流すと、目を白黒させる。
そんなに驚くことかしらね?
「この動く絵は、魔道具か何かか?」
「よくわからないけど、お父ちゃんが作ってくれたものなのです」
死人に口なしだから、なんでも冒険者の父のせいにしておく。
「素晴らしい!さすがロビンソン様(お父ちゃんの名前)は、やることが違う。きっと後に残された二人のお嬢様のためにと思って、作っておられたのでしょう」
それで、すぐ納得してもらって、悪いのは、オカンとゴロツキということになり、一網打尽となったのだ。
後から考えるとあのオカン、前々世のエストロゲン夫人に魂の色がそっくりだったなぁと考えこむアイリーンがいる。
そうだったら、もう一度アフロディーテに石に変えてもらった方がよかったのかもしれない。
121
お気に入りに追加
2,077
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。
同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。
16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。
そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。
カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。
死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる