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現世:新たなる旅立ち
57.新婚
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結婚式に大聖堂の司祭様、教皇ともに、ぎりぎりに間に合ってよかったけど、神界を目にした途端、お二方とも感動の余り泣き出してしまわれる。
司祭と教皇という立場であれば、もっとも神界に近い立場だと思うのだけど、違ったらしい。
それほどまでに司祭や教皇という立場は、俗物と化していることの表れだと思う。
無事、28組の合同結婚式は幕を閉じるも、ペガサスとオパールの二夫婦は、しばらくの間、新婚旅行代わりとして神界に留まることにした。それは、それぞれの妻の元許婚の存在がそうせざるを得ない状況にしていく。元許婚がそれぞれの妻の実家に押し寄せ、復縁を迫るどころか、妻の命を狙うとまで言い放ったから。
釣り逃がした魚は大きかったと今頃後悔しても遅いのだが……。そういうわけで、ほとぼりが冷めるころまで、神界に留まるつもりでいるらしい。
アイリーンは、結界を張っているから大丈夫、とは言うものの。不意を突かれたら、どうなることかわからないのは、前世、前々世、と経験済みのことだから、大事を取った方がいいに決まっている。
場合によれば、アムステルダムの隣国オリエンタルへ避難することもできるけど?
あの国には、クリストファー殿下がいるから、あまり行きたくない。クリストファー殿下は、あの後もずっとアフロディーテの尻を追い掛け回しているという。
本来ならアイリーンの受難を身代わりにさせてしまい、申し訳なく思うけど、これはアフロディーテ自身が望んだことでもあるから、ご厚意に甘えさせてもらっている。
そうでないと、また女神であることさえも思い出させずに……来世も人間界に転生してしまうところだったのだから。
だから、本当に助かっているとしか言いようがない。
サファイアは、ペガサスやオパールの神界暮らしの話を聞いて、エレモアの出産後、がぜん神界暮らしにやる気を出している。
神界暮らしをすれば、愛するエレモアはいつまでも綺麗で若いままになるのだから、夫としては、神界で暮らしてほしいところ。
エレモアは、その申し出をあっさり承諾する。神の国から人間界を見下ろし、以前、エレモアと婚約破棄した伯爵家の行く末を見届けたいという気持ちもある。
それに神界で出産した方が、なんとなくだけど安全のような気がする。
アイリーンとシンイーの新婚旅行は、周辺国へ慰問に行くことにするが、その周辺国の中には、クリストファー殿下のオリエンタル国へ公式訪問するという予定が組まれている。
アイリーンは、少々不安もあるが、まさか、隣国の王妃にちょっかいは出さないだろうと信じている。
そして、国民に祝福されながら、新婚旅行へと旅立っていく。
一度、神界に行ってからだったら、数十分もあれば、周辺国を回れるけど、国王陛下は、周囲の領地で泊まることで、王都以外の国民の生活を潤わせる必要があるから、あえて馬車で時間をかけて行くことの責任があると言われる。
確かにそうかもしれない。また、そういうところに気が回るのも、シンイーの良いところだとも思う。
どこの国へ行っても、王妃が女神さまだと知ると、すごい歓迎ぶりが嬉しい。
そして、ついにオリエンタル国へ。
ここだけは嫌だと言いたいが、言えない。シンイーは、理由を知っていても、なお行かなければならないという。
仕方なく、おとなしくシンイーに寄り添う貞淑な妻を演じる。ところが、やはりというべきかクリストファーは、一瞬で王妃がステファニーであることを見抜く。
「ステファニー!探したよ。まさか、君の異能が女神さまだったとは、エストロゲン家の奴は誰も気づかなかったということか……」
「おかげさまで、異能が発現していても、誰にも気づかれず四苦八苦していたところを陛下に助けていただきました」
嘘とも本当とも言えないことをさらりと言ってのける。
「神界で挙式をしたと聞いた。俺もぜひ、参列したかった」
「申し訳ございません。御親族の方しか参列できません」
「もう一人の女神様となら、神界で挙式できるかもしれない」
「さあ?どうでしょうか?」
「今宵は、部屋を用意した。ゆるりと休んでくれ」
シンイーとアイリーンは、クリストファーが用意した部屋には泊まらず、タワマンの中へと帰っていくことにしたのだ。
アイリーンにとって、オリエンタル国は祖国でも何でもない。もう少しエストロゲン家の者たちが、愛情深く育ててくれていたら、とは思うが、それ以上でもそれ以下でもない感情しかない。
司祭と教皇という立場であれば、もっとも神界に近い立場だと思うのだけど、違ったらしい。
それほどまでに司祭や教皇という立場は、俗物と化していることの表れだと思う。
無事、28組の合同結婚式は幕を閉じるも、ペガサスとオパールの二夫婦は、しばらくの間、新婚旅行代わりとして神界に留まることにした。それは、それぞれの妻の元許婚の存在がそうせざるを得ない状況にしていく。元許婚がそれぞれの妻の実家に押し寄せ、復縁を迫るどころか、妻の命を狙うとまで言い放ったから。
釣り逃がした魚は大きかったと今頃後悔しても遅いのだが……。そういうわけで、ほとぼりが冷めるころまで、神界に留まるつもりでいるらしい。
アイリーンは、結界を張っているから大丈夫、とは言うものの。不意を突かれたら、どうなることかわからないのは、前世、前々世、と経験済みのことだから、大事を取った方がいいに決まっている。
場合によれば、アムステルダムの隣国オリエンタルへ避難することもできるけど?
あの国には、クリストファー殿下がいるから、あまり行きたくない。クリストファー殿下は、あの後もずっとアフロディーテの尻を追い掛け回しているという。
本来ならアイリーンの受難を身代わりにさせてしまい、申し訳なく思うけど、これはアフロディーテ自身が望んだことでもあるから、ご厚意に甘えさせてもらっている。
そうでないと、また女神であることさえも思い出させずに……来世も人間界に転生してしまうところだったのだから。
だから、本当に助かっているとしか言いようがない。
サファイアは、ペガサスやオパールの神界暮らしの話を聞いて、エレモアの出産後、がぜん神界暮らしにやる気を出している。
神界暮らしをすれば、愛するエレモアはいつまでも綺麗で若いままになるのだから、夫としては、神界で暮らしてほしいところ。
エレモアは、その申し出をあっさり承諾する。神の国から人間界を見下ろし、以前、エレモアと婚約破棄した伯爵家の行く末を見届けたいという気持ちもある。
それに神界で出産した方が、なんとなくだけど安全のような気がする。
アイリーンとシンイーの新婚旅行は、周辺国へ慰問に行くことにするが、その周辺国の中には、クリストファー殿下のオリエンタル国へ公式訪問するという予定が組まれている。
アイリーンは、少々不安もあるが、まさか、隣国の王妃にちょっかいは出さないだろうと信じている。
そして、国民に祝福されながら、新婚旅行へと旅立っていく。
一度、神界に行ってからだったら、数十分もあれば、周辺国を回れるけど、国王陛下は、周囲の領地で泊まることで、王都以外の国民の生活を潤わせる必要があるから、あえて馬車で時間をかけて行くことの責任があると言われる。
確かにそうかもしれない。また、そういうところに気が回るのも、シンイーの良いところだとも思う。
どこの国へ行っても、王妃が女神さまだと知ると、すごい歓迎ぶりが嬉しい。
そして、ついにオリエンタル国へ。
ここだけは嫌だと言いたいが、言えない。シンイーは、理由を知っていても、なお行かなければならないという。
仕方なく、おとなしくシンイーに寄り添う貞淑な妻を演じる。ところが、やはりというべきかクリストファーは、一瞬で王妃がステファニーであることを見抜く。
「ステファニー!探したよ。まさか、君の異能が女神さまだったとは、エストロゲン家の奴は誰も気づかなかったということか……」
「おかげさまで、異能が発現していても、誰にも気づかれず四苦八苦していたところを陛下に助けていただきました」
嘘とも本当とも言えないことをさらりと言ってのける。
「神界で挙式をしたと聞いた。俺もぜひ、参列したかった」
「申し訳ございません。御親族の方しか参列できません」
「もう一人の女神様となら、神界で挙式できるかもしれない」
「さあ?どうでしょうか?」
「今宵は、部屋を用意した。ゆるりと休んでくれ」
シンイーとアイリーンは、クリストファーが用意した部屋には泊まらず、タワマンの中へと帰っていくことにしたのだ。
アイリーンにとって、オリエンタル国は祖国でも何でもない。もう少しエストロゲン家の者たちが、愛情深く育ててくれていたら、とは思うが、それ以上でもそれ以下でもない感情しかない。
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