53 / 79
現世:新たなる旅立ち
53.プロポーズ
しおりを挟む
シンイーは、勝手知ったる店の中なので、どんどん奥に進み、厨房の中へと入っていく。
つられてオスカルも厨房の中に入ろうとしたら、「STAFF ONLY」の結界が邪魔して入れないでいる。
シンイーの後ろから、「チッ!」と舌打ちしたような音が聞こえるが、一刻も早くアイリーンに会いたいシンイーは、部下の怒りなど放っておくことにする。
タワマンのリビングでアイリーンは、お茶を淹れながら待っていてくれている。
「済まない。待たせた」
「それよりオスカル・イソフラボンがナターシャの婚約者だと知って驚いたわよ」
「なんだ?オスカーのことを知っているような口調だな?」
「あのね。陛下と出会って、数日後だったかしら?アフロディーテの店の前で、オスカルにナンパされそうになったことがあってね」
「な、なんだと?」
アイリーンは、以前、オスカルからもらったメモの走り書きをしたものを陛下に見せる。
「それで虫よけのためにジェニファーを女将代行にして、表に立たせるようにしたのよ」
「あいつ。まだ、こんなことをやっているのか?オスカルの女狂いも以前から知っていたが、まさかアイリに手を出すなど、許せん!」
「問題はそこじゃないでしょ?とにかく、逢引きはアイリーンの店を遣わない方がいいと思って。だって、ナターシャが可愛そうですもの。今、戻れば、今頃、スーザンを口説いているはずよ」
「では、いったん戻るとする。でも、後で、俺の執務室へ来てくれ。話がある」
シンイーは、再び厨房を通り、店内に戻ったら、案の定、食券売り場の前に陣取って、しきりにスーザンを口説いていたのだ。
「オスカル帰るぞ!」
「えっ!?もう?」
陛下が馬車に乗られるところを見て、慌ててスーザンを口説くことを諦め、馬車へと向かう。
馬車の中でシンイーは、オスカルに説教を試みることにした。
「オスカル、あのなあ、前から言おうと思っていたことだが、お前、そろそろ実を固めてはどうだ?いつまでも女狂いをするのは、やめておけ!だいたい婚約者殿がかわいそうではないか?」
「……、婚約者のことは愛しています。ですが、私は絶倫なので、今、結婚すれば、ナターシャを抱き潰しかねないのです」
なんだ?それは、そんなことが言い訳にでもなると本気で思っているのだろうか?
「相手のことを本当に愛していれば、相手を思いやり相手の調子に合わせられ、そんな無茶な抱き方はできないはずだ。それが絶倫のせいにするとは、お前はただ病気なだけだ」
「ですが……陛下より先に結婚す津などとは、恐れ多いことでございますれば……」
「俺には、もう決まった相手がいる」
そこに走り書きしたメモをはらりと見せる。
「こ、こ、これは……!どこで、これを……?」
「俺の女だ。手出しは許さぬ」
「へ?」
「とにかく分かったら、もう婚約者殿を自由にしてやれ、お前のせいで、誰とも結婚できないのはかわいそうだろ?ただし、婚約破棄はダメだ。婚約の白紙撤回をしろ。いいな?」
「はい」
「ナターシャ嬢だったかな。美しい娘だ。他の男が放っておかないだろう。だから早く自由にしてやれ」
「へ、陛下、なぜナターシャのことをご存知なのですか?」
「俺の妻の友だからだ。ナターシャをこれ以上泣かせることは俺が許さん」
アイリーンは、頃合いを見計らって、シンイーの執務室へ行く。もちろん転移魔法に隠ぺいをかけて。
「あ、来てくれたか?アイリ」
「ええ。お忙しそうだったから、お声がけをせずにおりました」
「実は頼みがあってな」
「はい、なんなりと」
「俺と結婚してほしい」
「はい。承知しました」
「え?それだけ?前世みたいに嬉しいとか、言って欲しかった」
「うふ。もちろん、嬉しいですわ。でも女神であることを思い出してしまったので……」
「うむ。それで頼みと言うのは、この部屋とタワーマンションの寝室を繋いでもらえたら嬉しい。できれば、もう一度、あの部屋で新婚生活を送りたいと思っていた」
つられてオスカルも厨房の中に入ろうとしたら、「STAFF ONLY」の結界が邪魔して入れないでいる。
シンイーの後ろから、「チッ!」と舌打ちしたような音が聞こえるが、一刻も早くアイリーンに会いたいシンイーは、部下の怒りなど放っておくことにする。
タワマンのリビングでアイリーンは、お茶を淹れながら待っていてくれている。
「済まない。待たせた」
「それよりオスカル・イソフラボンがナターシャの婚約者だと知って驚いたわよ」
「なんだ?オスカーのことを知っているような口調だな?」
「あのね。陛下と出会って、数日後だったかしら?アフロディーテの店の前で、オスカルにナンパされそうになったことがあってね」
「な、なんだと?」
アイリーンは、以前、オスカルからもらったメモの走り書きをしたものを陛下に見せる。
「それで虫よけのためにジェニファーを女将代行にして、表に立たせるようにしたのよ」
「あいつ。まだ、こんなことをやっているのか?オスカルの女狂いも以前から知っていたが、まさかアイリに手を出すなど、許せん!」
「問題はそこじゃないでしょ?とにかく、逢引きはアイリーンの店を遣わない方がいいと思って。だって、ナターシャが可愛そうですもの。今、戻れば、今頃、スーザンを口説いているはずよ」
「では、いったん戻るとする。でも、後で、俺の執務室へ来てくれ。話がある」
シンイーは、再び厨房を通り、店内に戻ったら、案の定、食券売り場の前に陣取って、しきりにスーザンを口説いていたのだ。
「オスカル帰るぞ!」
「えっ!?もう?」
陛下が馬車に乗られるところを見て、慌ててスーザンを口説くことを諦め、馬車へと向かう。
馬車の中でシンイーは、オスカルに説教を試みることにした。
「オスカル、あのなあ、前から言おうと思っていたことだが、お前、そろそろ実を固めてはどうだ?いつまでも女狂いをするのは、やめておけ!だいたい婚約者殿がかわいそうではないか?」
「……、婚約者のことは愛しています。ですが、私は絶倫なので、今、結婚すれば、ナターシャを抱き潰しかねないのです」
なんだ?それは、そんなことが言い訳にでもなると本気で思っているのだろうか?
「相手のことを本当に愛していれば、相手を思いやり相手の調子に合わせられ、そんな無茶な抱き方はできないはずだ。それが絶倫のせいにするとは、お前はただ病気なだけだ」
「ですが……陛下より先に結婚す津などとは、恐れ多いことでございますれば……」
「俺には、もう決まった相手がいる」
そこに走り書きしたメモをはらりと見せる。
「こ、こ、これは……!どこで、これを……?」
「俺の女だ。手出しは許さぬ」
「へ?」
「とにかく分かったら、もう婚約者殿を自由にしてやれ、お前のせいで、誰とも結婚できないのはかわいそうだろ?ただし、婚約破棄はダメだ。婚約の白紙撤回をしろ。いいな?」
「はい」
「ナターシャ嬢だったかな。美しい娘だ。他の男が放っておかないだろう。だから早く自由にしてやれ」
「へ、陛下、なぜナターシャのことをご存知なのですか?」
「俺の妻の友だからだ。ナターシャをこれ以上泣かせることは俺が許さん」
アイリーンは、頃合いを見計らって、シンイーの執務室へ行く。もちろん転移魔法に隠ぺいをかけて。
「あ、来てくれたか?アイリ」
「ええ。お忙しそうだったから、お声がけをせずにおりました」
「実は頼みがあってな」
「はい、なんなりと」
「俺と結婚してほしい」
「はい。承知しました」
「え?それだけ?前世みたいに嬉しいとか、言って欲しかった」
「うふ。もちろん、嬉しいですわ。でも女神であることを思い出してしまったので……」
「うむ。それで頼みと言うのは、この部屋とタワーマンションの寝室を繋いでもらえたら嬉しい。できれば、もう一度、あの部屋で新婚生活を送りたいと思っていた」
232
お気に入りに追加
2,077
あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する
影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。
※残酷な描写は予告なく出てきます。
※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。
※106話完結。
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる