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現世:新たなる旅立ち
52.ナンパ男
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アムステルダムの店で新たに雇い入れた食券売り場の二人の売り子は、前々世ナターシャとスーザンの魂を持つ娘で、その名前もそのまま受け継いでいる。
だからからか、何か既視感があるような気がしていた。
そして神界からも新たな従業員が来ている。その名は、ペガサスとイカロス、いまは人間の姿に変身しているが元は天馬である。
サファイアでも結婚できたのだからと、ここぞとばかりに求人応募してきたのだ。
たいていの神は、カラダから羽を生やし、どこでも行きたいところへそのまま飛んでいけることができるが、天馬は違う。人間に化身した姿以外の時は、羽が生えている状態が普通なのだ。
ペガサスとイカロスは、早速、ナターシャとスーザンに目を付け、アプローチするも相手にされない。
二人の令嬢がターゲットにしているのは、もちろんシンイー国王陛下だからしょうがない。
時々、お忍びでこのレストランに立ち寄るという情報を持っていて、だからレストランの求人に応募したのだ。
ひょっとすれば、目にとまるかも?と期待している。
でも、ペガサスとイカロスは、二人の令嬢がともに振られてしまう未来を知っている。シンイーの愛する女性は、ただひとりアイリーン女神さまだということは前世、前々世からの因縁で、もはやそれは運命というより宿命になっていることだから。
今世で、二人が結ばれれば、この因縁は切れる。また、切ってもらわないといけないとまで思っている。
その日の午後、ふらりとシンイー国王陛下がやってくる。二人の令嬢が色めき立つも、だが、すぐにナターシャは俯き加減になり出した。
シンイー陛下の側近、オスカル・イソフラボン公爵も同行していたからだ。ナターシャとオスカルは幼い頃より、政略結婚の相手として婚約している。
ナターシャは努力して、オスカルとの関係を築こうとしていたが、オスカルは、ご存知の通り、浮気者で有名。
毎日、違う女をとっかえひっかえ、それはほとんど病気といっていいほどのもので、平民から貴族の未亡人まで幅広い。商売女は皆無で、皆、素人娘かちゃんとしたところの貴族の未亡人ばかりなのである。
そのうちきっと、変な病気を貰うのでは?と心配している。
オスカルは、要するにケチなのだ。性欲処理に金を惜しむタイプ女性をあくまでも道具として思っていなく、きっとコトが済めば、その程度の扱い鹿していないのだろうと推察できる。
オスカルは、食券売り場などに目もくれなかったので、ナターシャがその席にいることなど気づかずに行ってしまった。正直、ホッとしたけど、また帰りにここの前を通るはずだから、早めの休憩を取ろうかどうしようか迷っている。
それで食券売り場から離れて、トイレへ行く。そこへオーナーのアイリーン様が来られる。
「どうしたの?ナターシャ」
「また、陛下がお見えなのですが、少し顔を合わせたくない人も同行されていて、それで先ほどは、気づかれずに済んだのですが……また、顔を合わすのがイヤだなぁと思っていて」
「ふーん。なんて人?」
「オスカル・イソフラボンという……わたくしの婚約者です」
げ!あの、ナンパ野郎が、ナターシャの婚約者とはね。
「わかったわ。今日はアフロディーテで勤務をなさい。こっちよ」
アイリーン様が手招きしてくださると、そこは厨房のような?違うような?食堂のような?違うような?景色が広がっている。でも、一瞬で、そこを通り抜けると、レストランの厨房らしきところに出た。忙しそうに、スタッフさんが注文の料理を作っている。
そして、食券売り場には、慣れない手つきのオバサン?が一人、てんてこ舞いしているかのように忙し気に働いていたのだ。
「ジェニファー!応援、連れてきたわよ」
「ああ、助かります」
少し、食券の色は違うけど、売り場の中に入り、手際よく客をさばいていく。
だからからか、何か既視感があるような気がしていた。
そして神界からも新たな従業員が来ている。その名は、ペガサスとイカロス、いまは人間の姿に変身しているが元は天馬である。
サファイアでも結婚できたのだからと、ここぞとばかりに求人応募してきたのだ。
たいていの神は、カラダから羽を生やし、どこでも行きたいところへそのまま飛んでいけることができるが、天馬は違う。人間に化身した姿以外の時は、羽が生えている状態が普通なのだ。
ペガサスとイカロスは、早速、ナターシャとスーザンに目を付け、アプローチするも相手にされない。
二人の令嬢がターゲットにしているのは、もちろんシンイー国王陛下だからしょうがない。
時々、お忍びでこのレストランに立ち寄るという情報を持っていて、だからレストランの求人に応募したのだ。
ひょっとすれば、目にとまるかも?と期待している。
でも、ペガサスとイカロスは、二人の令嬢がともに振られてしまう未来を知っている。シンイーの愛する女性は、ただひとりアイリーン女神さまだということは前世、前々世からの因縁で、もはやそれは運命というより宿命になっていることだから。
今世で、二人が結ばれれば、この因縁は切れる。また、切ってもらわないといけないとまで思っている。
その日の午後、ふらりとシンイー国王陛下がやってくる。二人の令嬢が色めき立つも、だが、すぐにナターシャは俯き加減になり出した。
シンイー陛下の側近、オスカル・イソフラボン公爵も同行していたからだ。ナターシャとオスカルは幼い頃より、政略結婚の相手として婚約している。
ナターシャは努力して、オスカルとの関係を築こうとしていたが、オスカルは、ご存知の通り、浮気者で有名。
毎日、違う女をとっかえひっかえ、それはほとんど病気といっていいほどのもので、平民から貴族の未亡人まで幅広い。商売女は皆無で、皆、素人娘かちゃんとしたところの貴族の未亡人ばかりなのである。
そのうちきっと、変な病気を貰うのでは?と心配している。
オスカルは、要するにケチなのだ。性欲処理に金を惜しむタイプ女性をあくまでも道具として思っていなく、きっとコトが済めば、その程度の扱い鹿していないのだろうと推察できる。
オスカルは、食券売り場などに目もくれなかったので、ナターシャがその席にいることなど気づかずに行ってしまった。正直、ホッとしたけど、また帰りにここの前を通るはずだから、早めの休憩を取ろうかどうしようか迷っている。
それで食券売り場から離れて、トイレへ行く。そこへオーナーのアイリーン様が来られる。
「どうしたの?ナターシャ」
「また、陛下がお見えなのですが、少し顔を合わせたくない人も同行されていて、それで先ほどは、気づかれずに済んだのですが……また、顔を合わすのがイヤだなぁと思っていて」
「ふーん。なんて人?」
「オスカル・イソフラボンという……わたくしの婚約者です」
げ!あの、ナンパ野郎が、ナターシャの婚約者とはね。
「わかったわ。今日はアフロディーテで勤務をなさい。こっちよ」
アイリーン様が手招きしてくださると、そこは厨房のような?違うような?食堂のような?違うような?景色が広がっている。でも、一瞬で、そこを通り抜けると、レストランの厨房らしきところに出た。忙しそうに、スタッフさんが注文の料理を作っている。
そして、食券売り場には、慣れない手つきのオバサン?が一人、てんてこ舞いしているかのように忙し気に働いていたのだ。
「ジェニファー!応援、連れてきたわよ」
「ああ、助かります」
少し、食券の色は違うけど、売り場の中に入り、手際よく客をさばいていく。
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