転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

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現世:新たなる旅立ち

45.思い出話

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 アイリーンは、店を改装とOPENに向けての準備を始めながら、瘴気の浄化に努め、アフロディーテは、持ち前の美貌を武器にシドニー公爵に近づく。

 オパールとデイジーは、それぞれ分担して、女神さまの警護に当たる。

 シンイーは、アイリーンの新しい店のお手伝いをしてもらいながら、王宮に入る段取りをする。

「あの……女神様、こんなこと言えた義理ではないのですが、前世、アナタ様と出会っていたような気がしてならないのです」

「!」

「え!もしかして、女神様は……」

「前世、わたくしの名前は愛理といい、前世はわたくしがまだ神であった自覚がなく、というか記憶を失くしていたようで、それで知らずに榎本真一という人に嫁いでしまったのです。でも、夫もわたくしの目の前で殺され、当時、妊娠していたわたくしも凶刃の前に倒れてしまったのです」

 そこまで言い切ると、急に当時のことを思い出され、悲しくて、気が付けば大粒の涙をポロポロと流している。

 シンイーは、そんなアイリーンを気遣い、思わず駆け寄り肩を抱く。

「厨房の奥にあった部屋は、タワーマンションの部屋でしたよね?あれを見て、ひょっとしたら、という思いはありました。二人で新婚時代を過ごした部屋が、まさか異世界でもう一度、目にするとは、思わなかったが、懐かしくなり嬉しいです。俺のことを覚えていてくださり、ありがとう」

「いいえ。わたくしの方こそ、神であるのに、真一さんを護れなくて、ごめんなさい」

「いいですよ。愛理は本当にいい妻でした。ということは……現世で、栗栖はクリストファー殿下のことなのでしょうか?」

「そうね。そうみたい。だから、あの男と関わることは二度と御免なの」

「でも、殿下はアフロディーテ様を想っていらっしゃるので、アイリーン様はもう大丈夫かと……」

「アフロディーテは、昔からの親友で……あんまり、あの殿下と関わってほしくないのが本音よ。でもアフロディーテは、色恋沙汰に慣れているから、愛を司る神なので大丈夫だと思うわ」

「そうだね。ねえ、女神さまのことをアイリと呼んでもいいかな?」

「ええ。もちろんいいわ。嬉しい」

 それから前世の思い出話に花を咲かせる。

「そういえば、アイリと出会ってからも、結婚してからも、俺、運がどんどん良くなっていって、アイリはあの時から俺にとって幸運の女神さまだったというか、あげまんだったよね?それって、やっぱり本当の姿が女神さまだったからかなぁ」

 アイリーンは、女神様と言うことを思い出す前に女神さまだと思っていてもらえたことが嬉しくて仕方がない。

 それにあの時の真一さん、本当にかっこよくて、家電量販店の従販(会社によっては、職販、社割などといいますが従販は割と一般的に使っているので、このままにします)を遣わせていただき、感謝していたのだ。特に冷蔵庫、洗濯機なんて、半額以下で買えるものだから、重宝していた。

「あのホテルまだあるかしら?」

「女神さまの力で行けたりしない?」

「さあ?試したことがないから、よくわからないけど……もし、真一さんさえよければ今度、一緒に行ってみない?」

「え!いいの?もちろん、喜んで。それにしても、前世の最愛の妻にもう一度再会できるなんて、夢のようだ。シドニー公爵に感謝しないとな」

「もう、他に思い出すことなんて、ない?」

「え!まだ、なんか、あったっけ?」

「ううん。なんでもない」

 そうこうしている間に、今なら玉座が空いているので、この隙に玉座に座るように、とアフロディーテから連絡が来て、アイリーンはシンイーを玉座の間まで転移魔法で飛ばすことにした。

 シンイーに何かあれば、今度こそ命がけで守るつもりでいる。そして、アイリーン自身にも隠ぺいをかけ、こっそりとシンイーの傍にいる。
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