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現世:新たなる旅立ち
44.再びアムステルダムへ
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記憶を取り戻したアイリーンは、再びアムステルダム行きを決意する。今度は、シンイーも伴って行き、シドニー公爵と対決するつもりでいる。
アフロディーテも、レストラン・オーナーの肩書にご満悦で、そもそも自分の名前が冠しているものだから、アイリーンの虎の子のおかげの店だということも、満足に拍車をかけている。
あの後、差し入れと称しエストロゲン家に出向き、アイリーンが実は幸運の女神さまの異能を持ち、それを知らずにないがしろにしてきたことの報いを今、受けているという真実を突き付けたうえで、アイリーンの家族全員を石に変えてしまったようだけど、弟たちにとっては、却ってよかったことではないかと思われる。
それで気分がスッキリしたかどうかは、わからないけど、このところアフロディーテの機嫌がやたらいい。
クリストファー殿下との関係も順調かどうかわからないけど、聞くと怒るから黙っている。それで、今回はお留守番してくれるかと思いきや、アムステルダム行きに同行すると言い出して、また珍道中になりそうな予感がしてならない。
「失礼ね!いったい誰のおかげで、記憶を取り戻せたと思っているのよ?」
「はい。はい。わかっておりますとも」
アフロディーテは疑わしげにジト目をしていても、すぐに機嫌が直る。もう、すっかり人間界の暮らしを楽しんでいる様子に友として嬉しい。
今回も精霊王デイジーは、同行するが、サファイアは同行せず、代わりにオパールが行くことになったらしい。
というのも、サファイアは、エレモアとイイ仲になりつつあって、今回は留守中にエレモアに何かあってはいけない。とばかりにエレモアの護衛に勤しんでいる様子。
エレモアも、サファイアが馬だと承知の上で付き合っているので、前々世の二の舞にはならないだろうと思う。
「もう、済ませた?」なんて、野暮なことは聞けないし、お互いいい大人なので、よろしくやっているのだろうな、と推察するにとどめる。
今回の旅行は、地続きで行くことにしたから、もう天界で集合する必要はない。というのも、厨房の奥の小部屋……実は、前世のタワマンの部屋とアムステルダム国の新しい店を繋げてしまったから。
この前、行ったとき、その店の手付金だけは支払っておいたので、やっぱり厨房同士、繋げてしまった方が調理の際、何かと便利になるので……。
それで今回の訪問で、残金を一括して支払い、数日後には、晴れてOPENにこぎつける段取りをしている。
シンイーは、初めて入ったタワマンの部屋を懐かしそうに眺めている。
あれ?ひょっとして、シンイーも前世の記憶があったりして……?なわけないか、下等動物にそこまでの知恵があるはずがない。でも……。
まあ、いいっか。考えることはやめよう。とにかく今はシドニー公爵の動向を探らなければ、それにいざとなれば、アイリーンも神の力を遣うし、アフロディーテはハナから使うつもりでいるようだし、デイジーもオパールも伝家の宝刀を抜く準備は出来上がっているというもの。
シドニーは、シンイー兄弟の生死を確かめるわけでもなく、もう王宮をわが物顔で闊歩している様子で、シンイーはそれを苦々しく見ている。
とにかく、シンイーは、玉座に座ってもらわないといけない。それについて、いろいろな憶測や不都合が生じても、それら一切合切のことは、神様たちに任せなさいと勢いよく太鼓判を押す。
「え!あなた方は、神様だったのですか?」
「はい。わたくしは幸運と豊穣の女神アイリーンです」
「ええ。わたくしは愛と美の女神アフロディーテです」
「俺は、精霊王デイジー、こっちは半馬神のオパール。これだけの神が一堂にそろって、シンイーを応援しているのだから、大船に乗ったつもりでいるがよい」
「では、店にいる他の方たちもすべて?」
「いや、店の者たちは我らの正体に気づいていない」
当たらずとも遠からずのことを言っている。
アフロディーテも、レストラン・オーナーの肩書にご満悦で、そもそも自分の名前が冠しているものだから、アイリーンの虎の子のおかげの店だということも、満足に拍車をかけている。
あの後、差し入れと称しエストロゲン家に出向き、アイリーンが実は幸運の女神さまの異能を持ち、それを知らずにないがしろにしてきたことの報いを今、受けているという真実を突き付けたうえで、アイリーンの家族全員を石に変えてしまったようだけど、弟たちにとっては、却ってよかったことではないかと思われる。
それで気分がスッキリしたかどうかは、わからないけど、このところアフロディーテの機嫌がやたらいい。
クリストファー殿下との関係も順調かどうかわからないけど、聞くと怒るから黙っている。それで、今回はお留守番してくれるかと思いきや、アムステルダム行きに同行すると言い出して、また珍道中になりそうな予感がしてならない。
「失礼ね!いったい誰のおかげで、記憶を取り戻せたと思っているのよ?」
「はい。はい。わかっておりますとも」
アフロディーテは疑わしげにジト目をしていても、すぐに機嫌が直る。もう、すっかり人間界の暮らしを楽しんでいる様子に友として嬉しい。
今回も精霊王デイジーは、同行するが、サファイアは同行せず、代わりにオパールが行くことになったらしい。
というのも、サファイアは、エレモアとイイ仲になりつつあって、今回は留守中にエレモアに何かあってはいけない。とばかりにエレモアの護衛に勤しんでいる様子。
エレモアも、サファイアが馬だと承知の上で付き合っているので、前々世の二の舞にはならないだろうと思う。
「もう、済ませた?」なんて、野暮なことは聞けないし、お互いいい大人なので、よろしくやっているのだろうな、と推察するにとどめる。
今回の旅行は、地続きで行くことにしたから、もう天界で集合する必要はない。というのも、厨房の奥の小部屋……実は、前世のタワマンの部屋とアムステルダム国の新しい店を繋げてしまったから。
この前、行ったとき、その店の手付金だけは支払っておいたので、やっぱり厨房同士、繋げてしまった方が調理の際、何かと便利になるので……。
それで今回の訪問で、残金を一括して支払い、数日後には、晴れてOPENにこぎつける段取りをしている。
シンイーは、初めて入ったタワマンの部屋を懐かしそうに眺めている。
あれ?ひょっとして、シンイーも前世の記憶があったりして……?なわけないか、下等動物にそこまでの知恵があるはずがない。でも……。
まあ、いいっか。考えることはやめよう。とにかく今はシドニー公爵の動向を探らなければ、それにいざとなれば、アイリーンも神の力を遣うし、アフロディーテはハナから使うつもりでいるようだし、デイジーもオパールも伝家の宝刀を抜く準備は出来上がっているというもの。
シドニーは、シンイー兄弟の生死を確かめるわけでもなく、もう王宮をわが物顔で闊歩している様子で、シンイーはそれを苦々しく見ている。
とにかく、シンイーは、玉座に座ってもらわないといけない。それについて、いろいろな憶測や不都合が生じても、それら一切合切のことは、神様たちに任せなさいと勢いよく太鼓判を押す。
「え!あなた方は、神様だったのですか?」
「はい。わたくしは幸運と豊穣の女神アイリーンです」
「ええ。わたくしは愛と美の女神アフロディーテです」
「俺は、精霊王デイジー、こっちは半馬神のオパール。これだけの神が一堂にそろって、シンイーを応援しているのだから、大船に乗ったつもりでいるがよい」
「では、店にいる他の方たちもすべて?」
「いや、店の者たちは我らの正体に気づいていない」
当たらずとも遠からずのことを言っている。
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