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現世:新たなる旅立ち
40.神界
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「いらっしゃいませ」
アフロディーテの席に、アイリーンがフレッシュジュースを運び、そのまま対面の席に着く。
「アイリーン!会いたかったわ。久しぶりね」
「はて?お客様のような美貌の知り合いはないはずですが……、どこかで、お眼にかかったことがございましたかしら、スタッフから言われて、この席に行くようにと申し付かってきたのでございますが……、あ!申し遅れました。わたくし、レストラン・アフロディーテのオーナーのアイリーンと申します。故遭って、家名はございません」
「アイリーン、本当にわたくしのことも忘れてしまったの?」
アフロディーテはみるみる大きな瞳から大粒の涙をこぼし始める。
「え……と、そう言われましても……」
「いいわ。これも想定内のことだったものね。百聞は一見に如かず、だから、わたくしと一緒に来てくださる?」
「え、でも店が……」
「そんなものデイジーとサファイアに任せておけば大丈夫よ」
綺麗な顔をしている割には、強引なところがある。有無を言わさぬ勢いで、すっかりアイリーンは、絡めとられてしまう。
なに?この感じ!?この美人も、もしかすると、人ならざる者だったりして……。
そして、アフロディーテが指をパチンと鳴らすと、辺りは店の喧騒が消え、霧の中に入っていく。いつの間にか上空にいて、雲海が綺麗だ。なんて、言っている場合ではない!
不思議と風はない。気圧の変化もさほど感じず、むしろ快適と言ってもいいほど。
「ここは?」
「もうすぐよ」
そこは、前世見た映画の記憶がある天空の城〇ピュタそのものかのような空中に浮かんでいる。その中には、まるでパテシノン宮殿を思わせるようなギリシャ神話の中のような景色が広がっていた。
「ここへ来ても、まだ何も思い出せない?」
「……」
アイリーンは、来ていたワンピースをはぎ取られ、裸に布を巻いただけのあられもない姿にさせられてしまう。
道行く人たちからは、「アイリーンおかえり、人間界はどうだった?」と声をかけられ、また驚く。
「サファイアやオパール、それにデイジーもずいぶんアイリーンのことを心配していてね。もう記憶が戻らないんじゃないかって」
「……わたくし、元は神だったのですか?」
「そうよ。幸運と豊穣の女神アイリーン。空気を浄化して、作物を実らせる力があるのよ。アイリーンは、度々、人間界へ下りて、その……人間の男性と恋に堕ちて、そのまま人間界に留まり、相手の男性が亡くなると、また神界に戻ってくるというパターンを繰り返していたのよ。それが、つい200年ほど前になるかしらね。行ったきり戻ってこなくなってしまったのよ。みんな心配していてね。それに、このままじゃ、空気が浄化されずに瘴気だらけになってしまい、やがて人類は滅びそうになったってものだから、わたくしアフロディーテがアイリーンを迎えに行く役目を仰せつかったってわけよ」
「そんな話、すぐに信じろって言う方が無理だと思うわ」
「うん。そうだよね」
アフロディーテはいいものを見せてあげると言って、アイリーンをガラス張りの部屋?みたいなところへ案内してくれる。これも前世の記憶だけど、鏡張りの部屋はエッチなことをする部屋だとしか思えないけど、ガラス張りってどうなのだろう?
高い所のガラス張りは、けっこう怖い。真下が見え、落ちそうな気になり、脚が震えてくる。
アフロディーテは下を見るから怖いのよ。と言いながら、部屋の中央に連れて行かれ、そこにはデスクと椅子、それにノートパソコンが置いてあったのだ。
これって、まるっきり、前世のオフィスそのものではないか?
「ここでね。瘴気を見定めるのよ」
ガラス張りだと思っていたけど、それらはすべてディスプレイの画面だったことがわかり、少しホっとする。
アフロディーテの席に、アイリーンがフレッシュジュースを運び、そのまま対面の席に着く。
「アイリーン!会いたかったわ。久しぶりね」
「はて?お客様のような美貌の知り合いはないはずですが……、どこかで、お眼にかかったことがございましたかしら、スタッフから言われて、この席に行くようにと申し付かってきたのでございますが……、あ!申し遅れました。わたくし、レストラン・アフロディーテのオーナーのアイリーンと申します。故遭って、家名はございません」
「アイリーン、本当にわたくしのことも忘れてしまったの?」
アフロディーテはみるみる大きな瞳から大粒の涙をこぼし始める。
「え……と、そう言われましても……」
「いいわ。これも想定内のことだったものね。百聞は一見に如かず、だから、わたくしと一緒に来てくださる?」
「え、でも店が……」
「そんなものデイジーとサファイアに任せておけば大丈夫よ」
綺麗な顔をしている割には、強引なところがある。有無を言わさぬ勢いで、すっかりアイリーンは、絡めとられてしまう。
なに?この感じ!?この美人も、もしかすると、人ならざる者だったりして……。
そして、アフロディーテが指をパチンと鳴らすと、辺りは店の喧騒が消え、霧の中に入っていく。いつの間にか上空にいて、雲海が綺麗だ。なんて、言っている場合ではない!
不思議と風はない。気圧の変化もさほど感じず、むしろ快適と言ってもいいほど。
「ここは?」
「もうすぐよ」
そこは、前世見た映画の記憶がある天空の城〇ピュタそのものかのような空中に浮かんでいる。その中には、まるでパテシノン宮殿を思わせるようなギリシャ神話の中のような景色が広がっていた。
「ここへ来ても、まだ何も思い出せない?」
「……」
アイリーンは、来ていたワンピースをはぎ取られ、裸に布を巻いただけのあられもない姿にさせられてしまう。
道行く人たちからは、「アイリーンおかえり、人間界はどうだった?」と声をかけられ、また驚く。
「サファイアやオパール、それにデイジーもずいぶんアイリーンのことを心配していてね。もう記憶が戻らないんじゃないかって」
「……わたくし、元は神だったのですか?」
「そうよ。幸運と豊穣の女神アイリーン。空気を浄化して、作物を実らせる力があるのよ。アイリーンは、度々、人間界へ下りて、その……人間の男性と恋に堕ちて、そのまま人間界に留まり、相手の男性が亡くなると、また神界に戻ってくるというパターンを繰り返していたのよ。それが、つい200年ほど前になるかしらね。行ったきり戻ってこなくなってしまったのよ。みんな心配していてね。それに、このままじゃ、空気が浄化されずに瘴気だらけになってしまい、やがて人類は滅びそうになったってものだから、わたくしアフロディーテがアイリーンを迎えに行く役目を仰せつかったってわけよ」
「そんな話、すぐに信じろって言う方が無理だと思うわ」
「うん。そうだよね」
アフロディーテはいいものを見せてあげると言って、アイリーンをガラス張りの部屋?みたいなところへ案内してくれる。これも前世の記憶だけど、鏡張りの部屋はエッチなことをする部屋だとしか思えないけど、ガラス張りってどうなのだろう?
高い所のガラス張りは、けっこう怖い。真下が見え、落ちそうな気になり、脚が震えてくる。
アフロディーテは下を見るから怖いのよ。と言いながら、部屋の中央に連れて行かれ、そこにはデスクと椅子、それにノートパソコンが置いてあったのだ。
これって、まるっきり、前世のオフィスそのものではないか?
「ここでね。瘴気を見定めるのよ」
ガラス張りだと思っていたけど、それらはすべてディスプレイの画面だったことがわかり、少しホっとする。
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