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前々世
37.転生の海
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王太子クリスは、学園で婚約者を見つけられなかったことが大きな痛手となってしまう。
それと言うも、クリスは婚約者の顔をまともに覚えていない。婚約者とは、お妃選定会で選ばれた政略での間柄だったために、ハナからクリスの興味の対象外だったわけで、大人の都合で選ばれた相手に過ぎなかったのだ。
それでも、顔合わせの時に婚約者に対して「可愛い」の印象はあったが、クリスは黙っていても、王子だから、それも正妃との間の正当な王位継承権を持つ身の上、黙っていても、女の方が湧いて出てくるようにクリスに群がってくる。
婚約者がクリスのもとに通わなかったから行けないのだ。との理屈が通じると思っていたのだが、学園祭のことで、親父から大目玉を食らってしまう。
それに、腹違いの王子シンリーは、婚約者がいないにもかかわらず、隣国アトランティスの王女と仮面舞踏会で出会い、恋に堕ちたそうで、婚約したいとまで言ってきたそうだ。
サザンクロス国としては、願ってもない良縁に親父はすっかり乗り気で、もし婚約が相整った暁には、シンリーを王太子の位置に据えると言っている。
そうなれば、クリスのメンツは丸つぶれになることは必定なもので、ここへ来て、群がる令嬢どもを一掃しようと試みるのだ。
そして、真の婚約者を見つけ出し、関係性を取り戻せば、親父の気も変わるかもしれない。
それにしても「美人」というほかに、特徴がないというのも困りものだ。それで仮面舞踏会の時に、美人と思われる令嬢に片っ端から声をかけまくったが、みんな断られてしまったのだ。なぜだ?
それも無理な話で、顔を忘れているばかりか、名前まで出てこない。要するに名前と顔がわからないうえに、学園に入ってから、ここしばらくというよりも全然、まったくと言っていいほど、お茶会に行っていないものだから、誰が誰だったか覚えていなくて当然なのだ。
それも王太子の地位につられている奴ばかりだから、王子に格下げになったら、ぐんと減るかもしれないし、そうなれば、真の婚約者を見つけやすくなるだろうけど、その時には婚約者殿から愛想を尽かされているかもしれないし、痛し痒しといったところ。
それにしても腹違いのシンリーは目障りな奴だな。あれほど手のものに殺せと命じたのに、いまだに生きているではないか!それに、アトランティスの王女殿下と婚約だとぉ!?到底、容認できる話ではない!
クリスは、今の婚約者に不満があるわけではないが、シンリーの婚約者の方は身分が高いから、承認要求を満足させるに十分すぎるほどの相手であることは間違いない。
だから、うらやましくて仕方がない。自分の方が何もかも小さいときから、与えられてきたというのに、何も与えられず、命まで奪おうとしていた相手の方が、持ち物が良いなど、あってはならないことと決めつけている。
だから、シンリーの婚約者を汚してやろうと思う。襲って、キズモノにしてやろう。婚約者が処女でなければ、シンリーも結婚できないだろう。
それはすなわち、外交上の問題に発展するということなど、もはや念頭にない。誰でもいいから、腕っぷしの立つ奴らに、王女を攫って来てもらい、一番目の味見はクリスが、後は順番に輪姦すれば、もう立派なキズモノの出来上がりというわけだ。
メロディーナの傍には、シンリーのほかに、サファイア、オパール、エメラルド、精霊王のデイジーまで腕の立つ人ならざる者がゴロゴロいるということは、知る由もない。
そして決行の日、どういうわけか王女殿下の周りには、いつも腕の立つ騎士がいて、どうにも手が出せずにいるクリス派、それで二人がデートしているときは、さすがに護衛もすぐそばにいないようで遠慮がちに、少し離れたところから監視するにとどめているので、
その時を狙うことにする。
騎士には手を出さず、二人が愛し合っているときは、さすがのシンリーも丸腰のはずだから、その時を狙うことにしたのだ。
「メロディーナ、愛しているよ」
「わたくしもです。殿下」
その日に限って、その部屋に結界をかけ忘れていたメロディーナは、目の前で愛する人をあっけなく殺されてしまう。
シンリーとは、繋がったままでも、だんだん体温を感じなくなっていく。
「いやあぁぁぁぁぁ」
そこへシンリーのカラダを押しのけ、まだ朦朧としているメロディーナのナカに無理やり入ろうとしてくるクリス。
思わず、クリスの根元に氷魔法を放つメロディーナ。一瞬、冷たさを感じるが、すぐに水になったクリスは、己が何をされたか理解できず、抵抗するメロディーナの首を渾身の力で締め上げていく。
サファイアたちが駆けつけた時は、すでに遅しで、シンリーとメロディーナの遺体の傍に呆然と立つクリス。
それにクリス派の腕に自信があるもの数名が、クリスの下半身に注視しながら唖然として突っ立ていたのだ。
そこで何を行うつもりだったかは、一目瞭然だったので、メロディーナ様ことアイリーン様のされたように、サファイア達は、その場にいる人間の男、全員のイチモツを凍らせていく。
アイリーン様の魂をいち早く神界へ戻すものの、自分が女神であることを忘れてしまわれたアイリーン様は、転生の海に投げ出された後のことだった……。
それと言うも、クリスは婚約者の顔をまともに覚えていない。婚約者とは、お妃選定会で選ばれた政略での間柄だったために、ハナからクリスの興味の対象外だったわけで、大人の都合で選ばれた相手に過ぎなかったのだ。
それでも、顔合わせの時に婚約者に対して「可愛い」の印象はあったが、クリスは黙っていても、王子だから、それも正妃との間の正当な王位継承権を持つ身の上、黙っていても、女の方が湧いて出てくるようにクリスに群がってくる。
婚約者がクリスのもとに通わなかったから行けないのだ。との理屈が通じると思っていたのだが、学園祭のことで、親父から大目玉を食らってしまう。
それに、腹違いの王子シンリーは、婚約者がいないにもかかわらず、隣国アトランティスの王女と仮面舞踏会で出会い、恋に堕ちたそうで、婚約したいとまで言ってきたそうだ。
サザンクロス国としては、願ってもない良縁に親父はすっかり乗り気で、もし婚約が相整った暁には、シンリーを王太子の位置に据えると言っている。
そうなれば、クリスのメンツは丸つぶれになることは必定なもので、ここへ来て、群がる令嬢どもを一掃しようと試みるのだ。
そして、真の婚約者を見つけ出し、関係性を取り戻せば、親父の気も変わるかもしれない。
それにしても「美人」というほかに、特徴がないというのも困りものだ。それで仮面舞踏会の時に、美人と思われる令嬢に片っ端から声をかけまくったが、みんな断られてしまったのだ。なぜだ?
それも無理な話で、顔を忘れているばかりか、名前まで出てこない。要するに名前と顔がわからないうえに、学園に入ってから、ここしばらくというよりも全然、まったくと言っていいほど、お茶会に行っていないものだから、誰が誰だったか覚えていなくて当然なのだ。
それも王太子の地位につられている奴ばかりだから、王子に格下げになったら、ぐんと減るかもしれないし、そうなれば、真の婚約者を見つけやすくなるだろうけど、その時には婚約者殿から愛想を尽かされているかもしれないし、痛し痒しといったところ。
それにしても腹違いのシンリーは目障りな奴だな。あれほど手のものに殺せと命じたのに、いまだに生きているではないか!それに、アトランティスの王女殿下と婚約だとぉ!?到底、容認できる話ではない!
クリスは、今の婚約者に不満があるわけではないが、シンリーの婚約者の方は身分が高いから、承認要求を満足させるに十分すぎるほどの相手であることは間違いない。
だから、うらやましくて仕方がない。自分の方が何もかも小さいときから、与えられてきたというのに、何も与えられず、命まで奪おうとしていた相手の方が、持ち物が良いなど、あってはならないことと決めつけている。
だから、シンリーの婚約者を汚してやろうと思う。襲って、キズモノにしてやろう。婚約者が処女でなければ、シンリーも結婚できないだろう。
それはすなわち、外交上の問題に発展するということなど、もはや念頭にない。誰でもいいから、腕っぷしの立つ奴らに、王女を攫って来てもらい、一番目の味見はクリスが、後は順番に輪姦すれば、もう立派なキズモノの出来上がりというわけだ。
メロディーナの傍には、シンリーのほかに、サファイア、オパール、エメラルド、精霊王のデイジーまで腕の立つ人ならざる者がゴロゴロいるということは、知る由もない。
そして決行の日、どういうわけか王女殿下の周りには、いつも腕の立つ騎士がいて、どうにも手が出せずにいるクリス派、それで二人がデートしているときは、さすがに護衛もすぐそばにいないようで遠慮がちに、少し離れたところから監視するにとどめているので、
その時を狙うことにする。
騎士には手を出さず、二人が愛し合っているときは、さすがのシンリーも丸腰のはずだから、その時を狙うことにしたのだ。
「メロディーナ、愛しているよ」
「わたくしもです。殿下」
その日に限って、その部屋に結界をかけ忘れていたメロディーナは、目の前で愛する人をあっけなく殺されてしまう。
シンリーとは、繋がったままでも、だんだん体温を感じなくなっていく。
「いやあぁぁぁぁぁ」
そこへシンリーのカラダを押しのけ、まだ朦朧としているメロディーナのナカに無理やり入ろうとしてくるクリス。
思わず、クリスの根元に氷魔法を放つメロディーナ。一瞬、冷たさを感じるが、すぐに水になったクリスは、己が何をされたか理解できず、抵抗するメロディーナの首を渾身の力で締め上げていく。
サファイアたちが駆けつけた時は、すでに遅しで、シンリーとメロディーナの遺体の傍に呆然と立つクリス。
それにクリス派の腕に自信があるもの数名が、クリスの下半身に注視しながら唖然として突っ立ていたのだ。
そこで何を行うつもりだったかは、一目瞭然だったので、メロディーナ様ことアイリーン様のされたように、サファイア達は、その場にいる人間の男、全員のイチモツを凍らせていく。
アイリーン様の魂をいち早く神界へ戻すものの、自分が女神であることを忘れてしまわれたアイリーン様は、転生の海に投げ出された後のことだった……。
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