転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

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前々世

34.仮面舞踏会

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 それから瞬く間に、2年の月日が過ぎる。いまだにメロディーナのお相手となる男性は現れないが、サザンクロスの浄化は順調にいっている。

 この分だと、卒業するまでに、浄化は終わりそうになる見込みがある。王都の街に出ても、入学式の前に感じた不穏な空気や臭いも気にならないと言えば、嘘になるが、ずいぶんマシになり浄化されたと思う。

 今回はいい出会いに恵まれなかったが、アイリーンには次があるし、焦ってはいない。それにサファイアやオパールと言った半馬神らにとって、今回は福利厚生にもなったであろうし、それはそれでよかったと思っている。

 ところが最後の学園祭に仮面舞踏会が用意されていて、それでメロディーナは運命の恋に落ちてしまう。

 学園の生徒は、全員目元を隠す仮面をつけなければ参加できない。ナターシャとスーザン、メロディーナはおそろいの仮面でそれぞれ色違いのものを付けることになったが、3人は、誰が何色の仮面かを知っているが、他の生徒たちは、それを知らない。

 それにそれぞれの令嬢には、ほとんど婚約者がいるので、本人の令嬢に内緒で、その婚約者をサプライズとして、呼んでいるのだが、見事、自分の婚約者を見つけられた男性には、結婚祝いとして、豪華プレゼントが用意されているという、まさしくサプライズの連続のようなお祭りで、最後の学園祭を飾るにふさわしいという内容なのである。

 でも、ドレスを着たら、それぞれの令嬢の好みによって、すぐに婚約者にバレてしまうので、令嬢は、一律学園側が用意したドレスに着替えさせられる。

 果たして、真実の愛を持っている同志なら、必ずや、婚約者を見つけられるだろうという趣旨が成功するかどうかが見ものでもある。

 当然、この中には、婚約者でない男性も多く含まれている。それにサファイアやオパールまで、一応、女神さまの警護ということで参加しているものの、舞踏会の合間に、自分の彼女を庭へ誘い出し、ナニに興じるつもりだろうけど、うまく彼女を見つけられればいいね。

 婚約者がいるから、案外、取り合いになってしまうケースも考えられるのでは?と懸念する。

 最初に、メロディーナにダンスの申し込みをしてきた相手は、サザンクロスの王太子クリスであったが、メロディーナは、さりげなく「違う」という合図を送る。だって、馬面だから、すぐに分かったわよ。見間違えるなんて、あり得ない話だわ。ご自分の婚約者と他国の王女を間違えてしまうなんてね。それとも、一向になびかないことに腹を立てて、粉をかけてきたつもりかしらね。

 いくらスーザンと色違いとはいえ、おそろいの仮面をつけているとはいえ、ひどい。それに自国ではないから、しゃべりかたのアクセントでわかるだろうに。

 断っているのに、尚もしつこく誘ってくる王太子に辟易していると、そこにサファイアがさりげなくフォローしてくれて、王太子とメロディーナとの間にカラダを割り込ませてくる。

 サファイア、グッジョブよ!馬にしとくのが惜しいぐらいだわ。

 サファイアは、無事、ナターシャを見つけ、二人そろって、外の空気を吸いに出たところを見届ける。

 オパールも、スーザンを王太子に見つけられる前に、庭に誘っている姿を見る。スーザンもうっとりとした面持ちで、体重のほとんどすべてをオパールに預けていることがよくわかる。

 王太子は、何やっているのかと思えば、メロディーナにフラれた後は、まったく違う令嬢をまたダンスに誘っているようだが、その令嬢からも断られ、一向に自分の婚約者を見つけられないでいる様子。この学園祭のメイン行事の一つだから、何が何でもスーザンを見つけなければならないのに、日ごろからスーザンのことを気にも留めていないから、こういう時に間男にとられてしまうのよ。と一人ほくそ笑んでいると、不意に、ある男性から踊ってくださいと言われてしまう。

 アトランティス訛りがないから、婚約者と違うとわかっていても、なぜかその男性に強く惹かれるものがあり、つい、差し出されたその手を取ってしまう。

 ホールの中央に出て、音楽に合わせ、ステップを踏む。以前からの知り合いかのような、相性がいいダンスパートナーに思わず周りからため息が漏れる。
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