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現世:カフェレストラン
22.人ならざる者
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アイリーンが公爵家を出てから、半年が経とうとしている。ユリアは、セロトニン伯爵家へ嫁ぎ、昼間だけレストランに来て、手伝ってくれている。
そして、昼と夜の食券売り場に新しくエレモアが加わってくれて、昼間の食券は、カフェと食事の発券をユリアと分担してやってくれている。
ユリアももうじきお母さんになるのだから、あまり無理はしてほしくないが、ユリアは、店へ出勤すると元気が出ると言ってくれるので、お言葉に甘えさせてもらっている。
そして、エレモアはと言うと、あれから商業ギルドであっせんしてもらった仕事にありついたが、その家の主人夫婦が相次いで病死してしまい、また解雇され、行き場を失ってしまう。
商業ギルドに求人票を探しに行くも、すぐには見当たらない。住み込みで働けるところは、なかなかないという現状がある。
思い出すのは、あの世にも奇妙な料理を提供してくれるステファニーお嬢様のレストランのことばかり、何度かレストランの前を通りがかるも、なかなか勇気が出ず、それでも、お腹が空く音がうるさい。
思い余って、お客として、来店したら、思いがけなく温かくもてなしを受けてしまったので、再度、ステファニーお嬢様ことアイリーンオーナーに頭を下げて、頼み込むと、すんなりOKが出た。
「本当に、働かせてもらえるのですか?ありがとうございます!一生懸命働きますので、よろしくお願いします」
「でも、他のスタッフから苦情が来たら、すぐにでも辞めてもらいますから、みんなと仲良くしてくださいね」
「はい。わかっております。もう昔のような真似は二度と致しません。私のようなものを置いてくださるだけで、十分すぎるほどありがたいです」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
アイリーンがエレモアを受け入れたことには、訳がある。別に誰かに頼まれたとかそういうのではなくて、いつの間にか、レストランの従業員のほとんどは、人ならざる者が占めてしまっているという現実があったからで、まともな人間であれば、誰でもよかったというところなのである。
それと言うのも、男性のお客様からお花を頂いてしまって……、エントランスに飾ると、次から次へと、どんどんお花を貰うようになって、嬉しいけど、ちょっと困るような?
切り花ぐらいならいいけど、土付きは衛生上あまりよろしくない。
でも、捨てるわけにはいかないので、裏の洗濯場の横に花壇を作り、そこに植え替えるようにしてみたら、なぜか精霊に居つかれてしまったのだ。
「出て行って」とも言えず、困っていると、その精霊たちが人間の姿になり、いろいろと手伝ってくれるようになってしまったのだ。助かるけど、無給というわけにはいかない。
それに社宅の問題もある。馬と一緒でよければ、と社宅を指差しても断られ、花弁の上が一番落ち着くと言って、聞いてもらえない。
ユリアの後釜に精霊を置くことも考えたけど、もし人間でないものが店の表にいて、何かトラブルになった時のことを考えると、怖くて、店の前には出しづらい。
そこにエレモアが現れたものだから、一も二もなく飛びついてしまったという現状がある。
ただし、トラブルは避けたい。
あれからサファイアたちも、どことなくエレモアのことを気にしているようだったので、さすが半馬神は、人間とは違い情があるのだなぁと感心していた。
精霊たちは、店が始まる2時間前には、厨房に集まってくれて、仕込みの手伝いをしてくれている。床を掃除して、新しいテーブルクロスをかけてくれ、本日のメニューに沿った食券の発行もしてくれ、アイリーンにとっては、大助かりであるということに間違いはない。
サファイアたちの馬とも相性が良く、冗談を言い合うほど仲良しなのも、気に入っているところの一つではある。
そして、昼と夜の食券売り場に新しくエレモアが加わってくれて、昼間の食券は、カフェと食事の発券をユリアと分担してやってくれている。
ユリアももうじきお母さんになるのだから、あまり無理はしてほしくないが、ユリアは、店へ出勤すると元気が出ると言ってくれるので、お言葉に甘えさせてもらっている。
そして、エレモアはと言うと、あれから商業ギルドであっせんしてもらった仕事にありついたが、その家の主人夫婦が相次いで病死してしまい、また解雇され、行き場を失ってしまう。
商業ギルドに求人票を探しに行くも、すぐには見当たらない。住み込みで働けるところは、なかなかないという現状がある。
思い出すのは、あの世にも奇妙な料理を提供してくれるステファニーお嬢様のレストランのことばかり、何度かレストランの前を通りがかるも、なかなか勇気が出ず、それでも、お腹が空く音がうるさい。
思い余って、お客として、来店したら、思いがけなく温かくもてなしを受けてしまったので、再度、ステファニーお嬢様ことアイリーンオーナーに頭を下げて、頼み込むと、すんなりOKが出た。
「本当に、働かせてもらえるのですか?ありがとうございます!一生懸命働きますので、よろしくお願いします」
「でも、他のスタッフから苦情が来たら、すぐにでも辞めてもらいますから、みんなと仲良くしてくださいね」
「はい。わかっております。もう昔のような真似は二度と致しません。私のようなものを置いてくださるだけで、十分すぎるほどありがたいです」
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アイリーンがエレモアを受け入れたことには、訳がある。別に誰かに頼まれたとかそういうのではなくて、いつの間にか、レストランの従業員のほとんどは、人ならざる者が占めてしまっているという現実があったからで、まともな人間であれば、誰でもよかったというところなのである。
それと言うのも、男性のお客様からお花を頂いてしまって……、エントランスに飾ると、次から次へと、どんどんお花を貰うようになって、嬉しいけど、ちょっと困るような?
切り花ぐらいならいいけど、土付きは衛生上あまりよろしくない。
でも、捨てるわけにはいかないので、裏の洗濯場の横に花壇を作り、そこに植え替えるようにしてみたら、なぜか精霊に居つかれてしまったのだ。
「出て行って」とも言えず、困っていると、その精霊たちが人間の姿になり、いろいろと手伝ってくれるようになってしまったのだ。助かるけど、無給というわけにはいかない。
それに社宅の問題もある。馬と一緒でよければ、と社宅を指差しても断られ、花弁の上が一番落ち着くと言って、聞いてもらえない。
ユリアの後釜に精霊を置くことも考えたけど、もし人間でないものが店の表にいて、何かトラブルになった時のことを考えると、怖くて、店の前には出しづらい。
そこにエレモアが現れたものだから、一も二もなく飛びついてしまったという現状がある。
ただし、トラブルは避けたい。
あれからサファイアたちも、どことなくエレモアのことを気にしているようだったので、さすが半馬神は、人間とは違い情があるのだなぁと感心していた。
精霊たちは、店が始まる2時間前には、厨房に集まってくれて、仕込みの手伝いをしてくれている。床を掃除して、新しいテーブルクロスをかけてくれ、本日のメニューに沿った食券の発行もしてくれ、アイリーンにとっては、大助かりであるということに間違いはない。
サファイアたちの馬とも相性が良く、冗談を言い合うほど仲良しなのも、気に入っているところの一つではある。
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