19 / 79
現世:カフェレストラン
19.同情
しおりを挟む
アイリーンの店の仕入れは、たいていのモノがユリアの商会から仕入れられるけど、どうしてもないものは、タワマンの冷蔵庫の前で唸ると不思議と数時間後には、そのものが入っている。例えばオリーブオイル、カレー粉、柚子ごしょうなどの調味料系がそのほとんどである。
だから欲しいものを考えてから、メニューを作るようにしている。先にメニューを考えると失敗してしまったことがあって、それからは冷蔵庫の中身と相談しながらメニューを作るようにしている。
ランチが終わり、カフェメニューは、ケーキを作り置きしているだけで、特に厨房に籠りきりというわけではないので、お買い物に行ったり、夜ご飯のメニュー開発をしたりしている。
その日もアイスクリームをバニラ以外の味でも作ろうかどうしようか、悩んでいると珍しく暗い顔をしたサファイアが入ってくる。
「どうしたの?」
「今、店に意地悪女が来ている。オーナーに会いたいって言っているけど、どうする?」
「えっ!?誰のこと?」
「今、店に来ている……、ほら、あの緑色の……」
厨房の料理を出し入れする窓から店内を見回す……、
「ひょっとして!?エレモアのこと?」
「そうだよ、偉そうにユリアを呼び捨てにしやがって。あの分だと、エストロゲン家を追い出されたに違いない!」
「今更、何の用かしら?」
「どうせ、行く当てもないから、ここで働かせてくれと言うに決まっているだろ?俺は反対だからな。せっかく、あの女の顔を見るのが嫌で、ここまで来たというのに、今更またあの女の意地悪そうな顔を見るのも嫌だ」
サファイアは、エレモアに飼い葉の代わりに泥を食べさせられた経験があり、ものすごく嫌そうな顔をしている。
「うーん。それで、営業時間が終わってから、また来いと言っておいた」
「なーに?その怪しげな対応は?そんなにキライだったら、追い返せばいいものを」
「オーナーの成功を見せつけてやりたいという気もあって……」
なるほどね。でもエレモアの前で、ステファニーだと暴露する気はない。
「わかったわ。夜ご飯前に集合しましょう。それでみんなの意見を聞きたいわ。他の子たちにもそう伝えてくれる?」
「了解しました」
納得はしていないけど、なんだかんだ言って、見捨てる気はなさそうなサファイアの後姿を見送る。
エレモアがどういう事情を抱えているのか、わからないから話だけでも聞いてみようかしら。
その考えは夜の部が始まる前に全員から却下されてしまう。
「アイリーン様、そのお考えは甘いです。あのエレモアですわよ?何を企んでいるのか、わかったものではございません!」
「そう?でも、もし今困っているのなら……」
「だから、それが甘いというのです。ここは心を鬼にしてでも、追い返してくださいまし」
元・馬だったホールスタッフからも厳しい目を向けられる。
「あの女は犯罪者なのです。商売は信用が第一なものですから、絶対に甘い顔を見せてはダメです。もしそれでも……と思われるようなら、きちんとした紹介者を間に立ててくれというべきです」
「わ、わかったわ。このレストランもスタートダッシュしてから間もないから、なんとかお断りするわね……、でももし、泊る所もないと言われたら、どうしよう……」
「それでもです!」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
エレモアは、レストランを出てから、行く当てもないので、店の営業時間が過ぎるまで、ずっと店の前で、立ち続けている。
もしかしたら、ユリアが口利きをしてくれるかもしれないという期待を込めているのだが、ユリアから、こっぴどく自分が嫌われていることなど思いもしていない。
アイリーンは、かわいそうと同情するが、甘い顔をすると、他のスタッフから怒られてしまうので、知らないふりをして、我慢している。
だから欲しいものを考えてから、メニューを作るようにしている。先にメニューを考えると失敗してしまったことがあって、それからは冷蔵庫の中身と相談しながらメニューを作るようにしている。
ランチが終わり、カフェメニューは、ケーキを作り置きしているだけで、特に厨房に籠りきりというわけではないので、お買い物に行ったり、夜ご飯のメニュー開発をしたりしている。
その日もアイスクリームをバニラ以外の味でも作ろうかどうしようか、悩んでいると珍しく暗い顔をしたサファイアが入ってくる。
「どうしたの?」
「今、店に意地悪女が来ている。オーナーに会いたいって言っているけど、どうする?」
「えっ!?誰のこと?」
「今、店に来ている……、ほら、あの緑色の……」
厨房の料理を出し入れする窓から店内を見回す……、
「ひょっとして!?エレモアのこと?」
「そうだよ、偉そうにユリアを呼び捨てにしやがって。あの分だと、エストロゲン家を追い出されたに違いない!」
「今更、何の用かしら?」
「どうせ、行く当てもないから、ここで働かせてくれと言うに決まっているだろ?俺は反対だからな。せっかく、あの女の顔を見るのが嫌で、ここまで来たというのに、今更またあの女の意地悪そうな顔を見るのも嫌だ」
サファイアは、エレモアに飼い葉の代わりに泥を食べさせられた経験があり、ものすごく嫌そうな顔をしている。
「うーん。それで、営業時間が終わってから、また来いと言っておいた」
「なーに?その怪しげな対応は?そんなにキライだったら、追い返せばいいものを」
「オーナーの成功を見せつけてやりたいという気もあって……」
なるほどね。でもエレモアの前で、ステファニーだと暴露する気はない。
「わかったわ。夜ご飯前に集合しましょう。それでみんなの意見を聞きたいわ。他の子たちにもそう伝えてくれる?」
「了解しました」
納得はしていないけど、なんだかんだ言って、見捨てる気はなさそうなサファイアの後姿を見送る。
エレモアがどういう事情を抱えているのか、わからないから話だけでも聞いてみようかしら。
その考えは夜の部が始まる前に全員から却下されてしまう。
「アイリーン様、そのお考えは甘いです。あのエレモアですわよ?何を企んでいるのか、わかったものではございません!」
「そう?でも、もし今困っているのなら……」
「だから、それが甘いというのです。ここは心を鬼にしてでも、追い返してくださいまし」
元・馬だったホールスタッフからも厳しい目を向けられる。
「あの女は犯罪者なのです。商売は信用が第一なものですから、絶対に甘い顔を見せてはダメです。もしそれでも……と思われるようなら、きちんとした紹介者を間に立ててくれというべきです」
「わ、わかったわ。このレストランもスタートダッシュしてから間もないから、なんとかお断りするわね……、でももし、泊る所もないと言われたら、どうしよう……」
「それでもです!」
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
エレモアは、レストランを出てから、行く当てもないので、店の営業時間が過ぎるまで、ずっと店の前で、立ち続けている。
もしかしたら、ユリアが口利きをしてくれるかもしれないという期待を込めているのだが、ユリアから、こっぴどく自分が嫌われていることなど思いもしていない。
アイリーンは、かわいそうと同情するが、甘い顔をすると、他のスタッフから怒られてしまうので、知らないふりをして、我慢している。
529
お気に入りに追加
2,138
あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです
はくら(仮名)
ファンタジー
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にて掲載しています。
とある国のお話。
※
不定期更新。
本文は三人称文体です。
同作者の他作品との関連性はありません。
推敲せずに投稿しているので、おかしな箇所が多々あるかもしれません。
比較的短めに完結させる予定です。
※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる