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現世:カフェレストラン
17.エレモア
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エレモアは重い足取りで王都の街を歩いていると、大層繁盛している飯屋が目にとまる。飯屋の名前は、「レストラン・アフロディーテ」という。
牢を出てから、そういえば何も食べていなかったことを思い出し、吸い寄せられるようにその店の中へ入ってみると、ホールで働く若い男性は、そろってイケメンばかりであることに注目する。
この店の特徴は、食券を先に買って、ホールスタッフがその食券を半分に切り、テーブルの上に置くと注文を受け付けたことになり、料理が出てくるとその半券分を回収し、注文が完了したことを意味するのである。
メニュー表はあるにはあるが、その日、オーダーできるものだけを食券として、売られているので、メニュー表を見ても、それが食券としてあるかどうかはわからない。
それでお客のほとんどは、席取りを優先するのではなく、食券売り場に行列を作っているというわけ。
その行列を見て、繁盛していると判断したエレモアは早速、行列の最後尾に並び、本日のメニューの中から何を頼もうかと思案している。
どうやら、この店は多国籍料理を扱っているらしく見たことも聞いたこともない料理名が並んでいるが、デザートメニューがあったので、チーズケーキセットを注文することにして、メニュー表を近くの場所に戻すことにした。
そして自分の番が来たエレモアは、売り子に「チーズケーキセットひとつ」と言って、食券を受け取ろうとした時に見た売り子の顔を見て、ビックリ仰天する!
「ユリア!」
ユリアも驚いて、目をしばたかせている。でも、すぐ気を取り直して、
「お久しぶりでございます。エレモア様」
エストロゲン家の侍女として、働いていた時と同じ笑顔を張り付かせて対応している。ユリアを呼ぶ声を聴き、ホールスタッフの一人が食券売り場にやってくる。
これもすごいイケメンだ。そのイケメンもまた挨拶してくれる。
「エレモア様、お久しぶりにございます。お席にご案内いたします」
「はて?どこかで、出会ったことがあったかしら?子爵家令嬢のユリアが売り子をしているのなら、どこかのご令息様だったかしら?」
首をかしげながら、問いかけるも無視している。無礼な!といつもなら怒るところであるが、エレモアは家を追い出されたばかりで、強気でいられない。
ここは下手に出て、なんとか働き口にありつけないか探りを入れてみることにした。
「あの……すみません。お名前を失念してしまって、こちらのお店で働いていらっしゃるのですね。ここのお店のオーナー様は、もしかして御父上なのでしょうか?」
「いいえ。オーナーは女性です」
それで、ホールスタッフがイケメンぞろいというわけか、きっとオーナーの趣味なんだろうな。若い男性を侍らして、自分はその中央で、イケメンからのサービスを享受しているに違いないという下卑た想像をしていると、
「お待たせいたしました、ごゆっくりどうぞ」
エレモアの名前を知っているはずのスタッフがワンプレートにカットしたチーズケーキとアイスクリームを載せ、さらに小さなティーカップに紅茶が注いであるものを置いて、どこかに行ってしまった。
これで銅貨7枚は安い!アイスクリームを掬って、口の中に入れると程よい冷たさが口の中に広がる。美味しい!
次は、チーズケーキを備え付けのフォークで小さく切りアイスクリームと一緒に食べる。これまた、何という美味!幸せな気持ちになりながら、次から次へと口の中に放り込んでいく。
あっという間に完食してしまった後は、虚しさが残るのかと思えば、そうでもなくものすごい満足感で幸せな気分に浸る。
幸せ気分に浸っていると、先ほどのイケメンウエイターが盆にのせたコップの水をエレモアに差し出してくれたのだ。
「ねえ。お願い、ここのオーナーに会わせてくれないかしら?ぜひ、お会いしたいの」
「営業時間が終わってから、またお越しください。ただし、お越しいただいてもオーナーの都合で会えないかもしれませんよ。それでもよろしければ、お待ちしております」
牢を出てから、そういえば何も食べていなかったことを思い出し、吸い寄せられるようにその店の中へ入ってみると、ホールで働く若い男性は、そろってイケメンばかりであることに注目する。
この店の特徴は、食券を先に買って、ホールスタッフがその食券を半分に切り、テーブルの上に置くと注文を受け付けたことになり、料理が出てくるとその半券分を回収し、注文が完了したことを意味するのである。
メニュー表はあるにはあるが、その日、オーダーできるものだけを食券として、売られているので、メニュー表を見ても、それが食券としてあるかどうかはわからない。
それでお客のほとんどは、席取りを優先するのではなく、食券売り場に行列を作っているというわけ。
その行列を見て、繁盛していると判断したエレモアは早速、行列の最後尾に並び、本日のメニューの中から何を頼もうかと思案している。
どうやら、この店は多国籍料理を扱っているらしく見たことも聞いたこともない料理名が並んでいるが、デザートメニューがあったので、チーズケーキセットを注文することにして、メニュー表を近くの場所に戻すことにした。
そして自分の番が来たエレモアは、売り子に「チーズケーキセットひとつ」と言って、食券を受け取ろうとした時に見た売り子の顔を見て、ビックリ仰天する!
「ユリア!」
ユリアも驚いて、目をしばたかせている。でも、すぐ気を取り直して、
「お久しぶりでございます。エレモア様」
エストロゲン家の侍女として、働いていた時と同じ笑顔を張り付かせて対応している。ユリアを呼ぶ声を聴き、ホールスタッフの一人が食券売り場にやってくる。
これもすごいイケメンだ。そのイケメンもまた挨拶してくれる。
「エレモア様、お久しぶりにございます。お席にご案内いたします」
「はて?どこかで、出会ったことがあったかしら?子爵家令嬢のユリアが売り子をしているのなら、どこかのご令息様だったかしら?」
首をかしげながら、問いかけるも無視している。無礼な!といつもなら怒るところであるが、エレモアは家を追い出されたばかりで、強気でいられない。
ここは下手に出て、なんとか働き口にありつけないか探りを入れてみることにした。
「あの……すみません。お名前を失念してしまって、こちらのお店で働いていらっしゃるのですね。ここのお店のオーナー様は、もしかして御父上なのでしょうか?」
「いいえ。オーナーは女性です」
それで、ホールスタッフがイケメンぞろいというわけか、きっとオーナーの趣味なんだろうな。若い男性を侍らして、自分はその中央で、イケメンからのサービスを享受しているに違いないという下卑た想像をしていると、
「お待たせいたしました、ごゆっくりどうぞ」
エレモアの名前を知っているはずのスタッフがワンプレートにカットしたチーズケーキとアイスクリームを載せ、さらに小さなティーカップに紅茶が注いであるものを置いて、どこかに行ってしまった。
これで銅貨7枚は安い!アイスクリームを掬って、口の中に入れると程よい冷たさが口の中に広がる。美味しい!
次は、チーズケーキを備え付けのフォークで小さく切りアイスクリームと一緒に食べる。これまた、何という美味!幸せな気持ちになりながら、次から次へと口の中に放り込んでいく。
あっという間に完食してしまった後は、虚しさが残るのかと思えば、そうでもなくものすごい満足感で幸せな気分に浸る。
幸せ気分に浸っていると、先ほどのイケメンウエイターが盆にのせたコップの水をエレモアに差し出してくれたのだ。
「ねえ。お願い、ここのオーナーに会わせてくれないかしら?ぜひ、お会いしたいの」
「営業時間が終わってから、またお越しください。ただし、お越しいただいてもオーナーの都合で会えないかもしれませんよ。それでもよろしければ、お待ちしております」
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