転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

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前世

7.ストーカー

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 それで急遽、真一さんの住むマンションに行ってみた。タワマンの最上階の部屋で窓を開けると風が強く、吹き飛ばされそうになるが、夜景はとても綺麗だった。

 真一さんは自分の家と言う気安さからか、愛理の腰に手を回し、キスをしてくれる。

 あれ?真一さんて、こんなに女性の扱いが慣れている人だったっけ?

 部屋の中を見回すと、家電は任せてと言うだけあり、最新の家電商品がずらりと並んでいる。

 結婚までは清い関係でいようと話し合い、寝室は別々にすることになり、愛理の部屋は玄関を入ってすぐの応接間があてがわれることになる。

 休日を合わせて、次の休みの日に引っ越しをすることになり、二人は幸せそのもの。

 でも、引っ越してから、レストラン店長の栗栖洋平の態度が一変したのだ。それまでは、良き相談相手として愛理に接してくれていたのだが、寮を出てからというもの。まるでストーカーのように、愛理に付きまとうようになっていく。

 誰もいない厨房の中で、洋平と二人きりになろうものなら、セクハラの連発で、愛理はだんだん精神的に追い詰められていく。

 コックスーツの上から、胸を揉まれ、尻を撫でまわされることなど日常茶飯事で、抱きしめられ首筋に歯型が残るまで噛みつかれることもある。

 医者の診断書を手に、警察へ相談に行き、警察の勧めもあり、会社に苦情を出すことにしたら、なんとか配置転換をしてくださることになったが、それでも次の店舗にまで、押しかけてくる有り様で、ストーカーはエスカレートしていくばかり。

 思い余って、真一さんとも相談して、会社を退職することにした。

 しばらくは、真一さんの家で花嫁修業に勤しみ、失業保険で食いつなぐか?それとも早めに結婚して、真一さんの扶養に入るか、悩むところ。

 真一さんは、早く抱きたいから結婚したいと言ってくれるが、愛理も早く真一さんに抱かれたいけど、うーん。あの栗栖店長がおとなしく黙っていてくれるかが不安で仕方がない。

 それでも近いうちに結婚することは確実な状態なので、離職票が手元にあるうちに、結婚することにしたのだ。

 いったん、失業保険の受給手続きを始めてしまうと、その間、真一さんの健康保険の扶養に入れなくなるので、先に入籍だけでもして、扶養に入る方が得ということで、その手続きに従う。

 式はまだだけど、法律上は夫婦になった二人は、その夜、初めて結ばれる。

「考えてみれば、愛理にとって、栗栖店長は怖かった存在だったかもしれないけど、俺たち夫婦にとれば、愛のキューピッドだったね」

「え?どういうこと?」

「だって、こんなにも早く愛理が手に入ることになるなんて、思いもしなかったことだからさ。愛理、愛しているよ。これから、ずっと一緒にいようね」

「私も真一さんを愛しています。これから末永く、よろしくお願いします」

 この日は、人生で最高に幸せな日だった。

 でも、そんな幸せな日は長くは続かなかった。

 あの栗栖店長が、どこで調べ上げてきたのか、愛理の居場所を突き止めたようだった。

 夕飯の買い物をするため、スーパーマーケットの帰り道に、よく声をかけてくるようになったのだ。

「愛理ちゃん、元気してる?ちょっと乗ってかない?」

 その声を無視して、真正面だけを見て、ズンズン歩く愛理、だが、それぐらいのことでへこたれるような栗栖店長ではない。

 愛理の住むタワマンはセキュリティがしっかりしているので、不審者は入れないが、オートロックを解除するとき、一緒についてこられたら、開いた隙を狙って、入り放題になってしまう。

 どうしても、タワマンの所在地を知られたくない愛理は、帰り道にある美容院の中へ入っていくことにした。

 カランカラン♪

「いらっしゃいませ」

「あの……スミマセン、ここ裏口ってありますか?変な男の人に尾行されていて、助けてもらえないでしょうか?」

「ああ、そういうことなら、こちらへどうぞ」

 そこの美容師は、親切にも愛理を裏口に案内してくれた。
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