7 / 79
前世
7.ストーカー
しおりを挟む
それで急遽、真一さんの住むマンションに行ってみた。タワマンの最上階の部屋で窓を開けると風が強く、吹き飛ばされそうになるが、夜景はとても綺麗だった。
真一さんは自分の家と言う気安さからか、愛理の腰に手を回し、キスをしてくれる。
あれ?真一さんて、こんなに女性の扱いが慣れている人だったっけ?
部屋の中を見回すと、家電は任せてと言うだけあり、最新の家電商品がずらりと並んでいる。
結婚までは清い関係でいようと話し合い、寝室は別々にすることになり、愛理の部屋は玄関を入ってすぐの応接間があてがわれることになる。
休日を合わせて、次の休みの日に引っ越しをすることになり、二人は幸せそのもの。
でも、引っ越してから、レストラン店長の栗栖洋平の態度が一変したのだ。それまでは、良き相談相手として愛理に接してくれていたのだが、寮を出てからというもの。まるでストーカーのように、愛理に付きまとうようになっていく。
誰もいない厨房の中で、洋平と二人きりになろうものなら、セクハラの連発で、愛理はだんだん精神的に追い詰められていく。
コックスーツの上から、胸を揉まれ、尻を撫でまわされることなど日常茶飯事で、抱きしめられ首筋に歯型が残るまで噛みつかれることもある。
医者の診断書を手に、警察へ相談に行き、警察の勧めもあり、会社に苦情を出すことにしたら、なんとか配置転換をしてくださることになったが、それでも次の店舗にまで、押しかけてくる有り様で、ストーカーはエスカレートしていくばかり。
思い余って、真一さんとも相談して、会社を退職することにした。
しばらくは、真一さんの家で花嫁修業に勤しみ、失業保険で食いつなぐか?それとも早めに結婚して、真一さんの扶養に入るか、悩むところ。
真一さんは、早く抱きたいから結婚したいと言ってくれるが、愛理も早く真一さんに抱かれたいけど、うーん。あの栗栖店長がおとなしく黙っていてくれるかが不安で仕方がない。
それでも近いうちに結婚することは確実な状態なので、離職票が手元にあるうちに、結婚することにしたのだ。
いったん、失業保険の受給手続きを始めてしまうと、その間、真一さんの健康保険の扶養に入れなくなるので、先に入籍だけでもして、扶養に入る方が得ということで、その手続きに従う。
式はまだだけど、法律上は夫婦になった二人は、その夜、初めて結ばれる。
「考えてみれば、愛理にとって、栗栖店長は怖かった存在だったかもしれないけど、俺たち夫婦にとれば、愛のキューピッドだったね」
「え?どういうこと?」
「だって、こんなにも早く愛理が手に入ることになるなんて、思いもしなかったことだからさ。愛理、愛しているよ。これから、ずっと一緒にいようね」
「私も真一さんを愛しています。これから末永く、よろしくお願いします」
この日は、人生で最高に幸せな日だった。
でも、そんな幸せな日は長くは続かなかった。
あの栗栖店長が、どこで調べ上げてきたのか、愛理の居場所を突き止めたようだった。
夕飯の買い物をするため、スーパーマーケットの帰り道に、よく声をかけてくるようになったのだ。
「愛理ちゃん、元気してる?ちょっと乗ってかない?」
その声を無視して、真正面だけを見て、ズンズン歩く愛理、だが、それぐらいのことでへこたれるような栗栖店長ではない。
愛理の住むタワマンはセキュリティがしっかりしているので、不審者は入れないが、オートロックを解除するとき、一緒についてこられたら、開いた隙を狙って、入り放題になってしまう。
どうしても、タワマンの所在地を知られたくない愛理は、帰り道にある美容院の中へ入っていくことにした。
カランカラン♪
「いらっしゃいませ」
「あの……スミマセン、ここ裏口ってありますか?変な男の人に尾行されていて、助けてもらえないでしょうか?」
「ああ、そういうことなら、こちらへどうぞ」
そこの美容師は、親切にも愛理を裏口に案内してくれた。
真一さんは自分の家と言う気安さからか、愛理の腰に手を回し、キスをしてくれる。
あれ?真一さんて、こんなに女性の扱いが慣れている人だったっけ?
部屋の中を見回すと、家電は任せてと言うだけあり、最新の家電商品がずらりと並んでいる。
結婚までは清い関係でいようと話し合い、寝室は別々にすることになり、愛理の部屋は玄関を入ってすぐの応接間があてがわれることになる。
休日を合わせて、次の休みの日に引っ越しをすることになり、二人は幸せそのもの。
でも、引っ越してから、レストラン店長の栗栖洋平の態度が一変したのだ。それまでは、良き相談相手として愛理に接してくれていたのだが、寮を出てからというもの。まるでストーカーのように、愛理に付きまとうようになっていく。
誰もいない厨房の中で、洋平と二人きりになろうものなら、セクハラの連発で、愛理はだんだん精神的に追い詰められていく。
コックスーツの上から、胸を揉まれ、尻を撫でまわされることなど日常茶飯事で、抱きしめられ首筋に歯型が残るまで噛みつかれることもある。
医者の診断書を手に、警察へ相談に行き、警察の勧めもあり、会社に苦情を出すことにしたら、なんとか配置転換をしてくださることになったが、それでも次の店舗にまで、押しかけてくる有り様で、ストーカーはエスカレートしていくばかり。
思い余って、真一さんとも相談して、会社を退職することにした。
しばらくは、真一さんの家で花嫁修業に勤しみ、失業保険で食いつなぐか?それとも早めに結婚して、真一さんの扶養に入るか、悩むところ。
真一さんは、早く抱きたいから結婚したいと言ってくれるが、愛理も早く真一さんに抱かれたいけど、うーん。あの栗栖店長がおとなしく黙っていてくれるかが不安で仕方がない。
それでも近いうちに結婚することは確実な状態なので、離職票が手元にあるうちに、結婚することにしたのだ。
いったん、失業保険の受給手続きを始めてしまうと、その間、真一さんの健康保険の扶養に入れなくなるので、先に入籍だけでもして、扶養に入る方が得ということで、その手続きに従う。
式はまだだけど、法律上は夫婦になった二人は、その夜、初めて結ばれる。
「考えてみれば、愛理にとって、栗栖店長は怖かった存在だったかもしれないけど、俺たち夫婦にとれば、愛のキューピッドだったね」
「え?どういうこと?」
「だって、こんなにも早く愛理が手に入ることになるなんて、思いもしなかったことだからさ。愛理、愛しているよ。これから、ずっと一緒にいようね」
「私も真一さんを愛しています。これから末永く、よろしくお願いします」
この日は、人生で最高に幸せな日だった。
でも、そんな幸せな日は長くは続かなかった。
あの栗栖店長が、どこで調べ上げてきたのか、愛理の居場所を突き止めたようだった。
夕飯の買い物をするため、スーパーマーケットの帰り道に、よく声をかけてくるようになったのだ。
「愛理ちゃん、元気してる?ちょっと乗ってかない?」
その声を無視して、真正面だけを見て、ズンズン歩く愛理、だが、それぐらいのことでへこたれるような栗栖店長ではない。
愛理の住むタワマンはセキュリティがしっかりしているので、不審者は入れないが、オートロックを解除するとき、一緒についてこられたら、開いた隙を狙って、入り放題になってしまう。
どうしても、タワマンの所在地を知られたくない愛理は、帰り道にある美容院の中へ入っていくことにした。
カランカラン♪
「いらっしゃいませ」
「あの……スミマセン、ここ裏口ってありますか?変な男の人に尾行されていて、助けてもらえないでしょうか?」
「ああ、そういうことなら、こちらへどうぞ」
そこの美容師は、親切にも愛理を裏口に案内してくれた。
395
お気に入りに追加
2,137
あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました
蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。
家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。
アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。
閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。
養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。
※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。
【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」
何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?
後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!
負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。
やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*)
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/22……完結
2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位
2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位
2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです
はくら(仮名)
ファンタジー
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にて掲載しています。
とある国のお話。
※
不定期更新。
本文は三人称文体です。
同作者の他作品との関連性はありません。
推敲せずに投稿しているので、おかしな箇所が多々あるかもしれません。
比較的短めに完結させる予定です。
※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる