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現世
5.責任
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「マリオットよ。今までの真実の窓の画像を見てどう思う?」
「俺は、無実の婚約者に冤罪を着せ、半殺しの目に遭わせました。この上は、王籍を離れ平民として、生きて償いをしたいと思います」
「手ぬるいな。マリオットの罪はそんなものでは許されきれないほど重い。それでは、ここにいる貴族も納得が行かないだろう」
「では、どうすれば?」
「リリアーヌをこれへ。リリアーヌにお前がステファニー嬢にしたこと以上のことをしてもらう。お前にしかできないことだ。無抵抗な、か弱い令嬢にあそこまで残忍なことは俺の配下の騎士のうち誰一人できる者はいない」
「それは、リリアーヌを殺すということでしょうか?」
「お前はステファニー嬢を殺そうとしたではないか?」
「いや。ただ、無性に腹が立ってしまって……」
「少しでも手加減をするようなことがあれば、お前にも、ステファニー嬢がやられたことと同じことをし返すから、覚えておきなさい」
立ち上がり、リリアーヌの前に立つマリオット、かつては婚約者以上に愛情を注いできた相手なのだが、今、自分がやらなければ、王子である俺も同じ目か、それ以上にひどい目に遭わせられる。
でも、元はと言えば、リリアーヌがウソを吐くからいけないのだ。もし、嘘さえつかなければ、俺もステファニー嬢に対して、あそこまでひどい仕打ちをしなかっただろう。そのことが残念でたまらない。
マリオットはリリアーヌの髪の毛を掴み、床に這いつくばらせる。そして、リリアーヌの髪の毛を掴んだまま、床の大理石に頭を打ち付けさせる。
「そんなことは、ステファニー嬢はされていない。早く楽にさせる方法をとるな!」
あの時は、ステファニーに文句の一つも言ってやろうと先に突き飛ばしたら運悪く大理石の柱にステファニーが頭をぶつけてしまったのだ。でも、それを言うとまた叱られるので、黙ってリリアーヌに馬乗りになって、リリアーヌの顔を殴りつける。どうして、こんなたいして美人でもない女を好きになってしまったのだろう?殴りながら思うのもおかしいことだけど、どう考えても、あの頃は魅了魔法にかかっていたとしか思えない。
もし、こんな女に引っかかっていなければ、俺はステファニー嬢と共にこの国をもっと素晴らしい国にしていく自信があった。
俺は、小さいときからステファニー嬢のことが好きだったのだ。絵本から抜け出たような愛くるしい笑顔を兄のクリストファーに向けていたあの頃から、ずっと。
俺との婚約が決まった時、明らかに落胆した顔をしていたステファニーに対して、思うところがなかったと言えば、嘘になるが、それでも俺なりに精一杯ステファニーを愛してきたつもりだったのだ。
俺も、ステファニーと並び立つイイ男になろうと努力していた。それがこんな醜女に引っかかり、すべてを台無しにしてしまった恨みはある。
なぜ、ステファニーは俺が文句を言ったとき、それは自分ではないと言ってくれなかったのか?でももし、言われていたとしても、俺はそれを信じたかどうかはわからない。
いや。ステファニーに惚れていた俺なら、きっと信じたはずだ。でもあの時は、リリアーヌの変な魔法に引っかかっていたしな、どうだかな?それもこれも、やっぱりリリアーヌのせいではないか!ああ、なんてこった。俺はリリアーヌのせいで人生を棒に振ってしまったのだ。そう考えると、だんだん腹が立ってきてしょうがない。
そして、リリアーヌを殴りつけている間、アイツは「助けて」の合図をしきりに送り続けていたが、それももう来なくなったと思って顔を覗き込むと、すっかり誰だか判別がつかないぐらい顔は腫れ上がり、鼻柱は折れているように見える。
それから俺は立ち上がり、リリアーヌの腹を思いっきり踏んづける。全体重を足にかけて、両脚で踏めば、リリアーヌは小さく「ヒッ!」と悲鳴を上げたことがわかった。
リリアーヌのカラダを蹴飛ばし、横にさせると口と耳の穴から血が出ていることが見える。
絶命したかどうかわからないので、医務班に見せると、すでにコト切れているということ。無抵抗の女性を殴った疲労感は半端がないが、不思議と罪悪感はない。結局、リリアーヌは俺の手によって処刑されたのだ。
息を整え、再び、父上の前に跪く。
「よくやった。それでは、衛兵!マリオットに足枷を嵌め、地下牢に放り込め!マリオット、お前は生涯、二度と地下牢から出られぬものと心得よ」
マリオットはその言葉に絶望する。やっぱり……という気持ちより、絶望したのだ。他の貴族令嬢を地下牢に追いやったのだから、その責任を取らせるつもりなのだろう。でないと、各家門からの不満に対応しきれないという現実があるから。
「俺は、無実の婚約者に冤罪を着せ、半殺しの目に遭わせました。この上は、王籍を離れ平民として、生きて償いをしたいと思います」
「手ぬるいな。マリオットの罪はそんなものでは許されきれないほど重い。それでは、ここにいる貴族も納得が行かないだろう」
「では、どうすれば?」
「リリアーヌをこれへ。リリアーヌにお前がステファニー嬢にしたこと以上のことをしてもらう。お前にしかできないことだ。無抵抗な、か弱い令嬢にあそこまで残忍なことは俺の配下の騎士のうち誰一人できる者はいない」
「それは、リリアーヌを殺すということでしょうか?」
「お前はステファニー嬢を殺そうとしたではないか?」
「いや。ただ、無性に腹が立ってしまって……」
「少しでも手加減をするようなことがあれば、お前にも、ステファニー嬢がやられたことと同じことをし返すから、覚えておきなさい」
立ち上がり、リリアーヌの前に立つマリオット、かつては婚約者以上に愛情を注いできた相手なのだが、今、自分がやらなければ、王子である俺も同じ目か、それ以上にひどい目に遭わせられる。
でも、元はと言えば、リリアーヌがウソを吐くからいけないのだ。もし、嘘さえつかなければ、俺もステファニー嬢に対して、あそこまでひどい仕打ちをしなかっただろう。そのことが残念でたまらない。
マリオットはリリアーヌの髪の毛を掴み、床に這いつくばらせる。そして、リリアーヌの髪の毛を掴んだまま、床の大理石に頭を打ち付けさせる。
「そんなことは、ステファニー嬢はされていない。早く楽にさせる方法をとるな!」
あの時は、ステファニーに文句の一つも言ってやろうと先に突き飛ばしたら運悪く大理石の柱にステファニーが頭をぶつけてしまったのだ。でも、それを言うとまた叱られるので、黙ってリリアーヌに馬乗りになって、リリアーヌの顔を殴りつける。どうして、こんなたいして美人でもない女を好きになってしまったのだろう?殴りながら思うのもおかしいことだけど、どう考えても、あの頃は魅了魔法にかかっていたとしか思えない。
もし、こんな女に引っかかっていなければ、俺はステファニー嬢と共にこの国をもっと素晴らしい国にしていく自信があった。
俺は、小さいときからステファニー嬢のことが好きだったのだ。絵本から抜け出たような愛くるしい笑顔を兄のクリストファーに向けていたあの頃から、ずっと。
俺との婚約が決まった時、明らかに落胆した顔をしていたステファニーに対して、思うところがなかったと言えば、嘘になるが、それでも俺なりに精一杯ステファニーを愛してきたつもりだったのだ。
俺も、ステファニーと並び立つイイ男になろうと努力していた。それがこんな醜女に引っかかり、すべてを台無しにしてしまった恨みはある。
なぜ、ステファニーは俺が文句を言ったとき、それは自分ではないと言ってくれなかったのか?でももし、言われていたとしても、俺はそれを信じたかどうかはわからない。
いや。ステファニーに惚れていた俺なら、きっと信じたはずだ。でもあの時は、リリアーヌの変な魔法に引っかかっていたしな、どうだかな?それもこれも、やっぱりリリアーヌのせいではないか!ああ、なんてこった。俺はリリアーヌのせいで人生を棒に振ってしまったのだ。そう考えると、だんだん腹が立ってきてしょうがない。
そして、リリアーヌを殴りつけている間、アイツは「助けて」の合図をしきりに送り続けていたが、それももう来なくなったと思って顔を覗き込むと、すっかり誰だか判別がつかないぐらい顔は腫れ上がり、鼻柱は折れているように見える。
それから俺は立ち上がり、リリアーヌの腹を思いっきり踏んづける。全体重を足にかけて、両脚で踏めば、リリアーヌは小さく「ヒッ!」と悲鳴を上げたことがわかった。
リリアーヌのカラダを蹴飛ばし、横にさせると口と耳の穴から血が出ていることが見える。
絶命したかどうかわからないので、医務班に見せると、すでにコト切れているということ。無抵抗の女性を殴った疲労感は半端がないが、不思議と罪悪感はない。結局、リリアーヌは俺の手によって処刑されたのだ。
息を整え、再び、父上の前に跪く。
「よくやった。それでは、衛兵!マリオットに足枷を嵌め、地下牢に放り込め!マリオット、お前は生涯、二度と地下牢から出られぬものと心得よ」
マリオットはその言葉に絶望する。やっぱり……という気持ちより、絶望したのだ。他の貴族令嬢を地下牢に追いやったのだから、その責任を取らせるつもりなのだろう。でないと、各家門からの不満に対応しきれないという現実があるから。
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