転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀

文字の大きさ
上 下
3 / 79
現世

3.嘘

しおりを挟む
 会場のライトが一時的に薄暗くなる中、会場全体に巨大なスクリーンが浮かび上がる。

 それは「真実の窓」と呼ばれる魔道具で撮影されたもので、学園の中の様々な様子が映し出されている。

 授業風景に、貴族騎士同士のラブロマンスまで、すべて包み隠さず映し出され、中には泣き出す女子生徒までいる。

 3年間の学園生活のすべてが映し出されるのであるが、陛下の指示もあり学園長は、リリアーヌが転校してきてからのものに絞って、映すことにした。

 卒業アルバムの映写版のようなもので、希望者には金貨1000枚で売買されている。高価なものなので、よほど経済的に余裕のある貴族しか買わないので、一般にはほとんど知られていない。

 そして、リリアーヌが転校してきてからの映像が次々と流れ、父兄でさえ顔をしかめてしまうぐらいの不作法で下品なリリアーヌの映像が大きく映し出される。

 会場のあちこちから、ヒソヒソと囁き声が漏れてくる。

「ったく、あんな野蛮な猿娘のどこをどう気に入られたのか、わかりかねますな」

「なんて、お行儀の悪い……あの娘が本当に王太子殿下の御相手なの?」

 国王陛下は静かに映像と周囲の雑音に耳を傾けていらっしゃる。

 映像の中では、一人の女子生徒がリリアーヌの前に歩み出て、注意をしている。これは、キャサリン・アルマイト侯爵令嬢。

「リリアーヌ様、何度申し上げたらお分かりになるのでしょうか?婚約者がいる男性に女性から声をおかけするのは、無礼ですわ。この学園は、本来、アナタのような娘が来ていい学園ではございません。最近は、下位貴族でも通えるようになったみたいですけど、本来は王族と高位貴族のために設けられた学園です。そのことをくれぐれもお忘れなきように」

 毅然としたキャサリンの態度に、会場は拍手喝采である。当のキャサリン様はと言うと、顔を真っ赤にして、周囲から「よく言った」の誉め言葉に俯き加減にしていらっしゃる。その隣には、婚約者様だろうか貴族令息が誇らしげに寄り添うように立っている。

 注意をされたリリアーヌは、頬をぷぅっと膨らませて、走ってどこかに行く。それを「真実の窓」は追いかける。

 中庭にマリオット殿下が側近と共に談笑していらっしゃる。その姿を見つけ、一目散に殿下の元へ走っていくリリアーヌ。

「マリオット殿下ぁ~、ステファニー様にアンタなんか転校しろって言われたの」

「え!どうして?ステファニーはそんな意地悪を言う女ではないぞ?」

「だって……だって……」

 リリアーヌは、上目遣いでマリオットを見上げ、その瞳には涙まで浮かべている。客観的に見て明らかに嘘泣きだと思うのだが、その姿にマリオットは相好を崩しかけている。

 キャサリンのせっかくの注意諫言がなぜかステファニーの嫌がらせとして、マリオットに報告されている不可思議さに、さすがにマリオットも疑問をもつ。

「まさか……、リリアーヌがウソを……」

 陛下はマリオットに一瞥をくれる。

「よし。わかった。それではステファニーに俺から注意しておいてやろう。それで気は済んだか?」

 リリアーヌはコクリと頷いて見せる。それからも、いつまでもマリオット殿下から離れようとせず、殿下の周りにまとわりついて離れようとしなかった。

 それからは、リリアーヌの自作自演のオンパレードだ。男爵家などの下位貴族が使う教室棟に入っていくリリアーヌ。自分の席にかけてあったカバンを取り出し、中に入れていたインク瓶をおもむろに出し始める。そして中身があまりない方の瓶を傾け、自分の制服に垂らし始める。

 次いでカバンの中から教科書を取り出し、その教科書を真っ二つにビリビリと破きはじめ、廊下に備え付けてあるゴミ箱の中に入れている。

「何をなさるのですか?ステファニー様、やめてくださいませ!きゃぁっ!ひどいですわぁ」

 声だけ聴いていたら、悲壮感漂う迫真の演技ぶりが凄い。でも、その前にネタバレを見せられているので、一人芝居も白けて見える。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います

榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。 なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね? 【ご報告】 書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m 発売日等は現在調整中です。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

処理中です...