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現世
3.嘘
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会場のライトが一時的に薄暗くなる中、会場全体に巨大なスクリーンが浮かび上がる。
それは「真実の窓」と呼ばれる魔道具で撮影されたもので、学園の中の様々な様子が映し出されている。
授業風景に、貴族騎士同士のラブロマンスまで、すべて包み隠さず映し出され、中には泣き出す女子生徒までいる。
3年間の学園生活のすべてが映し出されるのであるが、陛下の指示もあり学園長は、リリアーヌが転校してきてからのものに絞って、映すことにした。
卒業アルバムの映写版のようなもので、希望者には金貨1000枚で売買されている。高価なものなので、よほど経済的に余裕のある貴族しか買わないので、一般にはほとんど知られていない。
そして、リリアーヌが転校してきてからの映像が次々と流れ、父兄でさえ顔をしかめてしまうぐらいの不作法で下品なリリアーヌの映像が大きく映し出される。
会場のあちこちから、ヒソヒソと囁き声が漏れてくる。
「ったく、あんな野蛮な猿娘のどこをどう気に入られたのか、わかりかねますな」
「なんて、お行儀の悪い……あの娘が本当に王太子殿下の御相手なの?」
国王陛下は静かに映像と周囲の雑音に耳を傾けていらっしゃる。
映像の中では、一人の女子生徒がリリアーヌの前に歩み出て、注意をしている。これは、キャサリン・アルマイト侯爵令嬢。
「リリアーヌ様、何度申し上げたらお分かりになるのでしょうか?婚約者がいる男性に女性から声をおかけするのは、無礼ですわ。この学園は、本来、アナタのような娘が来ていい学園ではございません。最近は、下位貴族でも通えるようになったみたいですけど、本来は王族と高位貴族のために設けられた学園です。そのことをくれぐれもお忘れなきように」
毅然としたキャサリンの態度に、会場は拍手喝采である。当のキャサリン様はと言うと、顔を真っ赤にして、周囲から「よく言った」の誉め言葉に俯き加減にしていらっしゃる。その隣には、婚約者様だろうか貴族令息が誇らしげに寄り添うように立っている。
注意をされたリリアーヌは、頬をぷぅっと膨らませて、走ってどこかに行く。それを「真実の窓」は追いかける。
中庭にマリオット殿下が側近と共に談笑していらっしゃる。その姿を見つけ、一目散に殿下の元へ走っていくリリアーヌ。
「マリオット殿下ぁ~、ステファニー様にアンタなんか転校しろって言われたの」
「え!どうして?ステファニーはそんな意地悪を言う女ではないぞ?」
「だって……だって……」
リリアーヌは、上目遣いでマリオットを見上げ、その瞳には涙まで浮かべている。客観的に見て明らかに嘘泣きだと思うのだが、その姿にマリオットは相好を崩しかけている。
キャサリンのせっかくの注意諫言がなぜかステファニーの嫌がらせとして、マリオットに報告されている不可思議さに、さすがにマリオットも疑問をもつ。
「まさか……、リリアーヌがウソを……」
陛下はマリオットに一瞥をくれる。
「よし。わかった。それではステファニーに俺から注意しておいてやろう。それで気は済んだか?」
リリアーヌはコクリと頷いて見せる。それからも、いつまでもマリオット殿下から離れようとせず、殿下の周りにまとわりついて離れようとしなかった。
それからは、リリアーヌの自作自演のオンパレードだ。男爵家などの下位貴族が使う教室棟に入っていくリリアーヌ。自分の席にかけてあったカバンを取り出し、中に入れていたインク瓶をおもむろに出し始める。そして中身があまりない方の瓶を傾け、自分の制服に垂らし始める。
次いでカバンの中から教科書を取り出し、その教科書を真っ二つにビリビリと破きはじめ、廊下に備え付けてあるゴミ箱の中に入れている。
「何をなさるのですか?ステファニー様、やめてくださいませ!きゃぁっ!ひどいですわぁ」
声だけ聴いていたら、悲壮感漂う迫真の演技ぶりが凄い。でも、その前にネタバレを見せられているので、一人芝居も白けて見える。
それは「真実の窓」と呼ばれる魔道具で撮影されたもので、学園の中の様々な様子が映し出されている。
授業風景に、貴族騎士同士のラブロマンスまで、すべて包み隠さず映し出され、中には泣き出す女子生徒までいる。
3年間の学園生活のすべてが映し出されるのであるが、陛下の指示もあり学園長は、リリアーヌが転校してきてからのものに絞って、映すことにした。
卒業アルバムの映写版のようなもので、希望者には金貨1000枚で売買されている。高価なものなので、よほど経済的に余裕のある貴族しか買わないので、一般にはほとんど知られていない。
そして、リリアーヌが転校してきてからの映像が次々と流れ、父兄でさえ顔をしかめてしまうぐらいの不作法で下品なリリアーヌの映像が大きく映し出される。
会場のあちこちから、ヒソヒソと囁き声が漏れてくる。
「ったく、あんな野蛮な猿娘のどこをどう気に入られたのか、わかりかねますな」
「なんて、お行儀の悪い……あの娘が本当に王太子殿下の御相手なの?」
国王陛下は静かに映像と周囲の雑音に耳を傾けていらっしゃる。
映像の中では、一人の女子生徒がリリアーヌの前に歩み出て、注意をしている。これは、キャサリン・アルマイト侯爵令嬢。
「リリアーヌ様、何度申し上げたらお分かりになるのでしょうか?婚約者がいる男性に女性から声をおかけするのは、無礼ですわ。この学園は、本来、アナタのような娘が来ていい学園ではございません。最近は、下位貴族でも通えるようになったみたいですけど、本来は王族と高位貴族のために設けられた学園です。そのことをくれぐれもお忘れなきように」
毅然としたキャサリンの態度に、会場は拍手喝采である。当のキャサリン様はと言うと、顔を真っ赤にして、周囲から「よく言った」の誉め言葉に俯き加減にしていらっしゃる。その隣には、婚約者様だろうか貴族令息が誇らしげに寄り添うように立っている。
注意をされたリリアーヌは、頬をぷぅっと膨らませて、走ってどこかに行く。それを「真実の窓」は追いかける。
中庭にマリオット殿下が側近と共に談笑していらっしゃる。その姿を見つけ、一目散に殿下の元へ走っていくリリアーヌ。
「マリオット殿下ぁ~、ステファニー様にアンタなんか転校しろって言われたの」
「え!どうして?ステファニーはそんな意地悪を言う女ではないぞ?」
「だって……だって……」
リリアーヌは、上目遣いでマリオットを見上げ、その瞳には涙まで浮かべている。客観的に見て明らかに嘘泣きだと思うのだが、その姿にマリオットは相好を崩しかけている。
キャサリンのせっかくの注意諫言がなぜかステファニーの嫌がらせとして、マリオットに報告されている不可思議さに、さすがにマリオットも疑問をもつ。
「まさか……、リリアーヌがウソを……」
陛下はマリオットに一瞥をくれる。
「よし。わかった。それではステファニーに俺から注意しておいてやろう。それで気は済んだか?」
リリアーヌはコクリと頷いて見せる。それからも、いつまでもマリオット殿下から離れようとせず、殿下の周りにまとわりついて離れようとしなかった。
それからは、リリアーヌの自作自演のオンパレードだ。男爵家などの下位貴族が使う教室棟に入っていくリリアーヌ。自分の席にかけてあったカバンを取り出し、中に入れていたインク瓶をおもむろに出し始める。そして中身があまりない方の瓶を傾け、自分の制服に垂らし始める。
次いでカバンの中から教科書を取り出し、その教科書を真っ二つにビリビリと破きはじめ、廊下に備え付けてあるゴミ箱の中に入れている。
「何をなさるのですか?ステファニー様、やめてくださいませ!きゃぁっ!ひどいですわぁ」
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