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 赤い国から忍び寄る不吉な影に俺は悩む。

 赤い国から目の敵にされる理由など思いつかないからだ。アンリの妻はレイプされた後になぶり殺しされたのだ。それで志願して、兵役に就いただけなのに、なぜ今さらアンリの魂を持つ者を探さないといけないのか?

 俺は、転生して、その後半神になった身だから、ちょっとやそっとでは死なない。それにまりあの結界もある。

 妻のまりあもそうだ。だが、俺の実家の両親はどうだ?もし、本当に俺が邪魔な存在なら、まずは両親を狙うのでは?という気がしてきた。

 まりあに言うと、セルゲイ・ロマノフが現れた時に既に実家とご両親に結界を張ったと聞く。仕事が早い!さすがは、俺の愛妻だけのことはある。

 アンドリー・エルショバは、あれ以来姿を見ないからきっと、他の神様が始末してくれたのだろう。

 俺は、8年前?いやもう9年になるかという第3次世界大戦について、なぜ赤い国軍がいちサッカー選手に過ぎない俺に対し、敵意を持ったかを調べることにしたのだ。

 幸い、シトロエンは、もう3年間契約を延長したいと申し出てくれたので、それに乗る気になったからだ。

 亡き妻のためにも。その真相がわからないと、もう前に進めないような気がする。

 第一、まりあに対して失礼なような気がする。ひょっとしたら、俺がいた部隊は、俺のせいで全滅したかもしれないという疑念が出てきたからである。

 調べを進めていくうちに、祖国ベルンドーラで同じチームにいた奴がどうやら関係しているようだ。

 そいつはスパイ容疑で、赤い国に捕まり拷問されたのちに殺されているのだが、どうやら苦し紛れに死ぬ間際に俺の名前を出したことがわかる。

 俺はすぐさま神界へ飛び、当時の俺に対する供述を削除させ、記録と記憶を抹消するように依頼したのだ。

 すべては俺に対する嫉妬が原因だったのだ。第一線でいつも活躍していた俺に対し、そいつはたまに補欠でベンチ入りだったから。

 たかがそんなことぐらいで、嫉妬され妻子を殺されてしまったのだ。そして部隊全員の命も。

 腹が立つし、情けない。どこにもぶつけようがない怒りに身を焦がす。

 それをまりあは何も言わず、ただ抱きしめてくれる。そして背中をポンポンと叩いてくれるのだ。

 不思議と落ち着く、前世のおふくろがよくそうやって、俺をあやしてくれたことを思い出す。

 「ありがとう。もう大丈夫だ。」

 そこでまりあは俺に衝撃の一言を!

 「新しい命を授かったみたいなの。今日、病院へ行ってきたのよ。あと半年ぐらいで生まれるって。」
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