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大学時代

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 「俺はこう見えても祖国では、敬虔な信徒だったんだぜ。だから聖女まりあ様をお守りする義務がある。」

 俺は半分ウソで半分事実な様な事を言う。花園まりあを安心させるためで、さらに俺の女に成りたいと思わせるための口実。

 「プロのサッカー選手だったってことは、結婚していなかったの?」

 「してたさ。でも戦火で空爆され、みんな死んでしまった。だから志願して兵として戦争に行ったんだ。生きていたら上の娘は5歳で、下は3歳になっているだろうな。」

 「ごめんなさい。辛いことを思い出させてしまって。」

 「もう過去のことさ。今はこのカラダでできることを精一杯するだけさ。」

 「わたくしに何かして差し上げることはできますか?聖女の魔法は教えてあげられないけど?」

 「うん。できれば俺に結界を張ってほしいことぐらいかな?高校時代からプロのスカウトに目を付けられ、同級生は不審な事故でみんな選手生命を絶たれている。ライバルのせいだとは思うが、それが誰か特定できないし、証拠もない。だから、聖女様の傍にいるということは俺の安全のためでもあるんだ。」

 「わかったわ。そんなことぐらいなら、お安い御用よ。わたくしも3度死んだときに異世界の神様から……異世界の神様の奥様は元人間の聖女様だったのよ。その人から自分で自分に結界を張る方法を伝授していただいたの。それでこのカラダを選んだようなものよ。上から人が降ってきても結界があるので、助かるからね。」

 「結界か。やっぱりな……。それにしてもまりあ様は、3回も殺されているのか?俺がいたら聖女様にそんな真似、絶対にさせない!」

 「ありがとう。では手短にさっさと済ませちゃいましょ。」

 まりあは、大輔に自分にしがみつくように言い、両手を高く上げ掌を合わせる。自分の分も二度掛けするためで、あの衝撃で結界はビクともしていないが、念のためである。

 「はい。もう結界は張ったわ。いつまで抱きついているの!」

 「あ、すみません。聖女様はいい匂いがしたので、つい……。」

 大輔は、まりあのカラダからいい匂いがしたので、口説く目的以外でつい言ってしまう。

 まりあは、男性からそんな風に言われたことがなかったので、とても恥ずかしい。真っ赤になり俯く。

 その恥ずかしがっている姿を見て、大輔にも伝染し、大輔も真っ赤になりながら照れて頭を掻いている。

 と、そこへものすごい殺気を纏った複数人が近づいてきた。その殺気は、まりあでさえも気づくぐらいの魔物クラスの狂気じみた殺気。

 「おうおう、さっきから何イチャイチャしてやがんだ。どこかで見たことがある娘だと思ったら奇跡の女子大生様じゃねぇか。ちょうどいい、くたばり損ないが二人揃っているというわけか。お前さんには、何の恨みもねぇが、ここであの世へ行ってくんな。」

 金属バットやら、出刃包丁を手にした男たちに取り囲まれてしまったが、なんせ結界を張ったばかりなので、その威力のほどがわからない大輔。

 まりあに小声で

 「俺が奴らを惹きつけますから、聖女様はその間に逃げてください。」

 「そんなことできるわけがないでしょ。」

 「男のほうは、足を狙え!女のほうは、味見してから売り飛ばしてやってもいいぜ。」

 舌なめずりをしながら、男が近づいてくる。

 まりあはリュックサックの両脇のポケットから催涙スプレーを二本ずつ取り出し、二本を大輔に渡し、自分も両手に催涙スプレーを持ち、構える。このスプレーは心配だからと両親が持たせてくれていたもの。

 「せーの!」の掛け声とともに、一斉にスプレーを放つ。

 あたり一面真っ白になる。

 「何しやがんだ。このアマ!」

 必死に目元を押さえる悪人ども。

 どうにか目を開けた時には、二人の姿は忽然と消え失せていたのだ。

 まりあはスプレーを放ってすぐさま、二人に隠蔽魔法をかけ、浮遊魔法で空高く飛んでいたのである。そして上空から、悪人どもの動向を見張っている。

 どこへ行ったと探し回っている悪人どもの頭上から網をかぶせる。

 まりあは隠蔽魔法を解き、悪党どもの前にでる。そして大輔は、「誰に頼まれた?」と尋問していくが、なかなか口を割らない。

 仕方なくまりあは、網を一人ずつ外し、1人ずつの尋問に変えた。ボスと思しき男が「余計なこと喋んじゃねぇ。」と喚くので、急遽、土魔法で小屋を作り、その中で尋問することにした。

 「お前。いったい何者なんだ?」

 「知らないのかよ?このお方はな、奇跡の聖女様だよ。」

 「はっ。嘘つくな!聖女様なんて、この世にいない!いるはずがない!言うに事欠いて、聖女様だと?ふざけるな!サッカー選手って言うのはあれだな、頭でボールを蹴っているからおかしいんだな?」

 その男は右手の人差し指を自分の頭の横に持っていき、くるくるとまわしている。

 「これはあれね。女神様に頼むしかないかもしれない?どうしても白状しないなら、死んでもらうけどいい?」

 「ほらな、人殺しをする聖女様なんて、聞いたことがないぜ。やっぱり大ウソつきだったんだ。」

 「わたくしは異世界人ですから、あなたを消すことなどたやすいことですわ。」

 「殺れるものなら殺ってみろってんだ。」

 「では、とりあえず凍死してもらいましょうか?」

 まりあは土魔法を消し、代わりに氷で小屋を作る。まりあと大輔は浮遊魔法で下から30センチぐらい上のところで浮かんでいる。

 「それはどんな手品だ?」寒さに耐えられなくなった悪党は、震えながら聞く。

 それを無視して、さらに氷の腹巻を上からかぶせる。もうこれだけで身動きが取れなくなる。

 だんだん息も絶え絶えになってくる。顔色はほとんど青。

 「ま、まさか本当に殺るつもりなのか?言う言う。有望なサッカー選手をNリーガーにさせないために、ある人が大金を支払って……、俺たちはただ雇われただけだ。何人か高校生を痛めつけただけで、まだ誰も殺してない!」

 「ばか!喋るな!」

 「うっせえ!てめえも氷漬けにされろってんだ。」

 まりあは、悪党全員を氷漬けにして、異空間収納に放り込んだ。

 もうこれは神様の範疇だから、このまま殺すかどうか女神様に判断してもらうことにする。

 大輔とともに女神様のブティックへ転移魔法で行く。
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