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41.記憶

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 まどかが部屋を出てすぐ、父はまた、あのオモチャを持ち出してきて、母相手にエッチなことを始める。

 「ダメですよ。お父さん、まどかが戻ってくるわ。」

 「大丈夫だ。アイツは、この部屋に来る前に土産物屋に気をとられていたろ。大浴場へ入れば、必ず土産物屋へ寄るから、それまで楽しもう。儂は、和香子に1か月も触れられないことを覚悟し、辛抱したのだが、北海道にいるのなら、抱きたい。今日は和香子を抱くためにだけ、来た。」

 「んん……ダ、め……ん。」

 ベッドルームに入り、オモチャで前戯を省き、濡れそぼる和香子の中に身を沈めていく。西園寺が回復するまでの間、別のオモチャで1回イカし、再び、妻を抱く。

 その後、何食わぬ顔で、温泉に入るがまどかはまだ帰ってこない。

 「ほらな、言ったとおりだろ?土産物に夢中になっているのさ。だから、和香子アレやってくれないか?」

 「アレって?」

 「前に、口でやってくれたろ。アレ気持ち良すぎて……。好きになってしまった。」

 「だって。和香子が帰ってきたら、どうするの?」

 「大丈夫だ。その時は、和香子だけ先に上がれば、わからない。」

 仕方なく、和香子が口に咥え、頭を上下に動かし始める。こらえることができないほど怒張したものを、再び和香子の中に入れ、ほとばしった。

 ぐったりとした和香子と西園寺は、シャワーを浴び、浴衣を着て部屋に戻って、お茶を飲みだしたときに、まどかが帰ってきたのだ。

 「見て、見て、コレ可愛いでしょ?」

 まどかは、土産物屋で買ったものをいちいち説明しながら、広げていく。

 両親がなぜだか疲れている顔をしているから、まどかは疑問に思うが、自分も両親に知られては、マズイことをしてきたから黙っている。

 そうこうしていると、部屋食の時間となり、豪華なお料理が次々に運び込まれ、まどかはすっかりご満悦になる。

 「やっぱり、お父さんが来ると食事が豪華になるわね。お母さん。」

 同じ料理を頼んでも、男性がいるのといないのとは、大違いなことは良くある。それにレストランで食べるときは男性がいれば、必ず窓際のいい席になるが、女性同士の時は、真ん中の窓から遠い席になることが多い。

 「ええ。そうね。」

 心なしかお母さんの元気がないような?

 この時、母、和香子は思いがけずにお父さんと3回もして、テンションが異常に高くなっていることを抑えるために、まどかに気づかれないようにわざと芝居をしていたのだ。

 空港からここへ来るまでの車の中では、あんなにイチャイチャしていたのに、また喧嘩でもしたのかな?と思っている。

 本当、つくづく夫婦のことは、わからない。

 そして、食事が終わると、仲居さんがお布団を敷きに来てくれたのだ。

 大広間に、いや中広間ぐらいか?そこに3組のお布団が敷かれる。

 「ごゆっくりどうぞ。」

 まどかは出入り口に一番近いお布団を、自分の布団にする。

 夜中に、もしまたカラダが疼いたとき、すぐ出られるように。

 洋室の応接セットに座り、他愛無いバラエティ番組を見て、寝ようとした時、また幻聴が聞こえてきた。

 「まどか、可愛いよ。」

 今は、鏡もないのに。どうして?

 その時は、カラダが疼くこともなく、そのまま3人で川の字になり眠ることにしたのだが、夜中にカラダが疼いて目が覚める。

 どうしてもカラダが慰めてほしいと訴えてくる。仕方なくまどかは、両親を起こさないように、そぅっとバスタオルを抱えながら、部屋を出ようとしたら、母を起こしてしまったようで。

 「どこ行くの?お風呂?」

 「ごめん。起こしちゃった。せっかくだから、お風呂に入ってくるね。」

せっかく来たのだから、入らなければ損ということを強調して、部屋を後にする。向かった先は、トイレではなく、お風呂。夜中のトイレは不気味だから。どうせ、この時間帯ならだれも入っている人がいないから、洗い場で慰めてもわからないだろうと思う。

 予想通り、夜中の温泉は、人っ子一人いない静寂に包まれている。

 その中で、一人コシコシしていると、無性にむなしい。声を我慢しているからか、1回満足しても、まだまだカラダが求めてくる。

 おかしい。今度は、サウナ室に入り、そこで声を出して、善がってみる。さすがに自分の出した声を聴くと、恥ずかしいが、興奮する。だんだん調子に乗ってくると、思わず両足をこれでもかというほど開脚し、「……海斗!」と叫ぶ。

 え?……海斗?……なんで?……うっそ?……まさか?……海斗。

 命の恩人、そして友人時代の海斗、結婚してからの海斗の顔が次々現れ、すべてを思い出していく。

 そうだ!わたしは、海斗のことが好きだったのだ。海斗に好かれようと気に入られようと努力していた自分を思い出す。

 そして離婚を突き付けた時の海斗の表情、「愛している。」と言ってくれた時の瞳を思い出し、嬉しさでいっぱいになる。

 やっと、海斗に愛してもらえるようになったのに、肝心な時に私は海斗の記憶をすべて忘れてしまっていた自分が許せない。そして、勝手にマンションから出てきてしまったこと、ベッドを廃棄処分にしてしまったことも含めて、後悔しかない。

 帰ろう。帰って、謝ろう。海斗は許してくれるだろうか?

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