36 / 46
36.温泉
しおりを挟む
まどかは、裁判が始まるまで、しばらく外国で暮らすことになった。日本にいても何も進展しないのであれば、留学していた時の国へ行った方が気分も晴れるというもの。
まずは、ロンドン、パリ、それからニューヨークにも足を延ばすつもり。でも、今回はお母さんと一緒なの。お母さんとは、結婚前も結婚してからもロクに一緒に旅行へも行ったことがない。だから、まどかが案内する形で、外国へ行くと決めた時に、母に提案したのだ。
母は、元AMAのキャビンアテンダントだったから、客室乗務員時代は、さんざん海外へ行ったものの、ほとんどとんぼ返りが常だから、あまり観光旅行をしたことがないらしく、今回の申し出に飛びついた。
搭乗手続きを済ませ、ゲートに向かって歩いていく。
「お母さん、本当はね。まどかちゃんと国内の温泉へ行きたかったわ。今まで、仕事で海外には何度も足を運んでいるからかしら、日本で、のんびり温泉に浸かる方が楽。年を取ってしまったってことなのかもしれないわね。」
「それならキャンセルして、温泉旅行へ行きましょうよ。日本中の温泉を回るの。素敵よね?」
「え?でも、いいの?ホストファミリーに会うのが楽しみだって、言っていたじゃない?」
「離婚したら、いつでも会えるわ。お母さん、まだ言っていなかったけど、離婚が成立したら、外国で暮らそうと思っているのよ。外国なら、バチイチでも関係ないでしょ?」
「その方が、まどかに合っているかもしれないわね。」
国際線のフロアから、急遽、国内線へと移動して、とりあえず名湯百選の中から、行先を選ぶことにする。
せっかく空港にいるのだから、北海道に行こうよ。ということになり、新千歳空港に行くことにする。
登別温泉、湯の川温泉、洞爺湖温泉、定山渓温泉、有名どころを回るだけでも大変な上、今は冬真っ盛り、ちょっと北海道は失敗かも?と思い始める。
「いいじゃない?寒い時に寒い所へ行くことは悪いことではないわよ?雪を見ながら温泉に入るのもおつなものよ。」
もう、ほとんど強がりというべきか?我慢大会のような温泉旅行の幕が切って落とされたのである。
手始めに行ったのは、登別温泉、よく入浴剤で見かける乳白色の温泉で寒いながらも、カラダの芯から温まり心地がいい。
夕食は部屋食で、お母さんは、お酒を注文し、少し頬に赤みをさしている。
「ああ、いい気持ちっ!わたしね。大人になったまどかちゃんとこういう旅行がしてみたかったのよ。だから、今日は幸せだわ。あ!そうだ。忘れないうちに、お父さんに電話しとかなきゃ。ロンドンに着いたら、電話するって言っていたのよ。ロンドンじゃないけどね。」
「トゥルルルルル……。ガチャっ。もしもし西園寺ですが。」
「Hello. お父さん、無事に着きましたぁ。」
「なんだ。お母さんか……早いな。ロシアの上空を通っていくのだからな、10時間ほどで到着するとしても、ずいぶん早くないか?」
「えへへ。今ね。登別に来ているのよ!まどかちゃんと二人で温泉入って、気持ちいいの。」
「なに!? 明日も登別にいるのか?」
「うーん。それはわからないけど、明日は湯の川か、定山渓か洞爺湖かもしれないけど、とにかく北海道の温泉巡りをすることにしたのよ。」
「いや、待て。それなら、俺もこれから、そっちへ行く。」
「はぁ?何、言っているのよ。明日は、ゴルフへ行くのでしょ?」
「ああ、それは誰かほかの人間に代わってもらう。だから、明日は俺も北海道へ行くぞ。」
「ダメよ。せっかく、まどかちゃんと水入らずで楽しんでいるのに。母娘というものは、こういう時間が必要なのよ。」
「いや。俺も行く。」
「はーっ。仕方ないわね。新千歳に着いたら、連絡してね。」
お母さんは、ほとほといやそうな顔をして、「明日、お父さんも合流するんだって。」
まずは、ロンドン、パリ、それからニューヨークにも足を延ばすつもり。でも、今回はお母さんと一緒なの。お母さんとは、結婚前も結婚してからもロクに一緒に旅行へも行ったことがない。だから、まどかが案内する形で、外国へ行くと決めた時に、母に提案したのだ。
母は、元AMAのキャビンアテンダントだったから、客室乗務員時代は、さんざん海外へ行ったものの、ほとんどとんぼ返りが常だから、あまり観光旅行をしたことがないらしく、今回の申し出に飛びついた。
搭乗手続きを済ませ、ゲートに向かって歩いていく。
「お母さん、本当はね。まどかちゃんと国内の温泉へ行きたかったわ。今まで、仕事で海外には何度も足を運んでいるからかしら、日本で、のんびり温泉に浸かる方が楽。年を取ってしまったってことなのかもしれないわね。」
「それならキャンセルして、温泉旅行へ行きましょうよ。日本中の温泉を回るの。素敵よね?」
「え?でも、いいの?ホストファミリーに会うのが楽しみだって、言っていたじゃない?」
「離婚したら、いつでも会えるわ。お母さん、まだ言っていなかったけど、離婚が成立したら、外国で暮らそうと思っているのよ。外国なら、バチイチでも関係ないでしょ?」
「その方が、まどかに合っているかもしれないわね。」
国際線のフロアから、急遽、国内線へと移動して、とりあえず名湯百選の中から、行先を選ぶことにする。
せっかく空港にいるのだから、北海道に行こうよ。ということになり、新千歳空港に行くことにする。
登別温泉、湯の川温泉、洞爺湖温泉、定山渓温泉、有名どころを回るだけでも大変な上、今は冬真っ盛り、ちょっと北海道は失敗かも?と思い始める。
「いいじゃない?寒い時に寒い所へ行くことは悪いことではないわよ?雪を見ながら温泉に入るのもおつなものよ。」
もう、ほとんど強がりというべきか?我慢大会のような温泉旅行の幕が切って落とされたのである。
手始めに行ったのは、登別温泉、よく入浴剤で見かける乳白色の温泉で寒いながらも、カラダの芯から温まり心地がいい。
夕食は部屋食で、お母さんは、お酒を注文し、少し頬に赤みをさしている。
「ああ、いい気持ちっ!わたしね。大人になったまどかちゃんとこういう旅行がしてみたかったのよ。だから、今日は幸せだわ。あ!そうだ。忘れないうちに、お父さんに電話しとかなきゃ。ロンドンに着いたら、電話するって言っていたのよ。ロンドンじゃないけどね。」
「トゥルルルルル……。ガチャっ。もしもし西園寺ですが。」
「Hello. お父さん、無事に着きましたぁ。」
「なんだ。お母さんか……早いな。ロシアの上空を通っていくのだからな、10時間ほどで到着するとしても、ずいぶん早くないか?」
「えへへ。今ね。登別に来ているのよ!まどかちゃんと二人で温泉入って、気持ちいいの。」
「なに!? 明日も登別にいるのか?」
「うーん。それはわからないけど、明日は湯の川か、定山渓か洞爺湖かもしれないけど、とにかく北海道の温泉巡りをすることにしたのよ。」
「いや、待て。それなら、俺もこれから、そっちへ行く。」
「はぁ?何、言っているのよ。明日は、ゴルフへ行くのでしょ?」
「ああ、それは誰かほかの人間に代わってもらう。だから、明日は俺も北海道へ行くぞ。」
「ダメよ。せっかく、まどかちゃんと水入らずで楽しんでいるのに。母娘というものは、こういう時間が必要なのよ。」
「いや。俺も行く。」
「はーっ。仕方ないわね。新千歳に着いたら、連絡してね。」
お母さんは、ほとほといやそうな顔をして、「明日、お父さんも合流するんだって。」
0
お気に入りに追加
339
あなたにおすすめの小説
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
両隣から喘ぎ声が聞こえてくるので僕らもヤろうということになった
ヘロディア
恋愛
妻と一緒に寝る主人公だったが、変な声を耳にして、目が覚めてしまう。
その声は、隣の家から薄い壁を伝って聞こえてくる喘ぎ声だった。
欲情が刺激された主人公は…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
どうして隣の家で僕の妻が喘いでいるんですか?
ヘロディア
恋愛
壁が薄いマンションに住んでいる主人公と妻。彼らは新婚で、ヤりたいこともできない状態にあった。
しかし、隣の家から喘ぎ声が聞こえてきて、自分たちが我慢せずともよいのではと思い始め、実行に移そうとする。
しかし、何故か隣の家からは妻の喘ぎ声が聞こえてきて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる