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35.調停
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まどかがマンションを引き払ってから10日が過ぎても、いまでに離婚が成立した兆しを見せないことに苛立っている。
それにしても、広瀬海斗という、まどかの夫はイケメンだった。身長は180センチを越えるかと思う長身に、二重のくっきりとした瞳、短めの髪にゆるくパーマがかかっていて、その髪を上にあげていた。
ああいう男がイケメンというのだろうな。きっと、浩介を失った悲しみで、ついイケメンとの結婚を承諾しちゃったのかもしれない。
半分は、自分に責任があることかもしれないけど、やっぱり指輪も買ってもらえなかったというショックは大きい。
あの引っ越しの時でも、愛の証を探すためでもあったのだけど、ついに一つも見つけることができなかった。
写真一枚でもいい、そう思って探したが、スマホの中にもどこにも何もなかった。そのことがとても寂しく、悲しいことで引っ越し作業をしながら、自然と涙がこぼれる。
「本当にいいの?まどかちゃん。」
母は、引っ越し作業の手伝いをしてくれている手を止めて、まどかの顔を覗き込んでくれる。
「どうせ、政略結婚だったのでしょ!?」
笑って、ごまかし、引っ越しは無事完了したのに、まだ離婚が成立していないってどういうこと?
アイツ、どこまでわたしを侮辱したら、気が済むのだろう。引っ越しの時、ベッドサイドを作業しているとき、偶然オモチャを見つけてしまった。最初は、何かわからなかったけど、イヤホン?ヘアアイロン?母が途端に真っ赤になり、目を泳がせて焦りだしたから、わかったのである。
だからベッドごと、引っ越し荷物に入れて、燃やしてもらったわ。このベッドで、わたしをオモチャで甚振っていたなんて、信じられない!
最初は、ベッドだけは、お部屋に残しておいてあげるつもりだったけど、引っ越し業者に頼み、廃棄処分にしてもらったのだ。
そしてオモチャは、離婚裁判になれば有効な証拠になるからと、母が預かっている。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
ついに、離婚訴訟を起こすことになり、西園寺家は、顧問弁護士の訪問を受けている。
家庭裁判所での調停は不成立してしまい、仕方なく裁判にすることになってしまったのだ。
絶対に離婚したい妻と絶対に離婚したくない夫側の言い分は、食い違うばかり、通常、子供の親権で争うものだが、まどかたちに子供はいない。
再婚禁止期間の6か月間は、もう目前に来ているというのに、無駄に時間ばかりが過ぎていく。
世間は、もうクリスマスシーズン。赤、青、緑、黄色に輝くネオンサインは綺麗だ。待ちゆく人々は誰も、クリスマスツリーやイルミネーションの写真をスマホで撮っている。
それなのに、まどかはアイツとデートしている写真は1枚もない。スマホに残っているのは、浩介との思い出ばかり。これでどうして、愛し合って結婚したと言えるのか?
あれ以来、何度か、海斗は西園寺家を訪れたが、いつも「別れる気はない。」で、まどかと言い争いになり、最後には、「もういい。」と海斗が出ていく。
せめて、子供でもできていれば、またきっかけになるかもしれないと、広瀬の両親は期待を寄せるが、西園寺家は、あんなことをしていて、子供などできるわけがないと冷めている。
それっきり音沙汰がなくなってしまったので、裁判所に調停を申し入れたのだ。でも、海斗は、「離婚する気はない。」としか言わない。まどかの方は、本当に海斗のことだけを何も覚えていないのだから、婚姻を継続する理由がないとしか、いえない。それにオモチャのことは、まだ調停員にも話していない。
仕方なく、両家の恥を承知で裁判にすることにしたのだ。このままでは、まどかは新しい人生を踏み出せないでいる。
離婚さえしてくれたら、その思いだけで、まどかはいっぱいになる。
それにしても、広瀬海斗という、まどかの夫はイケメンだった。身長は180センチを越えるかと思う長身に、二重のくっきりとした瞳、短めの髪にゆるくパーマがかかっていて、その髪を上にあげていた。
ああいう男がイケメンというのだろうな。きっと、浩介を失った悲しみで、ついイケメンとの結婚を承諾しちゃったのかもしれない。
半分は、自分に責任があることかもしれないけど、やっぱり指輪も買ってもらえなかったというショックは大きい。
あの引っ越しの時でも、愛の証を探すためでもあったのだけど、ついに一つも見つけることができなかった。
写真一枚でもいい、そう思って探したが、スマホの中にもどこにも何もなかった。そのことがとても寂しく、悲しいことで引っ越し作業をしながら、自然と涙がこぼれる。
「本当にいいの?まどかちゃん。」
母は、引っ越し作業の手伝いをしてくれている手を止めて、まどかの顔を覗き込んでくれる。
「どうせ、政略結婚だったのでしょ!?」
笑って、ごまかし、引っ越しは無事完了したのに、まだ離婚が成立していないってどういうこと?
アイツ、どこまでわたしを侮辱したら、気が済むのだろう。引っ越しの時、ベッドサイドを作業しているとき、偶然オモチャを見つけてしまった。最初は、何かわからなかったけど、イヤホン?ヘアアイロン?母が途端に真っ赤になり、目を泳がせて焦りだしたから、わかったのである。
だからベッドごと、引っ越し荷物に入れて、燃やしてもらったわ。このベッドで、わたしをオモチャで甚振っていたなんて、信じられない!
最初は、ベッドだけは、お部屋に残しておいてあげるつもりだったけど、引っ越し業者に頼み、廃棄処分にしてもらったのだ。
そしてオモチャは、離婚裁判になれば有効な証拠になるからと、母が預かっている。
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ついに、離婚訴訟を起こすことになり、西園寺家は、顧問弁護士の訪問を受けている。
家庭裁判所での調停は不成立してしまい、仕方なく裁判にすることになってしまったのだ。
絶対に離婚したい妻と絶対に離婚したくない夫側の言い分は、食い違うばかり、通常、子供の親権で争うものだが、まどかたちに子供はいない。
再婚禁止期間の6か月間は、もう目前に来ているというのに、無駄に時間ばかりが過ぎていく。
世間は、もうクリスマスシーズン。赤、青、緑、黄色に輝くネオンサインは綺麗だ。待ちゆく人々は誰も、クリスマスツリーやイルミネーションの写真をスマホで撮っている。
それなのに、まどかはアイツとデートしている写真は1枚もない。スマホに残っているのは、浩介との思い出ばかり。これでどうして、愛し合って結婚したと言えるのか?
あれ以来、何度か、海斗は西園寺家を訪れたが、いつも「別れる気はない。」で、まどかと言い争いになり、最後には、「もういい。」と海斗が出ていく。
せめて、子供でもできていれば、またきっかけになるかもしれないと、広瀬の両親は期待を寄せるが、西園寺家は、あんなことをしていて、子供などできるわけがないと冷めている。
それっきり音沙汰がなくなってしまったので、裁判所に調停を申し入れたのだ。でも、海斗は、「離婚する気はない。」としか言わない。まどかの方は、本当に海斗のことだけを何も覚えていないのだから、婚姻を継続する理由がないとしか、いえない。それにオモチャのことは、まだ調停員にも話していない。
仕方なく、両家の恥を承知で裁判にすることにしたのだ。このままでは、まどかは新しい人生を踏み出せないでいる。
離婚さえしてくれたら、その思いだけで、まどかはいっぱいになる。
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