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34.引っ越し
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「本当にいいの?まどかちゃん。」
まどかは、今、自宅マンションの最上階にいる。母と引っ越し業者とともに。
まどかのバッグの中から、カードキーが見つかり、そこは、まどかが蓬時代に勤めていた時に住んでいたマンションと同じ場所だったから、オートロックの解除方法は、すぐわかった。
「どうせ政略結婚だったのでしょ?それなのにわたしが欲しがれば、すぐにでも指輪を用意するって、どういうことよ?それならわたしが欲しがらなかったとでも、言いたいわけ?」
女の子にとって、アクセサリーがどれほど大事なものか、理解していないのよ!だから、あの浩介がくれたダイヤモンドの指輪でさえ、嬉しくて、キラキラしていて、それで捨てるのをためらっていたのだと思う……。
捨てちゃったけどね、階段から落ちて気が付いたら、記憶の一部が飛んでいたみたいだけど、でも、浩介が純子と浮気していたことだけは、覚えていて、腹が立つから捨てた。それだけのこと。
それを結婚していたというのに、指輪もドレスも何もないって、どういうつもり!?
マンションの1階ロビーに部屋の中の家具がどんどん運び出されている。冷蔵庫は2つあった。一つは見慣れた独身時代から使っていたもの、と結婚してから買い足したのか、見慣れないものと、でも見慣れない方にまどかが買ったと思われる食材がぎっしりと詰まっていたから、2つとも運び出すように指示を出す。
まどかは、今まであの男とどういう結婚生活をしていたのかと、考えるだけで、不安しかない。
きっと、愛も何もない。殺伐とした生活だったのだろう。
愛し合ったというなら、その愛の一片すら見あたらないことに寂しい思いがする。だから、あの男がウソを吐いているに違いない!
クローゼットの中の洋服も下着も靴もハンドバッグも化粧品も、すべて取り出して部屋を後にした。
ただ1枚の離婚届だけを残して。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
海斗は会社から、まっすぐ帰宅し、地下のガレージに車を駐める。
昨夜の話し合いで、ひょっとしたら、まどかが帰ってきてくれているかもという期待を込めて、早めに会社を後にしたのだ。
玄関チャイムを押しても、やっぱり応答がない。
その後、さらに驚きが待っていようとは、夢にも思わなかった。
夕暮れとはいえ、まだ陽はあるのに、妙に薄暗い……。慌てて、電気を点けてみると、そこには何もなかった。
だだっ広い部屋、冷静になって、ミネラルウォーターでも飲もうとしたが、冷蔵庫もなくなっている。
「……まどか……。」
カウンターキッチンの上に置かれた一枚の離婚届がすべてを物語っている。
その日は、ビジネスホテルに泊まることにして、静かに部屋を出た。
まどかは、今、自宅マンションの最上階にいる。母と引っ越し業者とともに。
まどかのバッグの中から、カードキーが見つかり、そこは、まどかが蓬時代に勤めていた時に住んでいたマンションと同じ場所だったから、オートロックの解除方法は、すぐわかった。
「どうせ政略結婚だったのでしょ?それなのにわたしが欲しがれば、すぐにでも指輪を用意するって、どういうことよ?それならわたしが欲しがらなかったとでも、言いたいわけ?」
女の子にとって、アクセサリーがどれほど大事なものか、理解していないのよ!だから、あの浩介がくれたダイヤモンドの指輪でさえ、嬉しくて、キラキラしていて、それで捨てるのをためらっていたのだと思う……。
捨てちゃったけどね、階段から落ちて気が付いたら、記憶の一部が飛んでいたみたいだけど、でも、浩介が純子と浮気していたことだけは、覚えていて、腹が立つから捨てた。それだけのこと。
それを結婚していたというのに、指輪もドレスも何もないって、どういうつもり!?
マンションの1階ロビーに部屋の中の家具がどんどん運び出されている。冷蔵庫は2つあった。一つは見慣れた独身時代から使っていたもの、と結婚してから買い足したのか、見慣れないものと、でも見慣れない方にまどかが買ったと思われる食材がぎっしりと詰まっていたから、2つとも運び出すように指示を出す。
まどかは、今まであの男とどういう結婚生活をしていたのかと、考えるだけで、不安しかない。
きっと、愛も何もない。殺伐とした生活だったのだろう。
愛し合ったというなら、その愛の一片すら見あたらないことに寂しい思いがする。だから、あの男がウソを吐いているに違いない!
クローゼットの中の洋服も下着も靴もハンドバッグも化粧品も、すべて取り出して部屋を後にした。
ただ1枚の離婚届だけを残して。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
海斗は会社から、まっすぐ帰宅し、地下のガレージに車を駐める。
昨夜の話し合いで、ひょっとしたら、まどかが帰ってきてくれているかもという期待を込めて、早めに会社を後にしたのだ。
玄関チャイムを押しても、やっぱり応答がない。
その後、さらに驚きが待っていようとは、夢にも思わなかった。
夕暮れとはいえ、まだ陽はあるのに、妙に薄暗い……。慌てて、電気を点けてみると、そこには何もなかった。
だだっ広い部屋、冷静になって、ミネラルウォーターでも飲もうとしたが、冷蔵庫もなくなっている。
「……まどか……。」
カウンターキッチンの上に置かれた一枚の離婚届がすべてを物語っている。
その日は、ビジネスホテルに泊まることにして、静かに部屋を出た。
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