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27.落書き

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 挨拶回りしてよかった。それは女子社員のお友達らしきものができたこと。

 昼休憩になると、食券の買い方から、場所取りまで女子社員が教えてくれる。休憩室のカフェのケーキのうち、どれがオススメなどの情報も彼女たちからもたらされた。

 14階の役員室フロアには、女性が一人もいないので、こうして彼女たちからもたらされる情報は貴重だ。

 彼女たちは、彼女たちで自分が勤めている会社の経営者一族の人間と付き合うことは、ステータスで、将来において役立つ。例えば、結婚式に招待できる。招待してもらえる。など。

 ついでに言えば、まどかをダシにして、他の男子社員の気を引くことも可能になるわけ。

 転んでもタダでは起きないのがOLなのよ。

 まどかは、社長の第2秘書的な立場なので、既決書類を総務に戻すことも、第1秘書の佐久間さんがしてくださるけど、あまりにも手が一杯な時は、時々お手伝いをしている。

 そういう時、総務の女の子たちは、まどかにだけこっそりとおやつをくれる。

 だから、社長のお客様が手土産を持ってこられたときは、進んで総務におすそ分けをしに行く。

 圧倒的に、まどかからの方が多いけど、おやつコミュニケーションは、男性が思っている以上に重要なのだ。

 これが満足にできなければ、イジメの制裁が待っている。もっとも、まどかは副社長夫人だから、できなくてもイジメられることはない。

 その日、総務部長が来て、社長室で話があった。

 「端的に申し上げますと、わか奥様のそのスーツ姿が、一部男性社員の恰好の的となり、できればお脱ぎいただくか、制服をご用意いたしますので、それにお着換え願えませんでしょうか?」

 「は?どういうことだ?格好の的とは?」

 そう。わたしも同じことが知りたい。

 「それは……、ご本人を前にして、少々言いづらいことでありまして……。」

 「かまわん、言ってみろ。」

 「若奥様のスーツ姿が、セクシーすぎて、男子トイレに落書きがされております。」

 「誰だ!そんなバカは……、まさか副社長ということではあるまいな?」

 「副社長ではないと思いますが……。」

 とにかく見に行くことになったのだ。なぜか、まどかも一緒に。

 問題のトイレは、4階のトイレで、このトイレを使用する部署は、営業部の連中だとわかる。

 一番奥の個室の中に、その落書きはあった。スーツ姿のまどかとそのスーツの前をはだけた姿、それにスカートと下着を脱がした……要するに下半身丸見えでM字開脚のじょうたいになったものが描かれている。

 まどかは恥ずかしいというより、もう真っ赤になってオロオロしている。

 要するに、この落書きは、まどかをオカズにしての手コキの為のものであるということは一目瞭然だったのだ。

 「誰だ!落書きを描いた奴は!クビだ!今日中に消さなければ、そいつはクビにする!連帯責任だと思え!今月は、営業部員は全員ボーナス一律3割カットだ!ただし、女子社員は100%支給する。以上。」

 同じことを営業部の中に入って、叫ぶ社長に女子社員は唖然とした表情で、男性社員は、全員、目を彷徨わせている。

 まどかを伴って、社長室に戻られた社長は、

 「すまんな。まどかさん、儂の会社は中学生レベルかと思う程低い。こんなセクハラまがいのことをしても許されると思っている。だがな、これからは儂が責任もって改革していくから、辛抱してくれ。」

 まどかは、このことも記録していく。明日からは、ワンピースにしようかとも、思う。でも、やっぱり同じか……という気もする。

 制服を着れば、女子社員全員がセクハラのターゲットになるし、なおさら着られない。

 社長の叱責があってから、約1時間で、落書きは消されたが、犯人が名乗り上げなかったので、社長はボーナスカットのまま、断行する。

 営業部の男性社員は、誰の仕業か薄々気づいていたので、暗にその人間に嫌がらせ?というか、居づらくなるように仕向け、お盆休みに入る前にその社員は、退職していった。
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