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22.受付
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まどかは家の中も自身もピカピカに磨き上げてから家を出る。久しぶりの地下鉄電車は、この時間だからか空いていて、すぐに座れることができた。
最寄り駅で降り、あらかじめネットで調べていた地図を見ながら、目的地に向かう。会社を退職してから3か月、オフィス街を歩くのは、心地いい。
海斗の会社は、地上15階建の自社ビル。
受付で、入館者リストに名前を書き、西園寺と書きそうになったが、落ち着いて広瀬まどかと記載し、順番待ちをする。
「広瀬海斗の家内でございます。主人に忘れ物があるので、届けに来ました。」
受付嬢は、ビックリするぐらい綺麗な人、なぜか、受付嬢は、まどかを睨みつける。あれ?この人と会ったことがあるのかしら?思い出そうとするも、どうしても思い出せない。世の中には、美人が溢れかえっているから、きっと似た人に会ったのだろうと思いなおす。
受付嬢は、「副社長に、お渡しするので、お預かりさせていただきます。」
入館者リストに記載の名前を二重線で抹消しているのだ。さすがにそれは、ちょっと……。と思っていると、そこに広瀬社長が外出から、戻ってこられ、まどかの存在に気づく。
「まどかさん!今日は、どうして?あれ以来、ちっとも家に顔を出さないから、家内も会いたがっているよ。いつでも遊びにいらっしゃい。」
「今日は、海斗さんたら、スマホを家に置き忘れて出てきてしまったので、届けようと思ったら、そこの受付の方が、お預かりしますって、入館者リストを消してしまわれたのです。」
「は?」
まどかは、ありのままをそのまま伝えると、さすがに受付嬢の顔色が悪くなる。
広瀬社長は、受付に出向く。さっきの受付嬢は青ざめている。
「君、まどかさんは息子の嫁で、儂の可愛い義娘だよ。入館者リストなどに書かせなくても、そのまま入館者証を渡せばいいだろう。……と、君の名前は、中川さんだね?広報にきちんと伝えておくよ。」
「で、ですが……規則が……。」
「なにっ⁉」
社長がワナワナと肩を震わせ、怒り始めたので、社長の取り巻きは、慌ててその場をとりなそうとしている。
一人が慌てた様子で、どこかに走っていき、誰かを呼びに行っている様子。スーツの上着を着た男性が慌てて走ってきて、社長にペコペコ頭を下げながら、受付嬢に怒りをぶちまけている。
「中川君!君は、なんということをしてくれたのだ!よりにもよって、副社長の奥様の名前を二重線で抹消するなどと失礼なことを致し、広瀬様のご家族は、フリーパスだと常々言っているだろうが!……(割愛)……、中川君、もう明日から来なくていい。君のような人間を受付に置いていたことは、わが社の恥だ。早々に退職を要求する。」
えっ⁉ まどかは、あの受付嬢が退職勧奨されていることに驚きつつも、お義父さんが
「まどかさん、海斗の部屋で待つといいよ。このまま、まどかさんを帰したとあっては、海斗に恨まれてしまうからな。さ、行こう。」
促されて、受付を後にしようと振り返ったら、あの受付嬢は、涙を流している姿が見える。ズキンと胸に痛みが走るが、最初に失礼なことをしたのは、アナタなのよ。運よく、社長が通りかかってくれたから、よかったようなもので、あのまま追い返されていても、おかしくなかった状況だったのだ。
エレベーターに乗り14階の役員室で止まる。社長室は廊下の突き当りにあり、副社長室は社長室の隣側に部屋がある。そして副社長室の隣の部屋が第1応接室になっているようで、そこまで来たら、第1応接室のドアが開き、中から初老の男性とともに海斗が出てきた。
「それでは、副社長、この件はよろしく。」と頭を下げ、社長がいることに気づき、初老の男性は、社長に挨拶を始めたのだ。
海斗はまどかの姿に驚き、駆け寄ろうとするが、社長御一行様は、まどかのところまで行かせまいと阻止するかのように立ちはだかっている。年功序列ではないが、エレベーターに乗る時も、序列がある。皆、その序列のために死守しているから立ちはだかっているように見える。
ようやく、その初老の男性が帰り、副社長室にまどかと二人きりになった海斗は、いつにも増してソワソワしている。
最寄り駅で降り、あらかじめネットで調べていた地図を見ながら、目的地に向かう。会社を退職してから3か月、オフィス街を歩くのは、心地いい。
海斗の会社は、地上15階建の自社ビル。
受付で、入館者リストに名前を書き、西園寺と書きそうになったが、落ち着いて広瀬まどかと記載し、順番待ちをする。
「広瀬海斗の家内でございます。主人に忘れ物があるので、届けに来ました。」
受付嬢は、ビックリするぐらい綺麗な人、なぜか、受付嬢は、まどかを睨みつける。あれ?この人と会ったことがあるのかしら?思い出そうとするも、どうしても思い出せない。世の中には、美人が溢れかえっているから、きっと似た人に会ったのだろうと思いなおす。
受付嬢は、「副社長に、お渡しするので、お預かりさせていただきます。」
入館者リストに記載の名前を二重線で抹消しているのだ。さすがにそれは、ちょっと……。と思っていると、そこに広瀬社長が外出から、戻ってこられ、まどかの存在に気づく。
「まどかさん!今日は、どうして?あれ以来、ちっとも家に顔を出さないから、家内も会いたがっているよ。いつでも遊びにいらっしゃい。」
「今日は、海斗さんたら、スマホを家に置き忘れて出てきてしまったので、届けようと思ったら、そこの受付の方が、お預かりしますって、入館者リストを消してしまわれたのです。」
「は?」
まどかは、ありのままをそのまま伝えると、さすがに受付嬢の顔色が悪くなる。
広瀬社長は、受付に出向く。さっきの受付嬢は青ざめている。
「君、まどかさんは息子の嫁で、儂の可愛い義娘だよ。入館者リストなどに書かせなくても、そのまま入館者証を渡せばいいだろう。……と、君の名前は、中川さんだね?広報にきちんと伝えておくよ。」
「で、ですが……規則が……。」
「なにっ⁉」
社長がワナワナと肩を震わせ、怒り始めたので、社長の取り巻きは、慌ててその場をとりなそうとしている。
一人が慌てた様子で、どこかに走っていき、誰かを呼びに行っている様子。スーツの上着を着た男性が慌てて走ってきて、社長にペコペコ頭を下げながら、受付嬢に怒りをぶちまけている。
「中川君!君は、なんということをしてくれたのだ!よりにもよって、副社長の奥様の名前を二重線で抹消するなどと失礼なことを致し、広瀬様のご家族は、フリーパスだと常々言っているだろうが!……(割愛)……、中川君、もう明日から来なくていい。君のような人間を受付に置いていたことは、わが社の恥だ。早々に退職を要求する。」
えっ⁉ まどかは、あの受付嬢が退職勧奨されていることに驚きつつも、お義父さんが
「まどかさん、海斗の部屋で待つといいよ。このまま、まどかさんを帰したとあっては、海斗に恨まれてしまうからな。さ、行こう。」
促されて、受付を後にしようと振り返ったら、あの受付嬢は、涙を流している姿が見える。ズキンと胸に痛みが走るが、最初に失礼なことをしたのは、アナタなのよ。運よく、社長が通りかかってくれたから、よかったようなもので、あのまま追い返されていても、おかしくなかった状況だったのだ。
エレベーターに乗り14階の役員室で止まる。社長室は廊下の突き当りにあり、副社長室は社長室の隣側に部屋がある。そして副社長室の隣の部屋が第1応接室になっているようで、そこまで来たら、第1応接室のドアが開き、中から初老の男性とともに海斗が出てきた。
「それでは、副社長、この件はよろしく。」と頭を下げ、社長がいることに気づき、初老の男性は、社長に挨拶を始めたのだ。
海斗はまどかの姿に驚き、駆け寄ろうとするが、社長御一行様は、まどかのところまで行かせまいと阻止するかのように立ちはだかっている。年功序列ではないが、エレベーターに乗る時も、序列がある。皆、その序列のために死守しているから立ちはだかっているように見える。
ようやく、その初老の男性が帰り、副社長室にまどかと二人きりになった海斗は、いつにも増してソワソワしている。
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