5 / 46
5.出会い
しおりを挟む
気が付けば、浩介のマンションから飛び出し、あてもなく走り続けている。走りながら今さっき起こったことを反芻しているまどかがいる。
「本当に今日は風邪で熱があったんだよ。そしたら純子が早引きして見舞いに来たら、暑い暑いって服を脱ぎだしやがったんだよ。見ていたらなんかムラムラしてきて、つい。だから出来心だって言ってるだろ。許してくれよ。俺はまどかしか愛せないんだよ。」
「押し倒しておいて、よく言うわよ。だいたい西園寺さんは、ちょっと英語が喋れるからって偉そうに、秘書は何様のつもり?それにちょっとおっぱいが大きいからって、他の男の人からチヤホヤされて、気に入らないのよ!」
「なんだ?純子それでは、お前は俺を嵌めたのか?」
「そうよ幸せそうなアンタたちを見ているとムシャクシャしてね。これで浩介もキズモノよ。わたしのお古のオトコでよければ、西園寺さんにどうぞ差し上げるわ。」
悔しい!腹が立つ!でもそれと同じぐらい自分が情けない。それに、名残り雪というのだろうか、この時期にしては珍しく雪も降りだしてきたのだ。
知らない間に涙で視界がぼやけて、前がよく見えない。
気が付けば、交差点の中に入っていた。車のクラクションがしたので振り向くと、ヘッドライトに照らされている。怖い、足がすくんで動けない。
その直後、見知らぬ男性がまどかをかばって交差点に入り、まどかを交差点から引きずり出してくれたのだ。
「危ないじゃないか!」
涙で濡れているまどかを見て、その男性は驚いたような顔をしている。
「ごめんなさい。助けてくださりありがとう存じます。せめて、お名前だけでもお教えいただけないでしょうか?」
「いや、そんなことはどうでもいい。大丈夫ですか?タイツが破れてしまったね。」
まどかは足を見ると、タイツが破れ、擦りむいたのだろうか?血が出ている。
よろけながらも立ち上がり、助けてくれた男性に再度、お礼を言いその場から帰ろうとした。
「送っていきましょうか?そのままなら、また事故に遭うかもしれないので、乗り掛かった舟なのでかまいませんよ。」
「でも、そこまでしていただくわけには……。」
「大丈夫ですよ。さ、行きましょう。」
結局、見ず知らずの男性だけど、マンションの前まで送ってくださった。
「ありがとうございます。このマンションですので、お礼はまた後程お伺いさせていただきますので、せめて、お所とお名前をお教え願えないでしょうか?」
「え?私もこのマンションに住んでいます。いやぁ、こんな偶然あるのですね。ビックリしました。」
「本当。いい方に助けていただいて、なんとお礼を申し上げたらよろしいのかしら。」
「それより帰って、早く傷の手当した方がいいですよ。」
「あ、そうでしたわ。それではお先に失礼します。」
ちょうどオートロックが開いたので、その隙にささっと入る。
郵便受けを覗いて、DMを取り出し、捨てる。さっきの男性も同じような動きをしている。部屋番号を知られるとマズイかも?と思いつつも、助けてくれた男性に失礼なので、あえて隠さなかった。
その男性は最上階の住人だった。あの一番広い部屋の住人だったのか。畳換算で60畳はあるという部屋。その分、家賃も高いはず。
まどかは10階で降り、振り返って、改めてお礼を言う。
「今日はありがとうございました。おかげで生きて帰ってくることができました。」
「何があったか知らないが、もうあんなことしてはダメですよ。」
どうやら助けてくださった男性は、まどかが飛び込み自殺をするつもりで交差点に入ったと思っている様子。
ビックリしたけど、あえて否定もしない。浩介の裏切りと同期の純子の嫉妬心が憎かっただけ。
「それでは、おやすみなさい。」
エレベーターのドアが閉まり、まどかは部屋のカギを開ける。
「本当に今日は風邪で熱があったんだよ。そしたら純子が早引きして見舞いに来たら、暑い暑いって服を脱ぎだしやがったんだよ。見ていたらなんかムラムラしてきて、つい。だから出来心だって言ってるだろ。許してくれよ。俺はまどかしか愛せないんだよ。」
「押し倒しておいて、よく言うわよ。だいたい西園寺さんは、ちょっと英語が喋れるからって偉そうに、秘書は何様のつもり?それにちょっとおっぱいが大きいからって、他の男の人からチヤホヤされて、気に入らないのよ!」
「なんだ?純子それでは、お前は俺を嵌めたのか?」
「そうよ幸せそうなアンタたちを見ているとムシャクシャしてね。これで浩介もキズモノよ。わたしのお古のオトコでよければ、西園寺さんにどうぞ差し上げるわ。」
悔しい!腹が立つ!でもそれと同じぐらい自分が情けない。それに、名残り雪というのだろうか、この時期にしては珍しく雪も降りだしてきたのだ。
知らない間に涙で視界がぼやけて、前がよく見えない。
気が付けば、交差点の中に入っていた。車のクラクションがしたので振り向くと、ヘッドライトに照らされている。怖い、足がすくんで動けない。
その直後、見知らぬ男性がまどかをかばって交差点に入り、まどかを交差点から引きずり出してくれたのだ。
「危ないじゃないか!」
涙で濡れているまどかを見て、その男性は驚いたような顔をしている。
「ごめんなさい。助けてくださりありがとう存じます。せめて、お名前だけでもお教えいただけないでしょうか?」
「いや、そんなことはどうでもいい。大丈夫ですか?タイツが破れてしまったね。」
まどかは足を見ると、タイツが破れ、擦りむいたのだろうか?血が出ている。
よろけながらも立ち上がり、助けてくれた男性に再度、お礼を言いその場から帰ろうとした。
「送っていきましょうか?そのままなら、また事故に遭うかもしれないので、乗り掛かった舟なのでかまいませんよ。」
「でも、そこまでしていただくわけには……。」
「大丈夫ですよ。さ、行きましょう。」
結局、見ず知らずの男性だけど、マンションの前まで送ってくださった。
「ありがとうございます。このマンションですので、お礼はまた後程お伺いさせていただきますので、せめて、お所とお名前をお教え願えないでしょうか?」
「え?私もこのマンションに住んでいます。いやぁ、こんな偶然あるのですね。ビックリしました。」
「本当。いい方に助けていただいて、なんとお礼を申し上げたらよろしいのかしら。」
「それより帰って、早く傷の手当した方がいいですよ。」
「あ、そうでしたわ。それではお先に失礼します。」
ちょうどオートロックが開いたので、その隙にささっと入る。
郵便受けを覗いて、DMを取り出し、捨てる。さっきの男性も同じような動きをしている。部屋番号を知られるとマズイかも?と思いつつも、助けてくれた男性に失礼なので、あえて隠さなかった。
その男性は最上階の住人だった。あの一番広い部屋の住人だったのか。畳換算で60畳はあるという部屋。その分、家賃も高いはず。
まどかは10階で降り、振り返って、改めてお礼を言う。
「今日はありがとうございました。おかげで生きて帰ってくることができました。」
「何があったか知らないが、もうあんなことしてはダメですよ。」
どうやら助けてくださった男性は、まどかが飛び込み自殺をするつもりで交差点に入ったと思っている様子。
ビックリしたけど、あえて否定もしない。浩介の裏切りと同期の純子の嫉妬心が憎かっただけ。
「それでは、おやすみなさい。」
エレベーターのドアが閉まり、まどかは部屋のカギを開ける。
0
お気に入りに追加
341
あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。


淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる