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聖女クリスティーヌ
1 婚約破棄
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ここは、ウエストリバレー国の大聖堂の一室である。
司祭様が昨夜、女神様のお告げを受けたとかで、他の神官に何やら、指示を飛ばしている。
「来年の今日、すなわち10月10日に18歳になる国内で生まれた娘を全部、調べるのだっ!」
「女神様が言われるには、その娘が地上に現れる1000年ぶりの聖女様で、未曽有の大災害から救ってくださる切り札となる娘だそうだ。その娘に粗相があってはならぬ、わが国だけではすまぬ災害らしい。」
司祭様が見たという夢のお告げの話は、すぐに王家にも伝えられる。王家には、10月10日生まれの娘の心当たりがあったのだ。それは、王太子アルベルトの婚約者で、公爵令嬢のクリスティーヌ・マスターグランド、ちょうど来年18歳になる。
しかし、この娘病気もちなのである。この娘の母は、隣国ネバーランドウエストの国王陛下の妹君で、我が国に留学中にマスターグランド公爵と恋に落ち、恋愛結婚して、生まれてできた娘である。たまたまアルベルトと同い年であったことから、家柄、血筋とも申し分がなく結ばれた婚約なのである。
クリスティーヌは、小さい頃は健康であったのだが、思春期に差し掛かった頃より、1か月に1度は必ず、めまいがしてぶっ倒れるようになったのだ。最初は、女性特有の日であったことから、病気ではないと考えられていたのだ。ところが、最近では、女の子の日に関係なくぶっ倒れるようになってしまう。薬師に見せても、原因不明とだけしかわからなかったのである。
隣国との関係から、余程の瑕疵がないかぎり、婚約破棄はできないのである。
しかし、ここへきて聖女様の可能性が出てきたので、なおさら婚約破棄はできない。
同じ誕生日、同い年の娘は他にもいるのだが、ひょっとして!? の可能性がある以上、余計、婚約破棄などできない。それに司祭様の話によると、女神様から粗相無き用にいたせ。とくぎを刺されている。
もしもクリスティーヌが聖女様であったとしたら、めまいごときで婚約破棄などしてきたら、どんな天罰が下るかわかったもんじゃない。そこのところを王太子のアルベルトにもキツク言っているのだが、アルベルトは浮気をしているのだ。それも男爵令夫人と……。仕方なく、その女に呑ませるように、と避妊薬を渡している。
閨ごとを指南するための女であったのだが、いつの間にか指南が高じて二人はデキてしまったのだ。本来なら、高級娼婦をあてがうところ、女の夫である男爵が推挙して、決まった者である。聞けば、男爵が自分はもうできないから、せめて妻を満足させてほしいとの推薦理由であったのだ。
王家としては、もしかしたら、クリスティーヌ様が聖女様であったとして、めまいで婚約破棄せずとも、アルベルトの浮気がバレて、隠し子までいたとなると言い訳のしようがない。
だから、子供ができないように細心の注意を払っているのだが……。
司祭様は来年の10月10日に18歳になる生娘を3人リストアップした。その中には、もちろん、クリスティーヌが入っている。
本当はもっといたのだが、聖女様に覚醒することは純潔の証だから、既に誰かの嫁になっているものなどは除外されたのである。クリスティーヌ以外の娘は。薬師による、処女チェックをされたものばかり。だから、この中にいることは間違いない。
司祭様もたいそうな家柄の血筋のクリスティーヌ様の股を広げて見せてくれとは、言いづらかったのである。
処女チェックをクリアした娘は、他にパン屋の娘と伯爵令嬢のアンナ・ドルビーンだけであった。
もう、アンナは聖女様気取りである。誰が見たって、いつでもどこでもぶっ倒れるクリスティーヌが聖女のわけがないと思う。
パン屋の娘は、ハナから諦めている。だから、親が勧める相手とさっさと結婚するようだが、司祭様は、その結婚に「待った」をかける。
そうこうしているうちに、年が明け、春が過ぎ、夏が過ぎ、瞬く間にもうすぐ10月である。
10月1日、クリスティーヌは、アルベルト様から王宮に呼び出されることになる。
話の内容は、だいたい想像がついたが、おとなしく従ったのである。
「公爵令嬢クリスティーヌ・マスターグランド、貴様との婚約は、今をもって破棄するものとする。」
アルベルト様の横には、アンナ様が勝ち誇った顔をされている。きっと、自分が聖女様だからと、王太子殿下に売り込んだのである。
「だから、今すぐ婚約破棄しないと、わたくしが聖女認定されたら、あっという間に縁談が殺到するわよ。そしたら、もう王太子殿下といえども、手の届かない存在になってしまうわ。いいのかしら?おかわいそうなアルベルト様、あんな病気もちの女にいつまでも引っ付かれて。」
「理由は、わかっているだろうと思うが、クリス(クリスティーヌの愛称)のめまいが原因ではない。俺は、聖女様と結婚したいのだ。どうみてもクリスは聖女様ではないだろう?ごめん。今すぐアンナとは婚約しない、アンナが聖女様に決まってから、婚約する。だからわかってくれ。」
アルベルトは決して、クリスティーヌのことを疎んじていたわけではなかったのだ。むしろ好意を寄せていたのだ。だが、周囲の王太子への無言の圧力、期待に応えねばという気持ちが強かっただけなのである。
幼い時は、アルベルトは、自分は国王の息子、対してクリスティーヌは、隣国王女の娘、同じような立場であるから、思いを共有することが多かったのである。だから、好意を抱き、出来れば早く病気が治ってほしいと思っていたのである。
男爵令夫人とのことは、あくまでもただの気晴らしで周囲が思っているほど、のめりこんではいないのである。
「承知いたしました。どうぞ、アンナ様とお幸せになってくださいませ。わたくしは、これから母の国で、治療を受けに行きます。聖女認定は欠席いたしますので、ご了承くださいませ。」
「うむ。それがよかろう。治るといいな。」
クリスティーヌは、10月9日、明日が誕生日という前の日に、隣国に旅立ったのである。
侍女と護衛の騎士、3人だけで途中国境を越えた隣国の森で、オオカミの群れに出会ってしまったのだ、騎士団がその群れと戦っているようであったところに運悪く通りがかってしまったのだ。
慌てず騒がず、クリスティーヌは、馬車の中で祈りを捧げると、突如、クリスティーヌの身体が金色に光り輝き続け、馬車も黄金色へと変わってしまったのである。
オオカミたちは皆、急におとなしくなり帰って行った。
「聖女様だ!」
ネバーランドウエスト第2騎士団長をしているシャガールは、すぐにクリスティーヌが乗っている馬車に近づき、跪くのである。
マスターグランドの騎士が、扉を開け、クリスティーヌが降りてくるとまだ、クリスティーヌは光り輝き続けていたのである。
「わたくしは、クリスティーヌ・マスターグランドと申します。母の昔の名前は、セレンティーヌ・ネバーランドウエストです。これより、レッドベアー先生のところへ参る途中でございます。」
「おお!王女殿下の御令嬢か!それでは、我々がレッドベアー先生のところまで、先導いたしましょうぞ。」
レッド。ベアー先生というのは、数年前、ネバーランドウエスト国に突然、現れた転生者で、たいそう見立てがいい先生なのだ。
レッドベアー先生は、貧しいものからはお金を取らず無料で、治療をなさっている素晴らしい人物なのである。
転生者というのは、ただ、先生ご自身がそのようにおっしゃっているからで、本当のことかどうかはわからないのである。
ただ、現れた時のいでたちが夏だというのに、白いコートのようなものを羽織っていらっしゃって、首からYのような形をした紐をぶらさげられており、その紐を胸に当てると音が聞こえる、という妙ちくりんなものを持っていらっしゃるから、皆、信じたのである。
ともかく、クリスティーヌはあらかじめ予約をしていたので、すんなりレッドベアー先生に診ていただくことができた。
思春期の頃から始まったこと、最初は女性特有の生理の日から始まり、その後、1か月に1回は必ずなるようになったことなどを、話す。それとめまいが起きると、吐き気と下痢が伴うことなどを付け加えたのである。
「たぶん三半規管が原因だろうな。耳の検査をするから、そこに座りなさい。」
冬にする耳当てのようなものをされる。中から音が聞こえてくると渡されたボタンのようなものを押す。
「聴力に異常はない。」
診断結果は、「良性突発性頭位めまい症」という病気だった。ほっといたら治る病気で女性ホルモンと関係があるらしい。先生の言われることの半分もわからないのであるが、要するにめまいがしたら安静にするのではなく、出来るだけ動き回るように、とのことだった。一応薬も2粒もらい、食後に飲むとよかろう。と言われたのである。
なんだかよくわからないが、治る。と断言されたので、ホッとしたのである。
そしてさらに先生は「メニエール」でなくて、よかったな。メニエール??って何?聞く勇気がなかったから、そのまま聞き流したのである。
とにかくめまいとしては、大したものではないらしい。今まで知らずに大げさに考えていたことが馬鹿らしくなったのである。
そして、伯父の居る王城に入ったのである。とりあえず、今日からここで泊めてもらおう。
一応、伯父さまの私室に挨拶に出向いたら、
「クリスティーヌ、よくぞ参った。聞けば、その方、森の中で聖女様に覚醒したらしいな。」
ああ、そういえば、そんなことあったかな?無我夢中で祈りを捧げたら、急にオオカミがおとなしくなったのだ。でも、聖女様はアンナさまだから、わたくしはおこぼれ聖女のはず。黙っていてもそんな大事にはならないだろう。
「大した事ないわよ。オジサマそれより、城の中を案内してくださらない?お母様のお部屋も見たいし。」
クリスティーヌが聖女のことをスルーしたので、それ以上陛下も言わず、普通の伯父と姪の関係に戻ったのだ。
その頃、ウエストリバレー国の大聖堂では、大騒ぎになっていたのだ。パン屋の娘と伯爵令嬢アンナ、どちらも水晶玉が反応しないのである。
残るはクリスティーヌ様だけが判定がまだなのである。そのクリスティーヌ様は、昨日、隣国に治療のため旅立たれたばかりで、当分、帰ってこられないらしい。いや、永遠にというべきかもしれない。
マスターグランド公爵に尋ねるも、
「娘は10日前にアルベルト殿下から婚約破棄されて、かなりショックを受けておりました。もう、この家には帰ってこないかもしれません。」
意地悪心から、マスターグランド公爵は、わざとそう言う。
「アンナ嬢と結婚なされば、よいではないか?」
「娘は涙を流して、『アンナ様と殿下がお幸せになるなら、それでいいの。』と申しておりました。」
司祭様は、「殿下との婚約破棄は残念であったが、それと聖女様との話は関係なかろう。来るべき国難は、聖女様のお力をお借りせねばおさまらない話だというのに。」
女神様から、「粗相なきように」と告げられたことをすっかり忘れているのだ。自分にもお咎めがあるかもしれないというのに呑気に、マスターグランド公爵を糾弾している。
「そんなこと言われましても、父として戻ってこいとは、言えません。」
「娘を傷つけたことは、まぎれもない事実ですから、この落とし前……いや、どうしてくれるのでしょうね?」
アルベルトは謹慎処分になったのである。愛していたのは、クリスティーヌだけだったのに、アンナの口車に乗ってしまったのだから、仕方がない。
そのアンナは、「だって、クリスティーヌが聖女と決まったわけではないんでしょう?だったら、まだわからないじゃないの?」
すっかり開き直っている。
司祭様と王家は、急ぎ、隣国に使者を立てるが、もしもというか?たぶん、いや、おそらく、絶対?クリスティーヌ様が聖女様だった場合、国際問題に発展しかねない!
ああ、そうですか。とすんなり、ネバーランドウエストが渡してくれると思えないからだ。
「困った。困った。大変なことになった。」
陛下は部屋の中をあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、うろうろなさっている。
「相手は隣国の王女様の姫君だぞ。外交問題に発展する!」
そして、指から血が出るほど、爪を噛みながら
「だから、あれほどクリスティーヌを蔑ろにするな!婚約破棄するな!と申し付けていただろうが!それをお前は勝手に。」
「アンナは自分が聖女様で間違いない。と言ったからで。でも婚約は聖女と決まってからとクリスにもアンナにも言ってある。」
「あんな蓮っ葉な女が聖女様であるわけなかろう。男爵夫人と浮気しているから、女を見る目が育たないのだ。クリスティーヌ様が聖女様だった場合、偽聖女として、処刑するからいいな。」
アルベルトは、アンナが処刑されようがどうなろうと関係がない。それより、最愛のクリスティーヌが隣国へ行ったきり、帰ってこないらしいという公爵の言葉にショックを受けている。
「俺が悪かった。アンナの口車に乗ってしまい、たとえ聖女様であろうとなくとも、愛しているのは、ただ一人クリスだけなのに、もっとクリスに愛を囁いておけば、良かったのだ。それに隣国の医者にだって一緒についていってやるべきだった。」
どんなに後悔しても、もう後の祭り。
ウエストリバレー国の使者が、隣国にたどり着いたのは、翌日の日暮れ時であった。医者のほうへ行くべきか?それとも王城か?迷った挙句、医者のほうが近かったので、医者から行くとレッドベアー医師にいきなり、怒鳴られる。
「儂の患者は聖女様だ。そんなこともわからない隣国の者に、聖女様は渡せられるか!」
やはり、クリスティーヌ様が聖女様だったのだ。それははっきりしたが、いったいいつ覚醒されたのだろうか?
ウエストリバレー国の中でなら、権利を主張できるが、ここネバーランドウエスト国の中であれば、絶望的である。
「一体、いつ?いつ、聖女様に覚醒されたのか、ご存知でしょうか?」
こういう時は、下手に出るに限る。
「あれは、ここに来る森の中でオオカミの群れに出くわしたと言っておったな。騎士団が先導して連れてきよったから、騎士団が闘っている最中だろう。」
レッドベアー医師には、酒を手土産に渡すと、上機嫌になり、クリスティーヌ様は王城に住んでおられることを教えてくれた。
使者は絶望する。やはり、出国されてから、覚醒されたのだ。
もう、どうしようもないが、王城に向かいクリスティーヌ様に会うだけは会うことにしたのだ。会ってくださるかどうかは、別物として。
王城に着いた頃には、すっかり夜も更けていたのだが、クリスティーヌ様は、会ってくださるという。
病は気からで、あれからすっかり体調がいいと言われる。
「大したことがないめまいでしたのよ。もう、本当、あれから嘘みたいに体が軽いの。もう嬉しくって。アルベルト様やアンナ様にお代わりございませんか?」
「実は、アンナ嬢は聖女様ではございませんでした。」
「あら、さぞかしお気を落とされているのでしょうね。」
「それで今日は、聖女様をお迎えに上がった次第でございます。」
「やっぱり……、なんだかこの国に来てから、急に聖女様と傅かれて……、わたくしはてっきり、アンナ様のおこぼれ聖女様なのかと思っておりましたのよ。でも、しばらくは治療のため、この国から出られませんわ。伯父上もゆっくりしていくように、と仰せですし。」
「そこをなんとか!お願いしますっ!来るべき、国難のためにどうしても聖女様のお力が必要になるのです。どうか、どうか。何卒!」
「うーん。どうしようかしらね。でも、聞くところによると、その国難は、ここネバーランドウエストにも、関係がある話らしいですわ。でしたら、この国で対処できることもあるかもしれないので、わたくしはここに残ります。それにもう、アルベルト様に会うのがつらいのです。心中察してくださいませ。」
確かに、若い娘が失恋したのだ。その相手がいる国へなど、帰りたくないであろう。使者はこれ以上の説得を諦め帰国の途につく。
帰ってから、事の仔細を王家に告げると、やっぱり怒られた。
「なぜ、もっと食い下がらない?体調がよくなったのなら、なおさらではないか?」
「私にも娘がいます。『アルベルト様がいらっしゃる国へ帰りたくない』という気持ちはわかります。そんなこと言われるのであれば、司祭様が行かれたらどうですか?女神様から、『粗相なきように』と言われるも、クリスティーヌ様を出国させてしまわれたのですから、司祭様にも責任の一端があるのではないですか?」
「な、な、なんだとぉ!それではまるで、儂がミスったかのように言うではないか?そもそも、アルベルト殿下が婚約破棄されたのがいけないのではないですか?それをこともあろうに儂の責任にするとは、何事か!聖女様を自ら手放しておいて、何の責任も取らないとは、いくら王太子殿下でもやっていいことと悪いことの分別ぐらい、おありでしょう。」
司祭様は、ご自分が責任を取るのが嫌で、王太子殿下に責任を擦り付ける。
それで、アルベルトは廃嫡されてしまったのだ。身から出た錆とはいえ、愛するクリスティーヌを失ったばかりか、王位継承権までとは、少々キツイ。
それもこれも、すべてアンナのせいだ。アルベルトはアンナに対する憎しみを募らせる。自分が聖女様を欲したからということは、すっかり抜け落ちているのだ。真にクリスティーヌを愛しているのなら、クリスティーヌが聖女かどうかなんて、些細な事なのに。
アンナは、偽聖女として、処刑されることが決まる。だが、アルベルトはただ、アンナを殺すだけでは飽き足らないのである。もっとこう、なぶり殺しをするようなやり方はないのであろうか?
俺の王としての人生を奪ったアンナが許せない!
一計を案じ、アンナは、両手両足を拘束され、思いっきり左右に引っ張られ、ちぎられてから、首を刎ねられることになったのだ。
それはもう大変な激痛と苦しみで、いくら、アンナが間違いだったと謝っても許してもらえなかったのである。
人間という生き物は、ここまで残酷なことができる恐ろしい生き物なのだ。このことをもしクリスティーヌが知れば、百年の恋も一瞬で冷めるだろう。
その頃のクリスティーヌといえば、もうすっかり病気が治り。元気!元気で毎日、レッドベアー先生のところで治療を手伝いに行っている。治癒魔法だけでなく……。
「いやぁ、姫さんの聖女様にこんなことまでしてもらって、首が繋がっていることがウソみたいだ。」
そうクリスティーヌは、レッドベアー先生の炊事、洗濯、掃除と身の回りの世話をしているのである。お付きの侍女がオロオロし、「そんなことは私がやります。」といくら申し出ても、クリスティーヌは止めないのである。
「だって、動けるってこんなに楽しいことだとは、思いませんでしたの。」
すっかりアクティヴになられた聖女様が誕生した瞬間です。
司祭様が昨夜、女神様のお告げを受けたとかで、他の神官に何やら、指示を飛ばしている。
「来年の今日、すなわち10月10日に18歳になる国内で生まれた娘を全部、調べるのだっ!」
「女神様が言われるには、その娘が地上に現れる1000年ぶりの聖女様で、未曽有の大災害から救ってくださる切り札となる娘だそうだ。その娘に粗相があってはならぬ、わが国だけではすまぬ災害らしい。」
司祭様が見たという夢のお告げの話は、すぐに王家にも伝えられる。王家には、10月10日生まれの娘の心当たりがあったのだ。それは、王太子アルベルトの婚約者で、公爵令嬢のクリスティーヌ・マスターグランド、ちょうど来年18歳になる。
しかし、この娘病気もちなのである。この娘の母は、隣国ネバーランドウエストの国王陛下の妹君で、我が国に留学中にマスターグランド公爵と恋に落ち、恋愛結婚して、生まれてできた娘である。たまたまアルベルトと同い年であったことから、家柄、血筋とも申し分がなく結ばれた婚約なのである。
クリスティーヌは、小さい頃は健康であったのだが、思春期に差し掛かった頃より、1か月に1度は必ず、めまいがしてぶっ倒れるようになったのだ。最初は、女性特有の日であったことから、病気ではないと考えられていたのだ。ところが、最近では、女の子の日に関係なくぶっ倒れるようになってしまう。薬師に見せても、原因不明とだけしかわからなかったのである。
隣国との関係から、余程の瑕疵がないかぎり、婚約破棄はできないのである。
しかし、ここへきて聖女様の可能性が出てきたので、なおさら婚約破棄はできない。
同じ誕生日、同い年の娘は他にもいるのだが、ひょっとして!? の可能性がある以上、余計、婚約破棄などできない。それに司祭様の話によると、女神様から粗相無き用にいたせ。とくぎを刺されている。
もしもクリスティーヌが聖女様であったとしたら、めまいごときで婚約破棄などしてきたら、どんな天罰が下るかわかったもんじゃない。そこのところを王太子のアルベルトにもキツク言っているのだが、アルベルトは浮気をしているのだ。それも男爵令夫人と……。仕方なく、その女に呑ませるように、と避妊薬を渡している。
閨ごとを指南するための女であったのだが、いつの間にか指南が高じて二人はデキてしまったのだ。本来なら、高級娼婦をあてがうところ、女の夫である男爵が推挙して、決まった者である。聞けば、男爵が自分はもうできないから、せめて妻を満足させてほしいとの推薦理由であったのだ。
王家としては、もしかしたら、クリスティーヌ様が聖女様であったとして、めまいで婚約破棄せずとも、アルベルトの浮気がバレて、隠し子までいたとなると言い訳のしようがない。
だから、子供ができないように細心の注意を払っているのだが……。
司祭様は来年の10月10日に18歳になる生娘を3人リストアップした。その中には、もちろん、クリスティーヌが入っている。
本当はもっといたのだが、聖女様に覚醒することは純潔の証だから、既に誰かの嫁になっているものなどは除外されたのである。クリスティーヌ以外の娘は。薬師による、処女チェックをされたものばかり。だから、この中にいることは間違いない。
司祭様もたいそうな家柄の血筋のクリスティーヌ様の股を広げて見せてくれとは、言いづらかったのである。
処女チェックをクリアした娘は、他にパン屋の娘と伯爵令嬢のアンナ・ドルビーンだけであった。
もう、アンナは聖女様気取りである。誰が見たって、いつでもどこでもぶっ倒れるクリスティーヌが聖女のわけがないと思う。
パン屋の娘は、ハナから諦めている。だから、親が勧める相手とさっさと結婚するようだが、司祭様は、その結婚に「待った」をかける。
そうこうしているうちに、年が明け、春が過ぎ、夏が過ぎ、瞬く間にもうすぐ10月である。
10月1日、クリスティーヌは、アルベルト様から王宮に呼び出されることになる。
話の内容は、だいたい想像がついたが、おとなしく従ったのである。
「公爵令嬢クリスティーヌ・マスターグランド、貴様との婚約は、今をもって破棄するものとする。」
アルベルト様の横には、アンナ様が勝ち誇った顔をされている。きっと、自分が聖女様だからと、王太子殿下に売り込んだのである。
「だから、今すぐ婚約破棄しないと、わたくしが聖女認定されたら、あっという間に縁談が殺到するわよ。そしたら、もう王太子殿下といえども、手の届かない存在になってしまうわ。いいのかしら?おかわいそうなアルベルト様、あんな病気もちの女にいつまでも引っ付かれて。」
「理由は、わかっているだろうと思うが、クリス(クリスティーヌの愛称)のめまいが原因ではない。俺は、聖女様と結婚したいのだ。どうみてもクリスは聖女様ではないだろう?ごめん。今すぐアンナとは婚約しない、アンナが聖女様に決まってから、婚約する。だからわかってくれ。」
アルベルトは決して、クリスティーヌのことを疎んじていたわけではなかったのだ。むしろ好意を寄せていたのだ。だが、周囲の王太子への無言の圧力、期待に応えねばという気持ちが強かっただけなのである。
幼い時は、アルベルトは、自分は国王の息子、対してクリスティーヌは、隣国王女の娘、同じような立場であるから、思いを共有することが多かったのである。だから、好意を抱き、出来れば早く病気が治ってほしいと思っていたのである。
男爵令夫人とのことは、あくまでもただの気晴らしで周囲が思っているほど、のめりこんではいないのである。
「承知いたしました。どうぞ、アンナ様とお幸せになってくださいませ。わたくしは、これから母の国で、治療を受けに行きます。聖女認定は欠席いたしますので、ご了承くださいませ。」
「うむ。それがよかろう。治るといいな。」
クリスティーヌは、10月9日、明日が誕生日という前の日に、隣国に旅立ったのである。
侍女と護衛の騎士、3人だけで途中国境を越えた隣国の森で、オオカミの群れに出会ってしまったのだ、騎士団がその群れと戦っているようであったところに運悪く通りがかってしまったのだ。
慌てず騒がず、クリスティーヌは、馬車の中で祈りを捧げると、突如、クリスティーヌの身体が金色に光り輝き続け、馬車も黄金色へと変わってしまったのである。
オオカミたちは皆、急におとなしくなり帰って行った。
「聖女様だ!」
ネバーランドウエスト第2騎士団長をしているシャガールは、すぐにクリスティーヌが乗っている馬車に近づき、跪くのである。
マスターグランドの騎士が、扉を開け、クリスティーヌが降りてくるとまだ、クリスティーヌは光り輝き続けていたのである。
「わたくしは、クリスティーヌ・マスターグランドと申します。母の昔の名前は、セレンティーヌ・ネバーランドウエストです。これより、レッドベアー先生のところへ参る途中でございます。」
「おお!王女殿下の御令嬢か!それでは、我々がレッドベアー先生のところまで、先導いたしましょうぞ。」
レッド。ベアー先生というのは、数年前、ネバーランドウエスト国に突然、現れた転生者で、たいそう見立てがいい先生なのだ。
レッドベアー先生は、貧しいものからはお金を取らず無料で、治療をなさっている素晴らしい人物なのである。
転生者というのは、ただ、先生ご自身がそのようにおっしゃっているからで、本当のことかどうかはわからないのである。
ただ、現れた時のいでたちが夏だというのに、白いコートのようなものを羽織っていらっしゃって、首からYのような形をした紐をぶらさげられており、その紐を胸に当てると音が聞こえる、という妙ちくりんなものを持っていらっしゃるから、皆、信じたのである。
ともかく、クリスティーヌはあらかじめ予約をしていたので、すんなりレッドベアー先生に診ていただくことができた。
思春期の頃から始まったこと、最初は女性特有の生理の日から始まり、その後、1か月に1回は必ずなるようになったことなどを、話す。それとめまいが起きると、吐き気と下痢が伴うことなどを付け加えたのである。
「たぶん三半規管が原因だろうな。耳の検査をするから、そこに座りなさい。」
冬にする耳当てのようなものをされる。中から音が聞こえてくると渡されたボタンのようなものを押す。
「聴力に異常はない。」
診断結果は、「良性突発性頭位めまい症」という病気だった。ほっといたら治る病気で女性ホルモンと関係があるらしい。先生の言われることの半分もわからないのであるが、要するにめまいがしたら安静にするのではなく、出来るだけ動き回るように、とのことだった。一応薬も2粒もらい、食後に飲むとよかろう。と言われたのである。
なんだかよくわからないが、治る。と断言されたので、ホッとしたのである。
そしてさらに先生は「メニエール」でなくて、よかったな。メニエール??って何?聞く勇気がなかったから、そのまま聞き流したのである。
とにかくめまいとしては、大したものではないらしい。今まで知らずに大げさに考えていたことが馬鹿らしくなったのである。
そして、伯父の居る王城に入ったのである。とりあえず、今日からここで泊めてもらおう。
一応、伯父さまの私室に挨拶に出向いたら、
「クリスティーヌ、よくぞ参った。聞けば、その方、森の中で聖女様に覚醒したらしいな。」
ああ、そういえば、そんなことあったかな?無我夢中で祈りを捧げたら、急にオオカミがおとなしくなったのだ。でも、聖女様はアンナさまだから、わたくしはおこぼれ聖女のはず。黙っていてもそんな大事にはならないだろう。
「大した事ないわよ。オジサマそれより、城の中を案内してくださらない?お母様のお部屋も見たいし。」
クリスティーヌが聖女のことをスルーしたので、それ以上陛下も言わず、普通の伯父と姪の関係に戻ったのだ。
その頃、ウエストリバレー国の大聖堂では、大騒ぎになっていたのだ。パン屋の娘と伯爵令嬢アンナ、どちらも水晶玉が反応しないのである。
残るはクリスティーヌ様だけが判定がまだなのである。そのクリスティーヌ様は、昨日、隣国に治療のため旅立たれたばかりで、当分、帰ってこられないらしい。いや、永遠にというべきかもしれない。
マスターグランド公爵に尋ねるも、
「娘は10日前にアルベルト殿下から婚約破棄されて、かなりショックを受けておりました。もう、この家には帰ってこないかもしれません。」
意地悪心から、マスターグランド公爵は、わざとそう言う。
「アンナ嬢と結婚なされば、よいではないか?」
「娘は涙を流して、『アンナ様と殿下がお幸せになるなら、それでいいの。』と申しておりました。」
司祭様は、「殿下との婚約破棄は残念であったが、それと聖女様との話は関係なかろう。来るべき国難は、聖女様のお力をお借りせねばおさまらない話だというのに。」
女神様から、「粗相なきように」と告げられたことをすっかり忘れているのだ。自分にもお咎めがあるかもしれないというのに呑気に、マスターグランド公爵を糾弾している。
「そんなこと言われましても、父として戻ってこいとは、言えません。」
「娘を傷つけたことは、まぎれもない事実ですから、この落とし前……いや、どうしてくれるのでしょうね?」
アルベルトは謹慎処分になったのである。愛していたのは、クリスティーヌだけだったのに、アンナの口車に乗ってしまったのだから、仕方がない。
そのアンナは、「だって、クリスティーヌが聖女と決まったわけではないんでしょう?だったら、まだわからないじゃないの?」
すっかり開き直っている。
司祭様と王家は、急ぎ、隣国に使者を立てるが、もしもというか?たぶん、いや、おそらく、絶対?クリスティーヌ様が聖女様だった場合、国際問題に発展しかねない!
ああ、そうですか。とすんなり、ネバーランドウエストが渡してくれると思えないからだ。
「困った。困った。大変なことになった。」
陛下は部屋の中をあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、うろうろなさっている。
「相手は隣国の王女様の姫君だぞ。外交問題に発展する!」
そして、指から血が出るほど、爪を噛みながら
「だから、あれほどクリスティーヌを蔑ろにするな!婚約破棄するな!と申し付けていただろうが!それをお前は勝手に。」
「アンナは自分が聖女様で間違いない。と言ったからで。でも婚約は聖女と決まってからとクリスにもアンナにも言ってある。」
「あんな蓮っ葉な女が聖女様であるわけなかろう。男爵夫人と浮気しているから、女を見る目が育たないのだ。クリスティーヌ様が聖女様だった場合、偽聖女として、処刑するからいいな。」
アルベルトは、アンナが処刑されようがどうなろうと関係がない。それより、最愛のクリスティーヌが隣国へ行ったきり、帰ってこないらしいという公爵の言葉にショックを受けている。
「俺が悪かった。アンナの口車に乗ってしまい、たとえ聖女様であろうとなくとも、愛しているのは、ただ一人クリスだけなのに、もっとクリスに愛を囁いておけば、良かったのだ。それに隣国の医者にだって一緒についていってやるべきだった。」
どんなに後悔しても、もう後の祭り。
ウエストリバレー国の使者が、隣国にたどり着いたのは、翌日の日暮れ時であった。医者のほうへ行くべきか?それとも王城か?迷った挙句、医者のほうが近かったので、医者から行くとレッドベアー医師にいきなり、怒鳴られる。
「儂の患者は聖女様だ。そんなこともわからない隣国の者に、聖女様は渡せられるか!」
やはり、クリスティーヌ様が聖女様だったのだ。それははっきりしたが、いったいいつ覚醒されたのだろうか?
ウエストリバレー国の中でなら、権利を主張できるが、ここネバーランドウエスト国の中であれば、絶望的である。
「一体、いつ?いつ、聖女様に覚醒されたのか、ご存知でしょうか?」
こういう時は、下手に出るに限る。
「あれは、ここに来る森の中でオオカミの群れに出くわしたと言っておったな。騎士団が先導して連れてきよったから、騎士団が闘っている最中だろう。」
レッドベアー医師には、酒を手土産に渡すと、上機嫌になり、クリスティーヌ様は王城に住んでおられることを教えてくれた。
使者は絶望する。やはり、出国されてから、覚醒されたのだ。
もう、どうしようもないが、王城に向かいクリスティーヌ様に会うだけは会うことにしたのだ。会ってくださるかどうかは、別物として。
王城に着いた頃には、すっかり夜も更けていたのだが、クリスティーヌ様は、会ってくださるという。
病は気からで、あれからすっかり体調がいいと言われる。
「大したことがないめまいでしたのよ。もう、本当、あれから嘘みたいに体が軽いの。もう嬉しくって。アルベルト様やアンナ様にお代わりございませんか?」
「実は、アンナ嬢は聖女様ではございませんでした。」
「あら、さぞかしお気を落とされているのでしょうね。」
「それで今日は、聖女様をお迎えに上がった次第でございます。」
「やっぱり……、なんだかこの国に来てから、急に聖女様と傅かれて……、わたくしはてっきり、アンナ様のおこぼれ聖女様なのかと思っておりましたのよ。でも、しばらくは治療のため、この国から出られませんわ。伯父上もゆっくりしていくように、と仰せですし。」
「そこをなんとか!お願いしますっ!来るべき、国難のためにどうしても聖女様のお力が必要になるのです。どうか、どうか。何卒!」
「うーん。どうしようかしらね。でも、聞くところによると、その国難は、ここネバーランドウエストにも、関係がある話らしいですわ。でしたら、この国で対処できることもあるかもしれないので、わたくしはここに残ります。それにもう、アルベルト様に会うのがつらいのです。心中察してくださいませ。」
確かに、若い娘が失恋したのだ。その相手がいる国へなど、帰りたくないであろう。使者はこれ以上の説得を諦め帰国の途につく。
帰ってから、事の仔細を王家に告げると、やっぱり怒られた。
「なぜ、もっと食い下がらない?体調がよくなったのなら、なおさらではないか?」
「私にも娘がいます。『アルベルト様がいらっしゃる国へ帰りたくない』という気持ちはわかります。そんなこと言われるのであれば、司祭様が行かれたらどうですか?女神様から、『粗相なきように』と言われるも、クリスティーヌ様を出国させてしまわれたのですから、司祭様にも責任の一端があるのではないですか?」
「な、な、なんだとぉ!それではまるで、儂がミスったかのように言うではないか?そもそも、アルベルト殿下が婚約破棄されたのがいけないのではないですか?それをこともあろうに儂の責任にするとは、何事か!聖女様を自ら手放しておいて、何の責任も取らないとは、いくら王太子殿下でもやっていいことと悪いことの分別ぐらい、おありでしょう。」
司祭様は、ご自分が責任を取るのが嫌で、王太子殿下に責任を擦り付ける。
それで、アルベルトは廃嫡されてしまったのだ。身から出た錆とはいえ、愛するクリスティーヌを失ったばかりか、王位継承権までとは、少々キツイ。
それもこれも、すべてアンナのせいだ。アルベルトはアンナに対する憎しみを募らせる。自分が聖女様を欲したからということは、すっかり抜け落ちているのだ。真にクリスティーヌを愛しているのなら、クリスティーヌが聖女かどうかなんて、些細な事なのに。
アンナは、偽聖女として、処刑されることが決まる。だが、アルベルトはただ、アンナを殺すだけでは飽き足らないのである。もっとこう、なぶり殺しをするようなやり方はないのであろうか?
俺の王としての人生を奪ったアンナが許せない!
一計を案じ、アンナは、両手両足を拘束され、思いっきり左右に引っ張られ、ちぎられてから、首を刎ねられることになったのだ。
それはもう大変な激痛と苦しみで、いくら、アンナが間違いだったと謝っても許してもらえなかったのである。
人間という生き物は、ここまで残酷なことができる恐ろしい生き物なのだ。このことをもしクリスティーヌが知れば、百年の恋も一瞬で冷めるだろう。
その頃のクリスティーヌといえば、もうすっかり病気が治り。元気!元気で毎日、レッドベアー先生のところで治療を手伝いに行っている。治癒魔法だけでなく……。
「いやぁ、姫さんの聖女様にこんなことまでしてもらって、首が繋がっていることがウソみたいだ。」
そうクリスティーヌは、レッドベアー先生の炊事、洗濯、掃除と身の回りの世話をしているのである。お付きの侍女がオロオロし、「そんなことは私がやります。」といくら申し出ても、クリスティーヌは止めないのである。
「だって、動けるってこんなに楽しいことだとは、思いませんでしたの。」
すっかりアクティヴになられた聖女様が誕生した瞬間です。
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