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聖女マーガレット

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 俺の名前は、アマテラス二世、名前から想像できると思うが、アマテラスの長男である。

 本当はもっとかっこいい名前にしてほしかったんだけど、仕方がない。人間の聖女だった俺の母が、次から次へと弟や妹を産むから、名前まで考える余裕がないのだ。すぐ下の弟なんか、アマテラスジュニアという。まぁ、それよりは、二世のほうがマシだと思い、辛抱しているのだが。

 最近、神界にまぶしい女が出入りしている。聞けば人間の聖女らしい。姉が拾ってきたらしいが、姉は自分の孫の嫁とするつもりでいるようだ。

 そうはさせてたまるか!サルトルは、俺が生まれる前?生まれた直後か?に一度結婚してやがる。それも相手は、人間の女だ。

 なんで、2度も人間の女を抱けるのだ?ずるいではないか?

 ということで、ここのところ俺は、マーガレット聖女様に猛アタックをしているのだ。なんたって、サルトルに比べ、俺のほうが若いからな、世の中、おふくろみたいに年寄りが好きな女ばかりではないのだ。若い俺のほうが、マーガレットと長く一緒にいられる。ということを殺し文句に謳う。

 それに、あいつがバツイチだぜ、俺はきれいさっぱりの初婚だと言えば、マーガレットの目は泳ぐ。

 「でも……わたくしは、サルトルさまと……。」

 「サルトルがプロポーズをちゃんとしたか?俺は、おふくろにだって、親父にだって、マーガレットのことを紹介し、君の親父さんにだって、きちんと挨拶に行ったよ。まぁ、親父さんは、君の気持ち次第だと言ったが。俺は、本気で君を愛している。好きだ。一生、君を守りぬく。俺と結婚してくれ。」

 俺はなりふり構わず、口説く。神の王である親父も気に入ってくれる子だ。使えるものは何でも使うで、神の特権である。虹の橋を歩いたり、龍宮へ行ったり、デートはかなり手の込んだところに行っている。

 意外と効き目があったのは、神殿だ。自宅の神殿にマーガレットを招き入れ、泊まらせた。黄金の風呂が良かったらしく、お肌がツルツルぴかぴかになったと喜んでいたのだ。

 これに慌てたのが、サルトルである。もうマーガレットのカラダを十分に満足させたから安心しきっていたのだ。

 最近、神界でアマテラス二世と一緒にいるところが、何人かの神に目撃されている。その噂もサルトルの耳に入ってくるようになったのだ。

 マーガレットを食事に誘ってもデートに誘っても、なかなか色よい返事がもらえないでいる。

 頼みの祖母ゴールデニアは、どっちの嫁になろうと構わないらしい。なんだって?サルトルの嫁にどうかって、調子のいいこと言っていたではないか?

 人間の女は3度本気で抱けば、自分の女になると言われている。サルトルはまだ一度も達成していないのである。

 最近は、アマテラス側のガードが固く、おいそれとマーガレットにも近づけない。マーガレットはアマテラスの神殿が気に入っているのである。

 こんなことなら、さっさと抱いて俺の女にしとけばよかったと悔やまれる。俺とアマテラス二世との年の差は約1000歳、1000歳の差は大きい。それだけ長くマーガレットの側にいられる時間が短いのだ。

 父アルキメデスは堅物で、相談に乗ってくれない。母ビクトリアは、父に従順だから、何を相談しても、「お父様が言われるように。」とだけしか、言ってくれない。

 圧倒的にサルトルが不利な立場になってしまったのである。

 何かこう一発逆転する方法はないか?

 何も思い浮かばない。

 俺はすきを狙って、マーガレットがアマテラス神殿に一人でいる時を狙う。そして無理やり……、運悪く王アマテラスに見つかってしまい、首根っこを押さえつけられ、スサノオと同じ無限牢に入れられてしまったのである。

 もうこれでただの人以下になってしまったのである。

 スサノオのように100万年入れられるかどうかは、わからない。ただ、父の王位継承権に影響が出るのは必至である。

 詰めが甘かったのである。

 サルトルは知らなかったのだが、マーガレットが最初に神の国へ来たときのとこを女神ゴールデニアに相談していたのだ。

 マーガレットはただ嬉しくて相談したのだけど、女神ゴールデニアは激怒したのである。結局、サルトルがしたことは、リチャードと同じで、マーガレットを弄んだのだから。

 それから、ゴールデニアは、マーガレットをサルトルから遠ざけたのである。まだ純潔は奪われていないようだから、でもまたいつ、サルトルが手出しをするかわからない。

 マーガレットには、ゴールデニア自らが聖女様の魔法を教えると言ったので、無邪気に喜んでいる。マーガレットが聖魔法を使えるようになるまでは時間稼ぎができるが、もうそろそろ限界というときに事件を起こしてくれたので、良かったのである。

 ゴールデニアはあらかじめ、父アマテラスにもそのことを言い、アマテラスはそれとなく目配せしていたのである。

 それで、今回未然に防げたので良かったとしか、言いようがない。

 当のマーガレットは何が起きたのかさえ分からないでいる。それでよいのだが、これ以上マーガレットの魂を傷つけることがあってはならない。もう二度とマーガレットの前にサルトルは現れないのであるから。

 それからすぐ、マーガレットの結婚が決まる。サルトルは遠いところへ行ったのだ、の説明に最初は涙を流していたマーガレットだったが、アマテラス二世が懸命に慰め、アマテラス二世を夫として選んだのだ。

 とどめはやはり、あのアマテラス神殿での住まい、歴代の人間の女は、あの神殿に住むことが夢みたいだったらしく、マーガレットもここで住んだらいいの言葉にイチコロだったのである。

 それからあれよあれよという間に、今日はマーガレットの結婚式となったのである。

 ヴァージンロードを父と歩むマーガレットは少し後ろめたいのである。だって、ヴァージンではないからと思っているから。それでも、アマテラス二世様が、全力でお守りいたします。と言ってくれたから、嬉しい言葉をいくつもくださったから、これからはアマテラス二世様だけを見て生きる決意をする。

 神の祝福は、義父のアマテラス王が全員の頭上に授与した。これで怪我や病気に苦しむことはない。

 アマテラス二世様は、ミラーボーン家へ養子に入ってくださることになったのである。昼間は、領地経営をなさりながら、夜は、マーガレットが待つ神界へ帰られる。

 ノースリバー国は、歓迎したのである。聖女様がお嫁に行かれたら、ノースリバー国はガタガタになり、滅んでしまうと心配してきた。そこへ神の王の長男が来てくれたら安心である。ミラーボーンだけでなく、将来は、ノースリバー国も継いでもらいたいと願っているぐらいだから。

 神の王が治める国は、平和で安泰になる。

 過去にもいくつか例があるというからには、ぜひとも我が国も治めてもらいたい、とノースリバー国王は本気で思っている。我が息子リチャードがあまりにも体たらくだったので、余計その考えに突っ走っている。

 アマテラス二世は、マーガレットが賛同してくれるなら、王になってもよいと考えている。

 当のマーガレットは、嫁いでからは、夫に従うという姿勢である。つくづく、いい嫁さんをもらったと思っている。従順で優しくおとなしい性格。父もニヤけているのは、人間の聖女様を嫁にしたからであろう。父はあの調子なら、まだまだ王を続けるつもりでいるから、アマテラス二世がノースリバー国を継ぐことは、そう遠くない未来であろう。

 ただし北の果ての大地なので、少々寒いところが珠にキズなのだが。
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