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第2章
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それから間もなくあっという間の一週間で、婚約発表の日が来たのである。
真理亜は、朝から美容院に行き、振袖を着て、婚約式に挑む。結納金は、約5000万円、それとは別にダイヤモンドの指輪が1.5カラット相当で5500万円、クラクラするものばかりで、大森家の面々は、ぶっ倒れそうである。
でも、これから親戚づきあいをしていくわけだから、いちいち卒倒もしていられない。
一森社長が、ウチの父に話しかける。
大森の父は、小さな商事会社を経営しているのだが、娘が大学を卒業するとき、自社に就職させず、他人の釜の飯を食ってこいとの思いから、菱友に入社させたのである。
「いやぁ、大森社長はご立派ですな。お嬢様を自社に就職させず、菱友へ入れるなんざ、並みの親では考え付きませんよ。どうしても自社だと手加減してしまい、倅に甘く接してしまいます。」
「娘は将来、嫁ぐ身なれば、今のうちから他人様の中へ入れとくほうが、社会性が身に着くと思いました。」
「私も明彦に、その判断をすればよかったのでしょうが、こいつはフラフラ頼りがない。お嬢様は見るからに、しっかりとされておりますから、それで婚約と結婚をせかしたのでございます。お嬢様がしっかり明彦の手綱を握ってくだされば、安心です。結婚後は、どうなさいますか真理亜さん?」
「どうとは?」
「わが社へ入社いただけないか?」
「菱友を退社して、三清へ?でございますか?」
「そうだ。ぜひともわが社へ来てもらいたい。いわば、ヘッドハンティングである。」
「なぜ?私は普通のOLでございます。そんな……ヘッドハンティングをされるような身分ではございませんし、……。」
「何を言っておられる明彦の手綱を取っておられるではないか。明彦は真理亜さんと出会うまでは、フラフラ頼りない男だったのだぞ。それが、真理亜さんと出会ってから、まともな男になってきた。どうか明彦のことを頼む。こいつに将来の社長の座を譲れるような男に仕込んでくれ。頼む。」
「私は、具体的に何をすればいいのでしょうか?」
「まずは、明彦の秘書としてサポートしてくれ。今までのOLの仕事とそう変わらないが、こいつの側で面倒を見てくれるだけでいい。秘書は、男性の社員がひとりついているが、子供ができるまでの腰かけとして、明彦の尻を叩いてくれ。」
「はぁ……。結婚前に菱友を寿退社するのですか?では、明日にでも出社して、上司に退職願を出すことにしましょう。」
「たぶん、それがいいと思うよ。それにしても親父、俺の評価、どれだけ低いんだよ。」
「日頃の行いが悪いからだ。」
家族全員で、大爆笑の中、婚約発表の場へ移る。
フラッシュが大量に焚かれ、驚くものの
「婚約指輪をハッキリ見せてください。」
「出会いのなれそめは?」
「プロポーズの言葉は?」
「お子様は何人欲しいですか?」
慣れない記者からの質問攻めでへとへとである。
芸能人の気持ちがわかるような?
翌日、出社といってもロッカールームへひとっ飛びして、自分の持ち場の机へ向かうと社内は騒然としていて、一目、生で真理亜を見ようとする社員であふれかえっていたのである。
上司に辞表を提出し、席に戻ろうとするも上司から呼び止められ
「大森君がきれいになった理由がわかったよ。三清の社長の御曹司がお相手なんて、驚いたな。どうやって、知り合ったの?」
「え……と、通勤途中で財布を拾ったことがきっかけで……。」
「正直者の頭に神宿る。だな、ったく。」
まぁ聖女に選ばれたぐらいだから、お人よしかも?
昼休みになっても、社内の真理亜フィーバーは収まらなかった。いつものようにカバンの中から、熱々の料理を出すのもはばかられるぐらい注目されているのである。仕方なく、冷めたお弁当を出すフリをして、カバンの中に手を突っ込んで、お弁当箱を出す。
同じ課の後輩の女の子が、ソワソワしながら、真理亜に近づいては、離れを繰り返す。だんだんイライラしてくる。
「何か用?」
「あ、ああ、ああ、あの……婚約者の方とどこで知り合われたのですか?やっぱり、合コンとか?」
また、この質問か?うんざりするけど、財布を拾っただけ。と答えると
「やっぱり、合コンとかじゃダメですよね?」
しょんぼりして、席へ戻る。
トイレへ行こうと席を立つと、康夫が待っていた。
「おめでとう。真理亜。君に嫌われるようなことをしてすまないと思っている。もしも三清の御曹司とうまくいかないことがあれば、いつでも俺のところへ戻っておいで。」
「おあいにく様!そんなことにはなりませんよ。」
クスリと笑って、本当の別れをした。
「じゃあ、もう二度と君には、会わないだろうが、幸せになってくれ。」
「ありがとう。康夫さん。」
午後になり、社長に呼ばれ、また退職の意思を伝える。
そして、なれそめを聞かれ、財布の一件を伝える二週間後の退職が決まるが、有給休暇を消化することになり、出社日は今日が最後となる。
翌日、三清商社のオフィスにいる。本当は有給消化中に、他社へ就職するわけにはいかないのだが、就職するわけではなく、明彦さんのお目付け役として、明彦さんの机の横に座ることになったわけである。
他に男性の秘書さんも一緒だから、明彦さんと、イチャイチャするわけにもいかず、手持ち無沙汰にしていたら、ファイリングをしてくれと頼まれたので、また集中して、せっせとお仕事していました。
お昼になり、外へ昼食を食べに行こうとする明彦さんを押しとどめて、魔法で、この前明彦さんと食べたレストランランチメニューを再現していく。
「すげー!」
そこに明彦さんパパから昼は真理亜さんと一緒にランチしようとお誘いがかかるが、私たちが食べているものを見て、絶句している。
「出前を取ったのか?うまそうだな、儂にも言ってくれればいいのに。」
「お父様の分もありましてよ。」
半信半疑で社長様は着席する。
目の前に次々と料理を出していく。
「こ、これは?」
明彦さんが真理亜を聖女として紹介し、魔法が使えることを言うと。
「なんと!素晴らしい嫁さんだな。他にどんな魔法が使える?」
根掘り葉掘り聞かれ、すべてを白状させられました。へへ
それから約1か月後、私たちは、正式に結婚式を迎え、大森の父は朝から泣きっぱなし。
その年の三清商社の決算では、過去最高利益をマークします。名実ともに真理亜はアゲマンとなり、三清の聖女様とうたわれるようになったのは、言うまでもないこと。
完
真理亜は、朝から美容院に行き、振袖を着て、婚約式に挑む。結納金は、約5000万円、それとは別にダイヤモンドの指輪が1.5カラット相当で5500万円、クラクラするものばかりで、大森家の面々は、ぶっ倒れそうである。
でも、これから親戚づきあいをしていくわけだから、いちいち卒倒もしていられない。
一森社長が、ウチの父に話しかける。
大森の父は、小さな商事会社を経営しているのだが、娘が大学を卒業するとき、自社に就職させず、他人の釜の飯を食ってこいとの思いから、菱友に入社させたのである。
「いやぁ、大森社長はご立派ですな。お嬢様を自社に就職させず、菱友へ入れるなんざ、並みの親では考え付きませんよ。どうしても自社だと手加減してしまい、倅に甘く接してしまいます。」
「娘は将来、嫁ぐ身なれば、今のうちから他人様の中へ入れとくほうが、社会性が身に着くと思いました。」
「私も明彦に、その判断をすればよかったのでしょうが、こいつはフラフラ頼りがない。お嬢様は見るからに、しっかりとされておりますから、それで婚約と結婚をせかしたのでございます。お嬢様がしっかり明彦の手綱を握ってくだされば、安心です。結婚後は、どうなさいますか真理亜さん?」
「どうとは?」
「わが社へ入社いただけないか?」
「菱友を退社して、三清へ?でございますか?」
「そうだ。ぜひともわが社へ来てもらいたい。いわば、ヘッドハンティングである。」
「なぜ?私は普通のOLでございます。そんな……ヘッドハンティングをされるような身分ではございませんし、……。」
「何を言っておられる明彦の手綱を取っておられるではないか。明彦は真理亜さんと出会うまでは、フラフラ頼りない男だったのだぞ。それが、真理亜さんと出会ってから、まともな男になってきた。どうか明彦のことを頼む。こいつに将来の社長の座を譲れるような男に仕込んでくれ。頼む。」
「私は、具体的に何をすればいいのでしょうか?」
「まずは、明彦の秘書としてサポートしてくれ。今までのOLの仕事とそう変わらないが、こいつの側で面倒を見てくれるだけでいい。秘書は、男性の社員がひとりついているが、子供ができるまでの腰かけとして、明彦の尻を叩いてくれ。」
「はぁ……。結婚前に菱友を寿退社するのですか?では、明日にでも出社して、上司に退職願を出すことにしましょう。」
「たぶん、それがいいと思うよ。それにしても親父、俺の評価、どれだけ低いんだよ。」
「日頃の行いが悪いからだ。」
家族全員で、大爆笑の中、婚約発表の場へ移る。
フラッシュが大量に焚かれ、驚くものの
「婚約指輪をハッキリ見せてください。」
「出会いのなれそめは?」
「プロポーズの言葉は?」
「お子様は何人欲しいですか?」
慣れない記者からの質問攻めでへとへとである。
芸能人の気持ちがわかるような?
翌日、出社といってもロッカールームへひとっ飛びして、自分の持ち場の机へ向かうと社内は騒然としていて、一目、生で真理亜を見ようとする社員であふれかえっていたのである。
上司に辞表を提出し、席に戻ろうとするも上司から呼び止められ
「大森君がきれいになった理由がわかったよ。三清の社長の御曹司がお相手なんて、驚いたな。どうやって、知り合ったの?」
「え……と、通勤途中で財布を拾ったことがきっかけで……。」
「正直者の頭に神宿る。だな、ったく。」
まぁ聖女に選ばれたぐらいだから、お人よしかも?
昼休みになっても、社内の真理亜フィーバーは収まらなかった。いつものようにカバンの中から、熱々の料理を出すのもはばかられるぐらい注目されているのである。仕方なく、冷めたお弁当を出すフリをして、カバンの中に手を突っ込んで、お弁当箱を出す。
同じ課の後輩の女の子が、ソワソワしながら、真理亜に近づいては、離れを繰り返す。だんだんイライラしてくる。
「何か用?」
「あ、ああ、ああ、あの……婚約者の方とどこで知り合われたのですか?やっぱり、合コンとか?」
また、この質問か?うんざりするけど、財布を拾っただけ。と答えると
「やっぱり、合コンとかじゃダメですよね?」
しょんぼりして、席へ戻る。
トイレへ行こうと席を立つと、康夫が待っていた。
「おめでとう。真理亜。君に嫌われるようなことをしてすまないと思っている。もしも三清の御曹司とうまくいかないことがあれば、いつでも俺のところへ戻っておいで。」
「おあいにく様!そんなことにはなりませんよ。」
クスリと笑って、本当の別れをした。
「じゃあ、もう二度と君には、会わないだろうが、幸せになってくれ。」
「ありがとう。康夫さん。」
午後になり、社長に呼ばれ、また退職の意思を伝える。
そして、なれそめを聞かれ、財布の一件を伝える二週間後の退職が決まるが、有給休暇を消化することになり、出社日は今日が最後となる。
翌日、三清商社のオフィスにいる。本当は有給消化中に、他社へ就職するわけにはいかないのだが、就職するわけではなく、明彦さんのお目付け役として、明彦さんの机の横に座ることになったわけである。
他に男性の秘書さんも一緒だから、明彦さんと、イチャイチャするわけにもいかず、手持ち無沙汰にしていたら、ファイリングをしてくれと頼まれたので、また集中して、せっせとお仕事していました。
お昼になり、外へ昼食を食べに行こうとする明彦さんを押しとどめて、魔法で、この前明彦さんと食べたレストランランチメニューを再現していく。
「すげー!」
そこに明彦さんパパから昼は真理亜さんと一緒にランチしようとお誘いがかかるが、私たちが食べているものを見て、絶句している。
「出前を取ったのか?うまそうだな、儂にも言ってくれればいいのに。」
「お父様の分もありましてよ。」
半信半疑で社長様は着席する。
目の前に次々と料理を出していく。
「こ、これは?」
明彦さんが真理亜を聖女として紹介し、魔法が使えることを言うと。
「なんと!素晴らしい嫁さんだな。他にどんな魔法が使える?」
根掘り葉掘り聞かれ、すべてを白状させられました。へへ
それから約1か月後、私たちは、正式に結婚式を迎え、大森の父は朝から泣きっぱなし。
その年の三清商社の決算では、過去最高利益をマークします。名実ともに真理亜はアゲマンとなり、三清の聖女様とうたわれるようになったのは、言うまでもないこと。
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