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1.聖女セシリア
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とある学園での卒業記念パーティでのこと、婚約者である王太子殿下から
「公爵令嬢セシリア・ガーネスト、貴様は聖女様と謳われながら、学園で聖女様とも思えぬ所業を為した。よって、私との婚約破棄をこの場にて、させてもらおう。」
「え?聖女とも思えぬ所業とは……、いったい何のことでございますか?わたくしには身に覚えがございませんわ。」
「大勢の男どもを侍らせ、連日淫らな行為に耽っていたと聞く。」
「ええーっ!それは何かの間違いでございます。わたくしには、何のことだかさっぱりわかりませんわ。」
王太子は、指をパチンと鳴らすと、たちまち会場のスクリーンに証拠映像が流れ始めたのだが、写っている女性は、明らかにセシリアとは、違う髪色の女性。
セシリアは、月の光を集めたような銀髪で、聖女様に覚醒してからこの髪色になってしまったのだ。
ガーネスト家は、代々ゴールドブロンドの家系で、それ以外の髪色が生まれてくることはまずない。セシリアも生まれてきたときは、ゴールドブロンドであったのだが、聖女様に覚醒してからは、ずっと銀髪のままなのだ。
この国、いやこの世界では、聖女様に覚醒すると、まず髪色が変わる。それに伴い瞳の色も銀色に変わる場合が多い。
一般人がなりすましの偽聖女を名乗る者が多いことから、神界で、そのような処置がとられたことに久しい。
そして聖女様の銀髪は、高名な魔導士でも、この色は再現不能であることから、銀髪は聖女様を示す唯一無二の色とされている。
「この女性が、わたくしだと思われる根拠はいかに?」
「周りの男たちがセシリアと呼んでいるのがわからぬか?」
「ハァっ?……、髪の色がブラウンでございますわ。それを何故?」
「ええぃっ!髪の色などどうでもよいのだ。お前が浮気したということに変わりがなかろう。」
「そんな無体な……、わかりましたわ。婚約破棄はお受けいたしますわ。わたくしは浮気などしておりませんが、そうまでしてもわたくしが浮気したということにしたいのなら、どうぞご勝手に。では、これにてごきげんよう。」
セシリアは跪き、何やら呪文を唱え始める。結界を解くためと……
「待て。それは何をしている。」
「誓約魔法を解いているのでございます。婚約した時、わたくしたち二人は、命と引き換えに誓約魔法をしたではございませんか?どちらか一方が、他者と交わるとき、その命が終わるという条件で、ですからわたくしが殿下以外の殿方を侍らすことなど不可能だということですわ。ついでに、もう一つの結界魔法も解いて差し上げましたわ。もう王太子殿下の婚約者ではございませんもの。当然でございましょう。」
「「「「「!!!!!」」」」」
「いやいや結界はまた別者だろう。この国の聖女様なのだから、この国の安全を守る義務があるだろう。」
「でも、聖女にあるまじき所業とおっしゃられ、浮気したと言われてまで守る義務などございませんわ。」
「おい。話が違うではないか!セシリアと婚約破棄したら、王位をすぐに譲ってもらえるというから、セシリアにはあとで謝ればいいと言ったから。」
どうやら、王太子殿下は、宰相の息子に唆されたみたい。
婚約破棄騒動を起こして、謝罪で済むと思っているところが王太子の考えの甘いところ。
冤罪の捏造までやらかしといて、そんな謝罪で済むわけがない。
そこへ病身のセシリアの母が引きずり出される。
「聖女セシリア、今すぐ結界魔法を張りなおせ!さもなくば、お前の母親をこの場で切って捨てる。」
驚いた顔で王太子殿下が
「おい。そこまでする必要があるか?俺はセシリアと結婚出来ればそれでいい。」
先ほどまでと話が違っている。
婚約破棄だと言い出したのは、王太子殿下ご本人なのですよ。
「結界を解除されたら、ひとたまりもありませんよ。殿下、もう腹を括ってください。我々の夢の国を作ることに賛同してくださったではありませんか?」
「ああ。セシリアと二人きりになれるのならと、でもセシリアを怒らせてしまったではないか!どうするつもりだ!」
「殿下も、男なら婚約者の横っ面でも叩いて、言うことを聞かせなさい!」
「え?美しいセシリアに暴力なんて、揮えない!」
「ええい、意気地なし!」
きゃぁっ!
セシリアの母が剣で刺される。
「セシリア、お逃げなさい。この人たちは狂っている。」
そのままセシリアの母はこと切れてしまう。
ガーネスト公爵は、国王陛下の傍にいながら事の成り行きを見守っていたのだが、妻が切られたことで驚いて、妻の傍に駆け寄ったところを後ろから刺された。
「おのれ!卑怯な……。」
さすがに母と父が目の前で刺殺された現場を見てしまったセシリアは、足がすくむ。
「次はセシリアを手籠めにしろ!セシリアさえ手に入れば、殿下などどうでもよい。」
その言葉をきっかけに、セシリアに向かって何人もの男たちが突進してくる。
国王陛下は、これまでの出来事に呆然自失状態であったのだが、さすがに国の宝とでもいうべき聖女様が襲われるという事態になり、ようやく我に返り、衛兵にクーデターを起こした首謀者を捕まえさせようとするが、何かのはずみでセシリアは命を落としてしまう。
セシリアの亡骸を抱え、大泣きしていたのは王太子殿下ではなく、どこからか現れた古代人のような風体の幽霊のような神ラファエルであった。
「おのれ!よくもわが愛するセシリアを殺害したな。我は、この世界を司る神である。」
突如、現れたその男に竜巻を起こされ、卒業パーティは見るも無残な状態になる。
王太子殿下もどこかに吹き飛ばされ、頭から血を流して倒れている。
「セシリアがいない世界など、必要がない。存在する価値すら見えない。だから、この世界は消し去ってやろう。」
そのまま世界は、ブラックホールの中へと消えていった。
「公爵令嬢セシリア・ガーネスト、貴様は聖女様と謳われながら、学園で聖女様とも思えぬ所業を為した。よって、私との婚約破棄をこの場にて、させてもらおう。」
「え?聖女とも思えぬ所業とは……、いったい何のことでございますか?わたくしには身に覚えがございませんわ。」
「大勢の男どもを侍らせ、連日淫らな行為に耽っていたと聞く。」
「ええーっ!それは何かの間違いでございます。わたくしには、何のことだかさっぱりわかりませんわ。」
王太子は、指をパチンと鳴らすと、たちまち会場のスクリーンに証拠映像が流れ始めたのだが、写っている女性は、明らかにセシリアとは、違う髪色の女性。
セシリアは、月の光を集めたような銀髪で、聖女様に覚醒してからこの髪色になってしまったのだ。
ガーネスト家は、代々ゴールドブロンドの家系で、それ以外の髪色が生まれてくることはまずない。セシリアも生まれてきたときは、ゴールドブロンドであったのだが、聖女様に覚醒してからは、ずっと銀髪のままなのだ。
この国、いやこの世界では、聖女様に覚醒すると、まず髪色が変わる。それに伴い瞳の色も銀色に変わる場合が多い。
一般人がなりすましの偽聖女を名乗る者が多いことから、神界で、そのような処置がとられたことに久しい。
そして聖女様の銀髪は、高名な魔導士でも、この色は再現不能であることから、銀髪は聖女様を示す唯一無二の色とされている。
「この女性が、わたくしだと思われる根拠はいかに?」
「周りの男たちがセシリアと呼んでいるのがわからぬか?」
「ハァっ?……、髪の色がブラウンでございますわ。それを何故?」
「ええぃっ!髪の色などどうでもよいのだ。お前が浮気したということに変わりがなかろう。」
「そんな無体な……、わかりましたわ。婚約破棄はお受けいたしますわ。わたくしは浮気などしておりませんが、そうまでしてもわたくしが浮気したということにしたいのなら、どうぞご勝手に。では、これにてごきげんよう。」
セシリアは跪き、何やら呪文を唱え始める。結界を解くためと……
「待て。それは何をしている。」
「誓約魔法を解いているのでございます。婚約した時、わたくしたち二人は、命と引き換えに誓約魔法をしたではございませんか?どちらか一方が、他者と交わるとき、その命が終わるという条件で、ですからわたくしが殿下以外の殿方を侍らすことなど不可能だということですわ。ついでに、もう一つの結界魔法も解いて差し上げましたわ。もう王太子殿下の婚約者ではございませんもの。当然でございましょう。」
「「「「「!!!!!」」」」」
「いやいや結界はまた別者だろう。この国の聖女様なのだから、この国の安全を守る義務があるだろう。」
「でも、聖女にあるまじき所業とおっしゃられ、浮気したと言われてまで守る義務などございませんわ。」
「おい。話が違うではないか!セシリアと婚約破棄したら、王位をすぐに譲ってもらえるというから、セシリアにはあとで謝ればいいと言ったから。」
どうやら、王太子殿下は、宰相の息子に唆されたみたい。
婚約破棄騒動を起こして、謝罪で済むと思っているところが王太子の考えの甘いところ。
冤罪の捏造までやらかしといて、そんな謝罪で済むわけがない。
そこへ病身のセシリアの母が引きずり出される。
「聖女セシリア、今すぐ結界魔法を張りなおせ!さもなくば、お前の母親をこの場で切って捨てる。」
驚いた顔で王太子殿下が
「おい。そこまでする必要があるか?俺はセシリアと結婚出来ればそれでいい。」
先ほどまでと話が違っている。
婚約破棄だと言い出したのは、王太子殿下ご本人なのですよ。
「結界を解除されたら、ひとたまりもありませんよ。殿下、もう腹を括ってください。我々の夢の国を作ることに賛同してくださったではありませんか?」
「ああ。セシリアと二人きりになれるのならと、でもセシリアを怒らせてしまったではないか!どうするつもりだ!」
「殿下も、男なら婚約者の横っ面でも叩いて、言うことを聞かせなさい!」
「え?美しいセシリアに暴力なんて、揮えない!」
「ええい、意気地なし!」
きゃぁっ!
セシリアの母が剣で刺される。
「セシリア、お逃げなさい。この人たちは狂っている。」
そのままセシリアの母はこと切れてしまう。
ガーネスト公爵は、国王陛下の傍にいながら事の成り行きを見守っていたのだが、妻が切られたことで驚いて、妻の傍に駆け寄ったところを後ろから刺された。
「おのれ!卑怯な……。」
さすがに母と父が目の前で刺殺された現場を見てしまったセシリアは、足がすくむ。
「次はセシリアを手籠めにしろ!セシリアさえ手に入れば、殿下などどうでもよい。」
その言葉をきっかけに、セシリアに向かって何人もの男たちが突進してくる。
国王陛下は、これまでの出来事に呆然自失状態であったのだが、さすがに国の宝とでもいうべき聖女様が襲われるという事態になり、ようやく我に返り、衛兵にクーデターを起こした首謀者を捕まえさせようとするが、何かのはずみでセシリアは命を落としてしまう。
セシリアの亡骸を抱え、大泣きしていたのは王太子殿下ではなく、どこからか現れた古代人のような風体の幽霊のような神ラファエルであった。
「おのれ!よくもわが愛するセシリアを殺害したな。我は、この世界を司る神である。」
突如、現れたその男に竜巻を起こされ、卒業パーティは見るも無残な状態になる。
王太子殿下もどこかに吹き飛ばされ、頭から血を流して倒れている。
「セシリアがいない世界など、必要がない。存在する価値すら見えない。だから、この世界は消し去ってやろう。」
そのまま世界は、ブラックホールの中へと消えていった。
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