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セレンティーヌがすべてを知ったのは、ドーランド王家が滅んだ後のことであったのだ。
つくづくバカな戦争をして、自分で自分の首を絞めたドーランド、姉マリエンティーヌと静かに結婚生活を送ればよかったものを、聖女と結婚したいと願うからこういうことになったのである。
そして姉を疎んじないで、もっと大切にしてほしかった。そうすれば、姉も妹に嫉妬せず、青いドレスしか着れなくても、幸せに過ごせただろう。
セレンティーヌにとって、ドーランドは祖母の国ではあり母国ではあったが、愛着を持てる国ではなかったのである。
カナヘート国は、ドーランドの国内をくまなく探しても、結局聖女様の手掛かりすら得られなかったのである。
セント・クリスティーヌ修道院長も、行ったことがある場所にしか転移できないため、聖女様のお姿をイメージしても、そこへは飛べないのである。そこが聖女様と一般人との違いである。
ということで、セレンティーヌの安穏とした生活は続く。
オランドで聖女だと素性がバレたことは致し方ないが、それ以外はすべて希望通りである。
オランド王家も、カナヘートとドーランドの戦争のいきさつを重々承知しているから、決して聖女様の所在を明らかにしていない。うっかり喋って、いらぬ誤解や恨みを買ってはたまらないから。
セレンティーヌは、普通の少女としての生活を満喫する。派手な歓迎式典などない。白い結婚とはいえ、一度離婚しているから初婚でないことから、縁談も来ない。というよりは、聖女様の行方を秘密にしているからといったほうが早いのかもしれないが、とにかく、縁談も来ないのである。
静かな生活を満喫しているうちに、3年が過ぎていく。
オランド国は、周辺各国から、何も努力していないのに、繁栄していることから、しだいに疑いの目を向けられるようになっていく。
そしてついに、聖女様の存在が明かされた途端、縁談が山のように殺到し始めたのである。
最初は、カナヘート国の王子様から、「なぜ、3年半前に突然、姿を消されたのか?」縁談話よりも先に、一番にカナヘートからいなくなったことを責められたのである。
理由を言わず、バーナード公爵は、その縁談を断る。もちろんセレンティーヌも同意の上である。
セレンティーヌがどこへ行こうとセレンティーヌの自由であるはず、それを3年も経ってからまだ言うか?しつこさからみれば、ドーランド国と負けず劣らずである。そんなところの王子様なんて、ごめん被ります。
片っ端から来る縁談、来る縁談を断りまくっていたら気が付けば、姉が死んだ年齢になっていたのである。いつの間に?
このままでは、行き遅れる?でも一度結婚した身だから、行かず後家にはならないはず。でも、内心少々焦りが出てくる。
父のバーナード公爵は、「セレンティーヌは一生お嫁に行かなくていいよ。」などとのんきなことを言っている。
理由は、ベンジャミンのことで苦労したのだからという親心だけに、反論できずにいる。
でも今度こそ、愛し愛される関係を築きたいセレンティーヌは、もう行かず後家並みの形相で焦りまくっているのである。
ある日、そんなセレンティーヌの元へ1通のダンスパーティの招待状が届く。王都の公爵家主催のダンパで、その実態は乱交パーティらしい。月に1回、セレンティーヌの元を訪ねる聖職者から聞いた。
未婚の男女が気に入った体つきの相手を求めるためのダンスパーティ、最近は、もう相手に食傷気味なので、聖女様のところにまで、招待状が届いたらしい。
セレンティーヌは、微笑みながら、招待状を破り捨てたのである。
また、ベンジャミンのような変態に目をつけられかねないから。どこかにイイ男はいないのか?そもそも、聖女であることを隠すためにオランド国に来たのに、軍を差し向けられ、うっかり聖女の力を見せてしまったことから、こういう事態になったのである。
かといって、どこか他国に移住しようにも、また同じプロセスが待っているような気がする。
聖女を辞められればいいのだが、一度覚醒してしまった聖女様は、結婚しようが、愛欲に溺れようが、子供を100人産もうが二度と普通の女性に戻れないのである。
ええい、もうこうなれば、縁談片っ端から受けて、真に愛する男性が見つかるまで、結婚と離婚を繰り返してやろうか?それでも見つからなければ、絶望しかない?
公爵邸のダンスパーティを欠席したセレンティーヌの元へ、そのダンパを主催している公爵令息のアラン・リードが訪れたのは、それから間もなくのことであったのである。
アラン・リードはベンジャミンと似たようなタイプの男性であった。変態かどうかまではわからないが、なんというか俺様的な雰囲気を漂わせて、
「なぜ?聖女様に招待状を差し上げたのに、返事どころか無視して、欠席されてしまわれるとは、いかなる料簡かお聞かせ願いたいと思い、参上した。」
すごい剣幕で捲し立てられても……。ただ、困惑の色は隠せない。
つくづくバカな戦争をして、自分で自分の首を絞めたドーランド、姉マリエンティーヌと静かに結婚生活を送ればよかったものを、聖女と結婚したいと願うからこういうことになったのである。
そして姉を疎んじないで、もっと大切にしてほしかった。そうすれば、姉も妹に嫉妬せず、青いドレスしか着れなくても、幸せに過ごせただろう。
セレンティーヌにとって、ドーランドは祖母の国ではあり母国ではあったが、愛着を持てる国ではなかったのである。
カナヘート国は、ドーランドの国内をくまなく探しても、結局聖女様の手掛かりすら得られなかったのである。
セント・クリスティーヌ修道院長も、行ったことがある場所にしか転移できないため、聖女様のお姿をイメージしても、そこへは飛べないのである。そこが聖女様と一般人との違いである。
ということで、セレンティーヌの安穏とした生活は続く。
オランドで聖女だと素性がバレたことは致し方ないが、それ以外はすべて希望通りである。
オランド王家も、カナヘートとドーランドの戦争のいきさつを重々承知しているから、決して聖女様の所在を明らかにしていない。うっかり喋って、いらぬ誤解や恨みを買ってはたまらないから。
セレンティーヌは、普通の少女としての生活を満喫する。派手な歓迎式典などない。白い結婚とはいえ、一度離婚しているから初婚でないことから、縁談も来ない。というよりは、聖女様の行方を秘密にしているからといったほうが早いのかもしれないが、とにかく、縁談も来ないのである。
静かな生活を満喫しているうちに、3年が過ぎていく。
オランド国は、周辺各国から、何も努力していないのに、繁栄していることから、しだいに疑いの目を向けられるようになっていく。
そしてついに、聖女様の存在が明かされた途端、縁談が山のように殺到し始めたのである。
最初は、カナヘート国の王子様から、「なぜ、3年半前に突然、姿を消されたのか?」縁談話よりも先に、一番にカナヘートからいなくなったことを責められたのである。
理由を言わず、バーナード公爵は、その縁談を断る。もちろんセレンティーヌも同意の上である。
セレンティーヌがどこへ行こうとセレンティーヌの自由であるはず、それを3年も経ってからまだ言うか?しつこさからみれば、ドーランド国と負けず劣らずである。そんなところの王子様なんて、ごめん被ります。
片っ端から来る縁談、来る縁談を断りまくっていたら気が付けば、姉が死んだ年齢になっていたのである。いつの間に?
このままでは、行き遅れる?でも一度結婚した身だから、行かず後家にはならないはず。でも、内心少々焦りが出てくる。
父のバーナード公爵は、「セレンティーヌは一生お嫁に行かなくていいよ。」などとのんきなことを言っている。
理由は、ベンジャミンのことで苦労したのだからという親心だけに、反論できずにいる。
でも今度こそ、愛し愛される関係を築きたいセレンティーヌは、もう行かず後家並みの形相で焦りまくっているのである。
ある日、そんなセレンティーヌの元へ1通のダンスパーティの招待状が届く。王都の公爵家主催のダンパで、その実態は乱交パーティらしい。月に1回、セレンティーヌの元を訪ねる聖職者から聞いた。
未婚の男女が気に入った体つきの相手を求めるためのダンスパーティ、最近は、もう相手に食傷気味なので、聖女様のところにまで、招待状が届いたらしい。
セレンティーヌは、微笑みながら、招待状を破り捨てたのである。
また、ベンジャミンのような変態に目をつけられかねないから。どこかにイイ男はいないのか?そもそも、聖女であることを隠すためにオランド国に来たのに、軍を差し向けられ、うっかり聖女の力を見せてしまったことから、こういう事態になったのである。
かといって、どこか他国に移住しようにも、また同じプロセスが待っているような気がする。
聖女を辞められればいいのだが、一度覚醒してしまった聖女様は、結婚しようが、愛欲に溺れようが、子供を100人産もうが二度と普通の女性に戻れないのである。
ええい、もうこうなれば、縁談片っ端から受けて、真に愛する男性が見つかるまで、結婚と離婚を繰り返してやろうか?それでも見つからなければ、絶望しかない?
公爵邸のダンスパーティを欠席したセレンティーヌの元へ、そのダンパを主催している公爵令息のアラン・リードが訪れたのは、それから間もなくのことであったのである。
アラン・リードはベンジャミンと似たようなタイプの男性であった。変態かどうかまではわからないが、なんというか俺様的な雰囲気を漂わせて、
「なぜ?聖女様に招待状を差し上げたのに、返事どころか無視して、欠席されてしまわれるとは、いかなる料簡かお聞かせ願いたいと思い、参上した。」
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