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 「なにぃ!我が軍ばかりかマゼラン軍まで、全滅しただと?なぜだ?あんなアンドロメダごときの弱小国が、いつの間に戦力をつけた?和平交渉をしろ!」

 「はっ!しかし、何をもって、交渉材料がありません。我が国の大半の男は、戦死しております。」

 「うぅぅぅ。では、金か?我が国の金庫にどれぐらいの金が残っている?」

 「戦死した者の遺族への補償金にあてて、ほとんど金庫に金がありません。」

 「マゼラン国は、どのようにしておる?まさか?あの国は、もう和平交渉を済ませておるのか?」

 その頃、マゼラン国も、和平交渉の材料が見つからず窮している。差し出すものがないのである。軍は全滅し、今、アンドロメダが侵攻してきたら、女子供しかいないので、負けてしまう。

 「そうだ!聖女様の卒業祝いと称して、大きな木馬を贈ろうではないか?木馬の中に近衛騎士を仕込ませ、毒の入った酒とともに、贈ろう。」

 「しかし、もしも近衛騎士までもが全滅すると、我がマゼラン国は丸裸になってしまいますぞ。それに、女性に木馬というのはいかがなものでしょうか?」

 「ええぃ!何でもいいのだ、中に人が入れるぐらいのものであれば。近衛騎士は、精鋭部隊だ。奴らが負けるわけがなかろう。急げ!大型の木馬を作るのだ。」

 「はっ!」

 「うひひ。儂はまだ聖女様の味見を諦めてはおらぬぞ。」

 二つの国も後継ぎの王子を失ってしまったというのに、行方不明ぐらいにしか思っていない。事態は、さらに深刻な方向へ進む。

 マゼラン国の木馬が完成する。パッと見だけ、木馬に見えればいいのである。中は、騎士たちが窒息しない程度の空気穴を開けておけばいいのだから。

 木馬に100名の近衛騎士を潜ませ、アンドロメダの国境に向かわせる。またしても聖女様が作られた結界に阻まれ、中に入れず、木馬もろとも100㎞以上はじき飛ばされ、木っ端みじんに壊れてしまう。中の騎士は、大半が即死で、数名の虫の息の者が残っているが、とても事情を聴ける状態ではない。

 毒入りの酒樽も同様に弾き飛ばされ、周囲の家畜にかかったため、家畜も全滅してしまったのだ。

 結界にぶつかる対象が大きければ、大きいほど弾く衝撃が大きくなり、マゼラン城の城壁にぶつかってしまったのだ。そのせいで、マゼラン城も修復しなければ雨風がしのげないほどになったのである。

 「今の音と衝撃はなんだ!まさか、アンドロメダが攻めてきよったか?」

 「いえ、木馬がぶつかった音と衝撃にございます。」

 「はぁ?なぜだ?国境に向かったのではないのか?どいつもこいつも役立たずめが!こうなれば、最後の手段……オメガ王に連絡を取れ。」

 「はっ!」

 オメガとマゼラン、二人の王様が結託して、建前でも謝罪に向かえば、アンドロメダも粗末には扱うまい。隙を狙い、アンドロメダの王の首を取り、聖女様をいただき一発逆転を狙おうと思っている。

 「マゼランよ。よくそんなことを思いついたな。」

 「そうだろ?儂はまだ聖女様を諦めておらぬからな。二人で姉聖女と妹聖女を交互にいただくっていうのは、どうだ?」

 「妙案だ。それに乗る。お主のほうから、姉か妹を選ぶ権利をやろう。」

 「「ふひひ。」」

 そうして、二人の王様は、それぞれの王族用に金の装飾があしらわれた馬車でアンドロメダとの国境付近まで来る。

 「では、二人同時に参ろうぞ。」

 「うむ。よかろう。スピードを上げ、一気に通過しようぞ。」

 「おお!」

 猛スピードで2台の馬車が通過しようとしたとき、2台とも10㎞ほど離れた位置にはじき飛ばされ、2台の馬車ともそれぞれ、木っ端みじんに壊れたのである。

 こうして侵略戦争は幕を閉じたのである。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

 二人の聖女様は、というと相変わらず仲良く恋バナに興じている。

 この前、留学していた時に、それぞれ相手を見つけるものの、形だけとはいえ、大国の王子様と婚約していたから、それ以上話を進めることができずにいたのだ。

 「縁談がなくなるようなことがあれば、きっと迎えに行くよ。」

 その言葉を信じて、待っている。縁談は降るほど来るが、その相手からは、なしのつぶてで、だんだん心配になってくる。でも、愛しているから信じたい。

 連日のお見合い攻勢にもう断り切れなくなる。聖女様の両親は、娘たちが幸せになってくれさえいれば、どこの国であろうと構わない。ただ、娘たちを大切のしてほしいだけなのである。

 「どうだ?会うだけでも、会ってみるか?」

 「実は、わたくし達には、既に心に想う男性がいて、……。」

 「ほぅ、それは重畳、して、どこにいる、なんという名前で、どんな職業に就いている人?」

 普通の親なら当然気にかかることだけど、恋する乙女には、こういう時の質問はウザイ。

 「そのうち、連れてくるわよ。」

 父王は、ショックだった。まだまだ子供だと思っていたのに、もう恋人を作る年齢になっていたとは、もうそろそろ本気で子離れしなくては、と思う。

 「やっぱり、他国へ留学させたことが失敗だったかな……。」

 「何、言っているのよ、年頃の娘の成長過程では、当たり前だし大切なことよ。」

 父は、母に窘められる。

 そしてあの侵略戦争から半年がたったころ、ついに娘たちが恋人を連れてきたのだ。
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