2 / 4
2
しおりを挟む
「なにぃ!我が軍ばかりかマゼラン軍まで、全滅しただと?なぜだ?あんなアンドロメダごときの弱小国が、いつの間に戦力をつけた?和平交渉をしろ!」
「はっ!しかし、何をもって、交渉材料がありません。我が国の大半の男は、戦死しております。」
「うぅぅぅ。では、金か?我が国の金庫にどれぐらいの金が残っている?」
「戦死した者の遺族への補償金にあてて、ほとんど金庫に金がありません。」
「マゼラン国は、どのようにしておる?まさか?あの国は、もう和平交渉を済ませておるのか?」
その頃、マゼラン国も、和平交渉の材料が見つからず窮している。差し出すものがないのである。軍は全滅し、今、アンドロメダが侵攻してきたら、女子供しかいないので、負けてしまう。
「そうだ!聖女様の卒業祝いと称して、大きな木馬を贈ろうではないか?木馬の中に近衛騎士を仕込ませ、毒の入った酒とともに、贈ろう。」
「しかし、もしも近衛騎士までもが全滅すると、我がマゼラン国は丸裸になってしまいますぞ。それに、女性に木馬というのはいかがなものでしょうか?」
「ええぃ!何でもいいのだ、中に人が入れるぐらいのものであれば。近衛騎士は、精鋭部隊だ。奴らが負けるわけがなかろう。急げ!大型の木馬を作るのだ。」
「はっ!」
「うひひ。儂はまだ聖女様の味見を諦めてはおらぬぞ。」
二つの国も後継ぎの王子を失ってしまったというのに、行方不明ぐらいにしか思っていない。事態は、さらに深刻な方向へ進む。
マゼラン国の木馬が完成する。パッと見だけ、木馬に見えればいいのである。中は、騎士たちが窒息しない程度の空気穴を開けておけばいいのだから。
木馬に100名の近衛騎士を潜ませ、アンドロメダの国境に向かわせる。またしても聖女様が作られた結界に阻まれ、中に入れず、木馬もろとも100㎞以上はじき飛ばされ、木っ端みじんに壊れてしまう。中の騎士は、大半が即死で、数名の虫の息の者が残っているが、とても事情を聴ける状態ではない。
毒入りの酒樽も同様に弾き飛ばされ、周囲の家畜にかかったため、家畜も全滅してしまったのだ。
結界にぶつかる対象が大きければ、大きいほど弾く衝撃が大きくなり、マゼラン城の城壁にぶつかってしまったのだ。そのせいで、マゼラン城も修復しなければ雨風がしのげないほどになったのである。
「今の音と衝撃はなんだ!まさか、アンドロメダが攻めてきよったか?」
「いえ、木馬がぶつかった音と衝撃にございます。」
「はぁ?なぜだ?国境に向かったのではないのか?どいつもこいつも役立たずめが!こうなれば、最後の手段……オメガ王に連絡を取れ。」
「はっ!」
オメガとマゼラン、二人の王様が結託して、建前でも謝罪に向かえば、アンドロメダも粗末には扱うまい。隙を狙い、アンドロメダの王の首を取り、聖女様をいただき一発逆転を狙おうと思っている。
「マゼランよ。よくそんなことを思いついたな。」
「そうだろ?儂はまだ聖女様を諦めておらぬからな。二人で姉聖女と妹聖女を交互にいただくっていうのは、どうだ?」
「妙案だ。それに乗る。お主のほうから、姉か妹を選ぶ権利をやろう。」
「「ふひひ。」」
そうして、二人の王様は、それぞれの王族用に金の装飾があしらわれた馬車でアンドロメダとの国境付近まで来る。
「では、二人同時に参ろうぞ。」
「うむ。よかろう。スピードを上げ、一気に通過しようぞ。」
「おお!」
猛スピードで2台の馬車が通過しようとしたとき、2台とも10㎞ほど離れた位置にはじき飛ばされ、2台の馬車ともそれぞれ、木っ端みじんに壊れたのである。
こうして侵略戦争は幕を閉じたのである。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
二人の聖女様は、というと相変わらず仲良く恋バナに興じている。
この前、留学していた時に、それぞれ相手を見つけるものの、形だけとはいえ、大国の王子様と婚約していたから、それ以上話を進めることができずにいたのだ。
「縁談がなくなるようなことがあれば、きっと迎えに行くよ。」
その言葉を信じて、待っている。縁談は降るほど来るが、その相手からは、なしのつぶてで、だんだん心配になってくる。でも、愛しているから信じたい。
連日のお見合い攻勢にもう断り切れなくなる。聖女様の両親は、娘たちが幸せになってくれさえいれば、どこの国であろうと構わない。ただ、娘たちを大切のしてほしいだけなのである。
「どうだ?会うだけでも、会ってみるか?」
「実は、わたくし達には、既に心に想う男性がいて、……。」
「ほぅ、それは重畳、して、どこにいる、なんという名前で、どんな職業に就いている人?」
普通の親なら当然気にかかることだけど、恋する乙女には、こういう時の質問はウザイ。
「そのうち、連れてくるわよ。」
父王は、ショックだった。まだまだ子供だと思っていたのに、もう恋人を作る年齢になっていたとは、もうそろそろ本気で子離れしなくては、と思う。
「やっぱり、他国へ留学させたことが失敗だったかな……。」
「何、言っているのよ、年頃の娘の成長過程では、当たり前だし大切なことよ。」
父は、母に窘められる。
そしてあの侵略戦争から半年がたったころ、ついに娘たちが恋人を連れてきたのだ。
「はっ!しかし、何をもって、交渉材料がありません。我が国の大半の男は、戦死しております。」
「うぅぅぅ。では、金か?我が国の金庫にどれぐらいの金が残っている?」
「戦死した者の遺族への補償金にあてて、ほとんど金庫に金がありません。」
「マゼラン国は、どのようにしておる?まさか?あの国は、もう和平交渉を済ませておるのか?」
その頃、マゼラン国も、和平交渉の材料が見つからず窮している。差し出すものがないのである。軍は全滅し、今、アンドロメダが侵攻してきたら、女子供しかいないので、負けてしまう。
「そうだ!聖女様の卒業祝いと称して、大きな木馬を贈ろうではないか?木馬の中に近衛騎士を仕込ませ、毒の入った酒とともに、贈ろう。」
「しかし、もしも近衛騎士までもが全滅すると、我がマゼラン国は丸裸になってしまいますぞ。それに、女性に木馬というのはいかがなものでしょうか?」
「ええぃ!何でもいいのだ、中に人が入れるぐらいのものであれば。近衛騎士は、精鋭部隊だ。奴らが負けるわけがなかろう。急げ!大型の木馬を作るのだ。」
「はっ!」
「うひひ。儂はまだ聖女様の味見を諦めてはおらぬぞ。」
二つの国も後継ぎの王子を失ってしまったというのに、行方不明ぐらいにしか思っていない。事態は、さらに深刻な方向へ進む。
マゼラン国の木馬が完成する。パッと見だけ、木馬に見えればいいのである。中は、騎士たちが窒息しない程度の空気穴を開けておけばいいのだから。
木馬に100名の近衛騎士を潜ませ、アンドロメダの国境に向かわせる。またしても聖女様が作られた結界に阻まれ、中に入れず、木馬もろとも100㎞以上はじき飛ばされ、木っ端みじんに壊れてしまう。中の騎士は、大半が即死で、数名の虫の息の者が残っているが、とても事情を聴ける状態ではない。
毒入りの酒樽も同様に弾き飛ばされ、周囲の家畜にかかったため、家畜も全滅してしまったのだ。
結界にぶつかる対象が大きければ、大きいほど弾く衝撃が大きくなり、マゼラン城の城壁にぶつかってしまったのだ。そのせいで、マゼラン城も修復しなければ雨風がしのげないほどになったのである。
「今の音と衝撃はなんだ!まさか、アンドロメダが攻めてきよったか?」
「いえ、木馬がぶつかった音と衝撃にございます。」
「はぁ?なぜだ?国境に向かったのではないのか?どいつもこいつも役立たずめが!こうなれば、最後の手段……オメガ王に連絡を取れ。」
「はっ!」
オメガとマゼラン、二人の王様が結託して、建前でも謝罪に向かえば、アンドロメダも粗末には扱うまい。隙を狙い、アンドロメダの王の首を取り、聖女様をいただき一発逆転を狙おうと思っている。
「マゼランよ。よくそんなことを思いついたな。」
「そうだろ?儂はまだ聖女様を諦めておらぬからな。二人で姉聖女と妹聖女を交互にいただくっていうのは、どうだ?」
「妙案だ。それに乗る。お主のほうから、姉か妹を選ぶ権利をやろう。」
「「ふひひ。」」
そうして、二人の王様は、それぞれの王族用に金の装飾があしらわれた馬車でアンドロメダとの国境付近まで来る。
「では、二人同時に参ろうぞ。」
「うむ。よかろう。スピードを上げ、一気に通過しようぞ。」
「おお!」
猛スピードで2台の馬車が通過しようとしたとき、2台とも10㎞ほど離れた位置にはじき飛ばされ、2台の馬車ともそれぞれ、木っ端みじんに壊れたのである。
こうして侵略戦争は幕を閉じたのである。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
二人の聖女様は、というと相変わらず仲良く恋バナに興じている。
この前、留学していた時に、それぞれ相手を見つけるものの、形だけとはいえ、大国の王子様と婚約していたから、それ以上話を進めることができずにいたのだ。
「縁談がなくなるようなことがあれば、きっと迎えに行くよ。」
その言葉を信じて、待っている。縁談は降るほど来るが、その相手からは、なしのつぶてで、だんだん心配になってくる。でも、愛しているから信じたい。
連日のお見合い攻勢にもう断り切れなくなる。聖女様の両親は、娘たちが幸せになってくれさえいれば、どこの国であろうと構わない。ただ、娘たちを大切のしてほしいだけなのである。
「どうだ?会うだけでも、会ってみるか?」
「実は、わたくし達には、既に心に想う男性がいて、……。」
「ほぅ、それは重畳、して、どこにいる、なんという名前で、どんな職業に就いている人?」
普通の親なら当然気にかかることだけど、恋する乙女には、こういう時の質問はウザイ。
「そのうち、連れてくるわよ。」
父王は、ショックだった。まだまだ子供だと思っていたのに、もう恋人を作る年齢になっていたとは、もうそろそろ本気で子離れしなくては、と思う。
「やっぱり、他国へ留学させたことが失敗だったかな……。」
「何、言っているのよ、年頃の娘の成長過程では、当たり前だし大切なことよ。」
父は、母に窘められる。
そしてあの侵略戦争から半年がたったころ、ついに娘たちが恋人を連れてきたのだ。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】聖女様は聖くない
当麻リコ
恋愛
異世界から召喚された聖女に婚約者の心を奪われてしまったヨハンナ。
彼女は学園の卒業パーティーで王太子である婚約者から、婚約破棄を言い渡されてしまう。
彼の心はもう自分にはないと知ったヨハンナ。
何もかも諦め婚約破棄を受け入れることにしたヨハンナの代わりに、切れたのは何故か聖女であるカレンだった――。
※短めのお話です。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
婚約破棄された悪役令嬢が聖女になってもおかしくはないでしょう?~えーと?誰が聖女に間違いないんでしたっけ?にやにや~
荷居人(にいと)
恋愛
「お前みたいなのが聖女なはずがない!お前とは婚約破棄だ!聖女は神の声を聞いたリアンに違いない!」
自信満々に言ってのけたこの国の王子様はまだ聖女が決まる一週間前に私と婚約破棄されました。リアンとやらをいじめたからと。
私は正しいことをしただけですから罪を認めるものですか。そう言っていたら檻に入れられて聖女が決まる神様からの認定式の日が過ぎれば処刑だなんて随分陛下が外交で不在だからとやりたい放題。
でもね、残念。私聖女に選ばれちゃいました。復縁なんてバカなこと許しませんからね?
最近の聖女婚約破棄ブームにのっかりました。
婚約破棄シリーズ記念すべき第一段!只今第五弾まで完結!婚約破棄シリーズは荷居人タグでまとめておりますので荷居人ファン様、荷居人ファンなりかけ様、荷居人ファン……かもしれない?様は是非シリーズ全て読んでいただければと思います!
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
馬鹿王子にはもう我慢できません! 婚約破棄される前にこちらから婚約破棄を突きつけます
白桃
恋愛
子爵令嬢のメアリーの元に届けられた婚約者の第三王子ポールからの手紙。
そこには毎回毎回勝手に遊び回って自分一人が楽しんでいる報告と、メアリーを馬鹿にするような言葉が書きつられていた。
最初こそ我慢していた聖女のように優しいと誰もが口にする令嬢メアリーだったが、その堪忍袋の緒が遂に切れ、彼女は叫ぶのだった。
『あの馬鹿王子にこちらから婚約破棄を突きつけてさしあげますわ!!!』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる