上 下
11 / 25

11砂の城

しおりを挟む
 佐倉鈴の事件は、検察も懲役15年は甘すぎると控訴したものだ。

 お父様が言われた意味が分かったような気がする。

 15年で刑に服せば、ここまで注目されることはなく、普通の生活を送れただろう。ブスだから、邪魔だからと言う理由だけでキャリア官僚を殺してしまった意味が分からないのは、頭の中は高校生のままだから。

 到底許されることではないけれど、自分にとって気に入らない相手を排除したいという気持ちは子供の頃には誰にでも経験したことがある。下に弟か妹が生まれるときに、赤ちゃん返りをするも、その一例。

 それを大人になって、赤ちゃん返りをしても誰も許してくれない。中学生や高校生でイジメをする奴は、大人になり切れないガキがすることで、場合によれば、ハラスメントが横行している会社もある。こんな会社はつぶれてしまえばいい、と本気で思う。

 検察は懲役23年を求刑し、懲役18年の判決が出てしまう。

 鈴は、弁護士の言われる通り控訴しただけで、また懲役刑が3年も長くなったことにいら立ちを隠せない。接見室で、弁護士に暴言を吐き、弁護人を解任する。

 AV「悪女の喘ぎ」は第2弾、第3弾と発売され、飛ぶように売れていることも、裁判に影響を及ぼしている。

 鈴の懐を肥やしているわけではないのだが、人殺しをしておきながら、お金儲けをしていることへの反感を買っている。

 新しい国選弁護人は、情状酌量を求め、罪を認めるように促すが、鈴は聞く耳を持たない。

 相変わらず、「無罪」を主張して、最高裁へ上告する。

 一方、紗々は、前世でしたことがないことにチャレンジ中で、前世は山登りで、登山、ハイキング、スキーをしていたから今世は山ではなく、海。マリンスポーツに挑戦中なのだ。手始めにスキューバダイビング。 

 ヨットやクルージングもしたいから、船舶免許を取るつもりでいる。

 前世は、顔はブスでも色白だったけど、今世は日焼けを心配している。でもスーツのおかげで、思ったよりも紫外線に当たらず、日焼け止めを用いるまでもない。

 やっぱり神様の創造物だからかもしれない。

 そんな時、復讐のため、通った居酒屋の店主と海でバッタリ会う。

 なんでも店主は、昼間はインストラクターの仕事をして、夕方から店をしているとか?よくカラダがもつものだと感心していると、

 「いやぁ、貧乏ヒマなしってとこっすよ。それより店のお客さんが逮捕されて、ビックリしました。あの奥さんがまさか、人殺しだとは思わなかったよ。誰かの不幸の上に成り立っている幸せなんて、砂の城と同じだね。」

 そうだ。離婚条件に、桜の不幸の上に成り立っている離婚なのだから、と裕介にきつく言い渡したにもかかわらず、あの男はどう思っていたのだろう。

 まだ鈴が、佐倉の苗字を名乗っていることから考えて、離婚はしていないのだろう。

 一生かかっても、二人で桜への贖罪をするべきだと思う。

 久しぶりに前世の両親に会いたくなったので、帰りに寄ってみることにした。

 「ただいま。」と言って帰るべきか?それとも桜の後輩役人として、訪問すべきか?家の前まで来て、悩む。

 すると、いきなり玄関の引き戸が開き、祖母が顔を出した。

 「あら、いらっしゃい。今日はね、なんだか桜ちゃんが帰ってくるような気がしたのよ。」

 ごく自然に、孫として迎え入れてくれたことはありがたかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

都合の良い言葉

篠崎汐音
恋愛
木山美咲は、友人の間橙百合音から結婚式の招待状を送られる。 新郎の欄には、半年前に別れたはずの彼氏・江島の名前が記されていた。 美咲は、彼氏を友人に奪われていたのだ。 彼氏にも友人にも裏切られていたことを知った美咲は、悲しみと憎しみの中、彼らに復讐することを決意するが・・・。 ※エブリスタさんで投稿した話と同一のものです。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

お針子と勘違い令嬢

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日突然、自称”愛され美少女”にお針子エルヴィナはウザ絡みされ始める。理由はよくわからない。 終いには「彼を譲れ」と難癖をつけられるのだが……

処理中です...