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佐倉桜改め笹沢紗々に、変身した紗々は、経済産業省の自分のデスクにいる。元は、桜が使っていたもので、引き出しの底には、貸金庫のカードキーが貼り付けてあったのだ。
その日、桜は博衛堂に臨検に行き、まだ帰ってこない。博衛堂の不正の証拠はすでに、桜がメールで送っているから、課長は桜に「ご苦労様」を言うために退庁時刻を過ぎても待っている状態だった。
そこへ1本の電話が警察からかかってくる。
「なんですと?」
課長は残っている課員に桜が交通事故で亡くなったという事実を告げ、現場に急行した。
それから葬儀まで、慌ただしく時が過ぎる。自分の葬式を体験するなど、めったにない経験。
別れた夫裕介は、憔悴しきった顔をしている。あの日の受付でのやり取りが社長の耳に入り、あっという間に降格減給処分になったことが影響しているのだろう。
桜が死んだことではなく、自分の身だけを心配しているのだ。
それに受付で騒いでいた映像が防犯カメラに残っていて、周りにいた人の証言からも桜を高校時代イジメていた相手が涼森鈴受付嬢だったことが判明する。
社内では、裕介の浮気相手が桜を高校時代イジメていた張本人であること、桜を二重に苦しめていた事実でもちきりになった。
気立ての良い賢い妻を捨て、いくら美人でも性格ブスと心中するとは、バカな男だと噂されていることを知らずにいる。
もはや会社での自分の居場所はない、と感じたが離婚してまでも鈴を欲しがったことも事実であるから、これから頑張れば、まだ巻き返しのチャンスがあると信じている。
今迄の実績は、桜からもたらされていたことを知らずに自分の実力だと思っている。つくづくメデタイ男。
桜が目論んだとおり、博衛堂から派遣会社に連絡が行き、派遣会社からもクビになった鈴は、次の派遣会社を探そうにも、解雇理由が「イジメ、不倫」では、どこも雇ってくれるところがない。
お金がないと、家賃も払えないから、裕介の都内の豪邸に引っ越そうと思い、引っ越し業者を頼むと、その豪邸はすでに更地となっていたのだ。
「いったいどういうこと?」
裕介に詰め寄るも、あの家は、慰謝料代わりに桜に渡したと。
鈴は、裕介が閑職に追いやられたことなど知る由もない。桜が生きていれば、あの家を取り返す手段もあったかもしれないが、死んでしまった以上、遺族の手に渡り売却されてしまったのだろうと推測する。
その死の原因を作ったのは、まぎれもなく自分の手だということを失念している。
1か月後、二人は結婚する。新居は、郊外のマンションを借りることになった。会社までの通勤時間が2時間のところだ。
再婚禁止期間はないが、裕介はもう少し間隔を開けようと思っていたのだが、鈴が住むところがないということで、結婚を速めた。鈴は、専業主婦となり、家事はまったく経験がないことから、家政婦も雇えず、しばらくは冷凍食品でごまかすことにした。そのうち、お料理も覚えればいいわ。という気持ちで。だって、あのブスにでもできたのなら私にだって、出来るはずよ。
顔と家事は関係がないということもわからない自意識過剰女。家事と頭(脳)は、関係あるけどね。だから、どんなに頑張っても鈴の頭では、家事を効率よくこなせない。
それでも裕介は、美人妻を娶り、鈴はイケメンエリートと結婚できたことに満足している。
これからさらなる地獄が待っていることも知らずに。
その日、桜は博衛堂に臨検に行き、まだ帰ってこない。博衛堂の不正の証拠はすでに、桜がメールで送っているから、課長は桜に「ご苦労様」を言うために退庁時刻を過ぎても待っている状態だった。
そこへ1本の電話が警察からかかってくる。
「なんですと?」
課長は残っている課員に桜が交通事故で亡くなったという事実を告げ、現場に急行した。
それから葬儀まで、慌ただしく時が過ぎる。自分の葬式を体験するなど、めったにない経験。
別れた夫裕介は、憔悴しきった顔をしている。あの日の受付でのやり取りが社長の耳に入り、あっという間に降格減給処分になったことが影響しているのだろう。
桜が死んだことではなく、自分の身だけを心配しているのだ。
それに受付で騒いでいた映像が防犯カメラに残っていて、周りにいた人の証言からも桜を高校時代イジメていた相手が涼森鈴受付嬢だったことが判明する。
社内では、裕介の浮気相手が桜を高校時代イジメていた張本人であること、桜を二重に苦しめていた事実でもちきりになった。
気立ての良い賢い妻を捨て、いくら美人でも性格ブスと心中するとは、バカな男だと噂されていることを知らずにいる。
もはや会社での自分の居場所はない、と感じたが離婚してまでも鈴を欲しがったことも事実であるから、これから頑張れば、まだ巻き返しのチャンスがあると信じている。
今迄の実績は、桜からもたらされていたことを知らずに自分の実力だと思っている。つくづくメデタイ男。
桜が目論んだとおり、博衛堂から派遣会社に連絡が行き、派遣会社からもクビになった鈴は、次の派遣会社を探そうにも、解雇理由が「イジメ、不倫」では、どこも雇ってくれるところがない。
お金がないと、家賃も払えないから、裕介の都内の豪邸に引っ越そうと思い、引っ越し業者を頼むと、その豪邸はすでに更地となっていたのだ。
「いったいどういうこと?」
裕介に詰め寄るも、あの家は、慰謝料代わりに桜に渡したと。
鈴は、裕介が閑職に追いやられたことなど知る由もない。桜が生きていれば、あの家を取り返す手段もあったかもしれないが、死んでしまった以上、遺族の手に渡り売却されてしまったのだろうと推測する。
その死の原因を作ったのは、まぎれもなく自分の手だということを失念している。
1か月後、二人は結婚する。新居は、郊外のマンションを借りることになった。会社までの通勤時間が2時間のところだ。
再婚禁止期間はないが、裕介はもう少し間隔を開けようと思っていたのだが、鈴が住むところがないということで、結婚を速めた。鈴は、専業主婦となり、家事はまったく経験がないことから、家政婦も雇えず、しばらくは冷凍食品でごまかすことにした。そのうち、お料理も覚えればいいわ。という気持ちで。だって、あのブスにでもできたのなら私にだって、出来るはずよ。
顔と家事は関係がないということもわからない自意識過剰女。家事と頭(脳)は、関係あるけどね。だから、どんなに頑張っても鈴の頭では、家事を効率よくこなせない。
それでも裕介は、美人妻を娶り、鈴はイケメンエリートと結婚できたことに満足している。
これからさらなる地獄が待っていることも知らずに。
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