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6.縁談
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いらぬ誤解を与えると言われ、男装をすることをやめてしまったアンドレアは、上衣だけを防刃チョッキにして、下は普通の乗馬ズボンの方がまだ格好がいい。
ある日のこと、またしても王城から使いが来て、アンドレアに縁談が来てしまう。お相手は王太子殿下のワーキュレー様で、兄のカルバンと学園の同級生だという。
「俺は、やめとけと言ったのだが、アンディは見た目だけは最高にイイ女だから、どうしても紹介してくれと言われてしまってな。今度の夜会にアンディを連れていくことになったのだから、くれぐれも粗相のないように頼むよ。」
この縁談には、裏があり、ロザリー王女殿下が推薦してくださったみたい。
「将来の王妃となる女性は、美しく強くなければなりません。クーデターや、他国との戦争が起こった時、城を捨てて、王子と共に逃げなければならないとき、馬車にしか乗れないような女性では、困ります。男性並みに剣をふるい、戦えるような女性は、アンドレア様を置いて、他にはいらっしゃらないでしょう。」
王女殿下も、また余計なことを。
でも、確か、王太子殿下には、婚約者様がいらっしゃったはず。それなのに、なぜ?
そのことを聞けぬ間に、夜会の日が近づいてくる。
アンドレアは、ドレスの下にでも、かさばらずに穿けるスパッツを作り、太ももにガーターベルトよろしく短剣を隠し持てるベルトバッグを吊り下げることにした。
短剣のほかにも、折り畳み式の警棒を隠し持つことにする。
前世の記憶を取り戻してからは、というもの、何でも思い浮かべるだけで、前世の品物が手に入るようになった。
スパッツの上は、キャミソールにタンクトップ、スポーツブラジャーもきちんとつけている。
兄がエスコートしてくれて、馬車から降りる。
そこへ兄の同級生のセイロン伯爵家令息のカリオストロがしゃしゃり出てきて
「カルバン、いい気なものだな。女連れで。俺は、陛下から、今日の警護を頼まれているというのに、お前は、そんなイイ女を侍らして、公爵家というだけで、そんなに偉いのかな。」
「なに、言っているんだ?これは妹のアンドレアだ。ワーキュレー様がどうしても、と言われるので紹介するために連れてきたのだ。」
セイロン伯爵家は王立の騎士団長の家柄、クロフォード家は、代々、有事の時の王の剣としての近衛の家柄で、騎士団とは対立している。
「ケッ。そんな、おしとやかなご令嬢に妃殿下など務まるものか……。」
その場は、兄はワーキュレー殿下がお待ちだからと、先を急ごうとしているのに対し、まだセイロン令息が言いがかりをつけてこられる。
兄に相手にしてもいいか?と小声で聞くと……、
「仕方なかろう。アンディの腕前がわからないような奴なら、叩きのめしてしまえ。」
お許しが出たので、カリオストロ様の前まで進み出て、優雅なカーテシーを取り、挨拶をしながら
「わたくし、剣術の心得が多少、ございます。もしよろしければ、一手、お手合わせをお願いしたく……。」
「は?女だてらに、俺を愚弄する気か?」
「問答無用!」
スカートの下に隠し持っていた折り畳み式の警棒を、魚釣りの時の竿を投げる要領で投げると、そこそこの長さに伸びる。
相手が剣を抜く前に小手で、その手を払い落としてしまう。
「痛っ!」
「これが賢だったら、カリオストロ様の手首から上の部分は切り落ちています。ですが、わたくし、カリオストロ様の人物がどの程度の方か、よくわかりましたので、これにて失礼いたします。行きましょう。お兄様。」
「……すごいだろ?妹は、そんじょそこらの淑女とは違うのだ。なんせ、王女殿下の肝いりでお見合いすることになったのだからな。」
なぜか、カリオストロ様は怒っているのか?顔を赤らめて、
「ま、待ってくれ。先ほどは、たいへん失礼いたした。よければ、今度じっくり剣術以外のことでも、話がしたい。」
「は?何をおっしゃっておられますの?」
「私は、アンドレア様に一目ぼれを致しました。こんなに強く美しい女性を初めて見ました。心よりお慕い申し上げます。」
「キモ!Mか……?」
「きも?とは……?えむとは……?」
お兄様を促して、さっさと王城の中へ入っていくアンドレアとカルバンを、あたまに?マークをいっぱい浮かべながら、見送るカリオストロは、ますます「気に入った。」と頷いている。
ある日のこと、またしても王城から使いが来て、アンドレアに縁談が来てしまう。お相手は王太子殿下のワーキュレー様で、兄のカルバンと学園の同級生だという。
「俺は、やめとけと言ったのだが、アンディは見た目だけは最高にイイ女だから、どうしても紹介してくれと言われてしまってな。今度の夜会にアンディを連れていくことになったのだから、くれぐれも粗相のないように頼むよ。」
この縁談には、裏があり、ロザリー王女殿下が推薦してくださったみたい。
「将来の王妃となる女性は、美しく強くなければなりません。クーデターや、他国との戦争が起こった時、城を捨てて、王子と共に逃げなければならないとき、馬車にしか乗れないような女性では、困ります。男性並みに剣をふるい、戦えるような女性は、アンドレア様を置いて、他にはいらっしゃらないでしょう。」
王女殿下も、また余計なことを。
でも、確か、王太子殿下には、婚約者様がいらっしゃったはず。それなのに、なぜ?
そのことを聞けぬ間に、夜会の日が近づいてくる。
アンドレアは、ドレスの下にでも、かさばらずに穿けるスパッツを作り、太ももにガーターベルトよろしく短剣を隠し持てるベルトバッグを吊り下げることにした。
短剣のほかにも、折り畳み式の警棒を隠し持つことにする。
前世の記憶を取り戻してからは、というもの、何でも思い浮かべるだけで、前世の品物が手に入るようになった。
スパッツの上は、キャミソールにタンクトップ、スポーツブラジャーもきちんとつけている。
兄がエスコートしてくれて、馬車から降りる。
そこへ兄の同級生のセイロン伯爵家令息のカリオストロがしゃしゃり出てきて
「カルバン、いい気なものだな。女連れで。俺は、陛下から、今日の警護を頼まれているというのに、お前は、そんなイイ女を侍らして、公爵家というだけで、そんなに偉いのかな。」
「なに、言っているんだ?これは妹のアンドレアだ。ワーキュレー様がどうしても、と言われるので紹介するために連れてきたのだ。」
セイロン伯爵家は王立の騎士団長の家柄、クロフォード家は、代々、有事の時の王の剣としての近衛の家柄で、騎士団とは対立している。
「ケッ。そんな、おしとやかなご令嬢に妃殿下など務まるものか……。」
その場は、兄はワーキュレー殿下がお待ちだからと、先を急ごうとしているのに対し、まだセイロン令息が言いがかりをつけてこられる。
兄に相手にしてもいいか?と小声で聞くと……、
「仕方なかろう。アンディの腕前がわからないような奴なら、叩きのめしてしまえ。」
お許しが出たので、カリオストロ様の前まで進み出て、優雅なカーテシーを取り、挨拶をしながら
「わたくし、剣術の心得が多少、ございます。もしよろしければ、一手、お手合わせをお願いしたく……。」
「は?女だてらに、俺を愚弄する気か?」
「問答無用!」
スカートの下に隠し持っていた折り畳み式の警棒を、魚釣りの時の竿を投げる要領で投げると、そこそこの長さに伸びる。
相手が剣を抜く前に小手で、その手を払い落としてしまう。
「痛っ!」
「これが賢だったら、カリオストロ様の手首から上の部分は切り落ちています。ですが、わたくし、カリオストロ様の人物がどの程度の方か、よくわかりましたので、これにて失礼いたします。行きましょう。お兄様。」
「……すごいだろ?妹は、そんじょそこらの淑女とは違うのだ。なんせ、王女殿下の肝いりでお見合いすることになったのだからな。」
なぜか、カリオストロ様は怒っているのか?顔を赤らめて、
「ま、待ってくれ。先ほどは、たいへん失礼いたした。よければ、今度じっくり剣術以外のことでも、話がしたい。」
「は?何をおっしゃっておられますの?」
「私は、アンドレア様に一目ぼれを致しました。こんなに強く美しい女性を初めて見ました。心よりお慕い申し上げます。」
「キモ!Mか……?」
「きも?とは……?えむとは……?」
お兄様を促して、さっさと王城の中へ入っていくアンドレアとカルバンを、あたまに?マークをいっぱい浮かべながら、見送るカリオストロは、ますます「気に入った。」と頷いている。
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