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2.鍛錬
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結局、俺は記憶喪失ということで、ごまかすことにした。
だが、ぶらぶらするのも気が引ける。というか、飽きてきたのだ。この何もしない生活に、それでまずは、腕立て伏せでも初めて見るかと思って、やってみたら、1回もできない。腕がプルポロ震えて、信じられないほど筋力がない。
それで覚えている限りの筋力アップトレーニングを始めたのだ。次に行ったのは、ウォーキング、本当はランニングをしたいのだが、公爵令嬢がむやみに走れば、周りのものを驚かすだけなので、断念し、その代わり、散歩と称して、ウォーキングならできるだろう。
日光に当たることは、筋力を形成する上で、必要不可欠なこと。それなのに、侍女ときたら、日傘を持って、追いかけまわされるのだ。
何とか侍女を振り切れるようになれば、一人前だと思い、必死に早歩きをすると、今度は侍女長からお小言の嵐を受け、参った。
貴族令嬢は色白が美徳らしい。
そんなもの元が白けりゃ、2~3か月で元に戻るもの。前世も、男にしては色白だったが、デカをしているときは足で稼ぐから、日焼けしていたのだが、同僚と一緒にサウナへ入った時などは必要以上に「白い」と言われ、触りたくられ迷惑をしたものだ。
ここのところのお出かけは、仕方なく日傘をさして、優雅に?とは、程遠い歩き方をしているが、日傘さえさしていれば、文句は言われないので、後は、早歩きして、いつも侍女を置いてけぼりにしている。
もっとも、走るよりは、早歩きした方が有酸素運動には適しているので、お散歩も悪くない日課にしている。
腕立て伏せも、ずいぶんできるようになり、普通に100回、右腕だけで、100回、左腕だけで100回と一日300回を目標にコツウコツ励んでいる。
これぐらい続ければ、棒切れを振り回すことなど、造作もないはず。だと思う。たぶんだけど、この公爵邸にも修練場があり、公爵家専属のお抱え騎士団を持っている。
アンドレアの兄カルバンがその騎士団長をしているという情報は、もう仕入れ済みなのだ。
アンドレアの部屋の窓から見る限り、あんなへなちょこの剣さばきで、騎士団長が務まるのなら、他の騎士の実力も推して知るべしというところ。
夕飯の時、お父様が上機嫌でアンドレアのことを聞いてくれる。
「最近ま、アンドレアもずいぶん顔色がよくなって、一安心だ。」
「お父様、折り入ってお願いがございますが……よろしいでしょうか?」
俺が、自動翻訳機というチートスキルをもらって、転生してきたようだ。前世と同じおっさん口調で話しているのだが、こちらの世界の公爵令嬢にふさわしい言葉遣いに直して、会話してくれるので助かっている。
出なきゃ、あんなキモイ言葉遣いなど到底、俺には無理だから。とっくに何度も舌を噛んでいるし、口の中も口内炎だらけになるほど噛みまくっていることだろう。
「なんだ?言ってみなさい。」
「わたくしも、剣術を習いたいのでございますが……?」
「うーん。筆頭公爵家令嬢がたしなむような趣味ではないと思うのだが……?なぜ、そんなものを習いたいのだ?」
「それは、自分の身ぐらい自分で守れるようになりたいのでございます。今までのように、すぐ気を失っていては、筆頭公爵家令嬢の名が泣きまする。」
「護身術のやめか。よかろう。カルバンのところへ、すぐ入隊させるのは酷なので、まずは儂が手ほどきをしてやろう。明日の朝、動きやすい服装で、修練法に来なさい。」
「ありがとう存じます。お父様、大好き。」
途端に、父の目尻が下がったのが、目に見えてわかった。なるほど、前世、娘が何か頼みごとをするときのことを真似て、やってみたら、王味という生き物は、娘から「大好き」と言われることが何より弱いということがわかる。
だが、ぶらぶらするのも気が引ける。というか、飽きてきたのだ。この何もしない生活に、それでまずは、腕立て伏せでも初めて見るかと思って、やってみたら、1回もできない。腕がプルポロ震えて、信じられないほど筋力がない。
それで覚えている限りの筋力アップトレーニングを始めたのだ。次に行ったのは、ウォーキング、本当はランニングをしたいのだが、公爵令嬢がむやみに走れば、周りのものを驚かすだけなので、断念し、その代わり、散歩と称して、ウォーキングならできるだろう。
日光に当たることは、筋力を形成する上で、必要不可欠なこと。それなのに、侍女ときたら、日傘を持って、追いかけまわされるのだ。
何とか侍女を振り切れるようになれば、一人前だと思い、必死に早歩きをすると、今度は侍女長からお小言の嵐を受け、参った。
貴族令嬢は色白が美徳らしい。
そんなもの元が白けりゃ、2~3か月で元に戻るもの。前世も、男にしては色白だったが、デカをしているときは足で稼ぐから、日焼けしていたのだが、同僚と一緒にサウナへ入った時などは必要以上に「白い」と言われ、触りたくられ迷惑をしたものだ。
ここのところのお出かけは、仕方なく日傘をさして、優雅に?とは、程遠い歩き方をしているが、日傘さえさしていれば、文句は言われないので、後は、早歩きして、いつも侍女を置いてけぼりにしている。
もっとも、走るよりは、早歩きした方が有酸素運動には適しているので、お散歩も悪くない日課にしている。
腕立て伏せも、ずいぶんできるようになり、普通に100回、右腕だけで、100回、左腕だけで100回と一日300回を目標にコツウコツ励んでいる。
これぐらい続ければ、棒切れを振り回すことなど、造作もないはず。だと思う。たぶんだけど、この公爵邸にも修練場があり、公爵家専属のお抱え騎士団を持っている。
アンドレアの兄カルバンがその騎士団長をしているという情報は、もう仕入れ済みなのだ。
アンドレアの部屋の窓から見る限り、あんなへなちょこの剣さばきで、騎士団長が務まるのなら、他の騎士の実力も推して知るべしというところ。
夕飯の時、お父様が上機嫌でアンドレアのことを聞いてくれる。
「最近ま、アンドレアもずいぶん顔色がよくなって、一安心だ。」
「お父様、折り入ってお願いがございますが……よろしいでしょうか?」
俺が、自動翻訳機というチートスキルをもらって、転生してきたようだ。前世と同じおっさん口調で話しているのだが、こちらの世界の公爵令嬢にふさわしい言葉遣いに直して、会話してくれるので助かっている。
出なきゃ、あんなキモイ言葉遣いなど到底、俺には無理だから。とっくに何度も舌を噛んでいるし、口の中も口内炎だらけになるほど噛みまくっていることだろう。
「なんだ?言ってみなさい。」
「わたくしも、剣術を習いたいのでございますが……?」
「うーん。筆頭公爵家令嬢がたしなむような趣味ではないと思うのだが……?なぜ、そんなものを習いたいのだ?」
「それは、自分の身ぐらい自分で守れるようになりたいのでございます。今までのように、すぐ気を失っていては、筆頭公爵家令嬢の名が泣きまする。」
「護身術のやめか。よかろう。カルバンのところへ、すぐ入隊させるのは酷なので、まずは儂が手ほどきをしてやろう。明日の朝、動きやすい服装で、修練法に来なさい。」
「ありがとう存じます。お父様、大好き。」
途端に、父の目尻が下がったのが、目に見えてわかった。なるほど、前世、娘が何か頼みごとをするときのことを真似て、やってみたら、王味という生き物は、娘から「大好き」と言われることが何より弱いということがわかる。
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