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8.幸せ
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バルセロナの各地を巡る旅に、ついにジェニファーに聖騎士様が点くことになり、それに感激する。
そういえば、
最初の鄙びた教会からずっと、同じ騎士の方が護衛してくださっていることに気づいていたが、まさか、あのお方が聖騎士様だとはつゆしらず、聖騎士は、普通の騎士と違い、国王の命令では動かず聖女様の命令しかきかない。
そう。サラシアには、こういう騎士がいなかったから、あんな国外追放になってしまったのだ。
ハロイド・アンダーソン。聖騎士の名前、ジェニファー好みのガタイがしっかりしたタイプ。科目で、必要なこと以外は静か。
そういう無口なところも、ジェニファーの好きなタイプだ。男の喋りは、ジェニファーは苦手で、だからフィリップとも、チャールズともあまり会話が進まない。
「バルセロナ国って、グッジョブよね。」
何げなく、独り言をつぶやいていると、ハロイドがクスっと反応してくれるところが嬉しい。
それに、ジェニファーが疲れているタイミングで、お茶を淹れてくれる気遣いが嬉しい。
そう。できれば、こういう男性と結婚したい。そういえば、サラシアでの聖女の加護、そろそろ切れている頃だと思うけど、大丈夫かしら。何かあれば、フィリップのことだから責任逃れをするために、ジェニファーのところへ言ってくるはず。でも、今のところ便りがないということは、セレンティーヌ様とお二人で危機を乗り越えられているのだろうと思う。
あの二人、人目もはばからずイチャイチャし通しだったもの。
きっと、今でもあの調子でやっているに違いないので、しばらくはこちらからお伺いを立てることを遠慮しよう。
そうこうしている間に、バルセロナに逗留してから半年が過ぎてしまい、さすがにこれ以上居座ることは、無遠慮に等しい。
「そろそろハロイドとも、お別れの日が近づいてきたわね。」
「自分は、聖騎士なので、国境は関係ございません。聖女様の命であれば、他国も干渉できない立場にあります。」
「え?そうなの?頼もしいわ。では、これからもよろしくね。」
「はい。こちらこそ。」
笑いあう姿は、まるで恋人同士に見える。
チャールズz殿下がその様子を見咎めて、苦言を呈する。
「聖騎士のくせに、聖女様と馴れ馴れしすぎる。」
それをバルセロナ国側は、嫉妬ととらえずに、
「聖騎士と聖女様は、そもそもそういう関係であることが望ましい。聖女様が気兼ねなく、思う存分祈りに専念できるからで、教会としても都合がよろしいのです。」
「そういうものですかね。」
「そういうものです。」
その後の日程は、当初の予定通り、マドリード国に寄ることになり、チャールズ殿下は一度もアンドロメダに帰らず、そのままジェニファーと共に巡礼の旅を続けるつもりでいるようだ。
マドリード国でも、ジェニファーの歓待ぶりはすさまじく、到着したその日の夜には、歓迎パーティが催されるほどだった。
いつもハロイドは、つかず離れずの距離でジェニファーの側にいてくれるという安心感が心地よく、いつの間にか、ハロイドを聖騎士ではなく一人の男性として、愛し始めていることに気づく。
「ねえ。ハロイド、わたくしたち結婚しない?」
「ダメですよ!」
「え?」
ジェニファーは、初めて告白した男性から拒絶され、ショックで寝込むが、ハロイドはジェニファーを拒絶したわけではなかったのだが、言葉が足りずに、聖女様を混乱させてしまったことを悔いる。
ハロイドは、ジェニファーの熱が冷めるのを待ち、再び、ジェニファーの元に跪き、そのスカートの裾に唇を落としながら
「聖女様、心より聖女様を愛しています。ですから、自分の妻になってもらえないでしょうか?」
「え?だって、この前はダメって言ったじゃないの?」
「あれは、自分から結婚の申し込みをしたかったので、聖女様からしていただいたことに驚いてしまい、つい、出た言葉が……。」
「そうだったの?わたくしたち、やっぱりというか、これで両想いに慣れたのね!嬉しいわ。ハロイド。」
「自分も嬉しいです。」
そして初めて、手を握り合った二人は見つめあい、自然と唇が引き寄せられるように……!その時、ヴァルナガンドが二人の仲を裂くかのように割って入り、怒り出す。
「我を置いてけぼりにするではない!」
その姿に二人とも吹き出し、声をあげて笑いだす。
二人の間には、幸せオーラが漂い、聖女様を一目見ようと集まってきた信者さんたちも幸せ気分が伝染していく。
そして、何が楽しいかよくわからないまま、人々に囲まれたジェニファーは、その場に集まってきてくれた人々に祝福と加護を与える。
そういえば、
最初の鄙びた教会からずっと、同じ騎士の方が護衛してくださっていることに気づいていたが、まさか、あのお方が聖騎士様だとはつゆしらず、聖騎士は、普通の騎士と違い、国王の命令では動かず聖女様の命令しかきかない。
そう。サラシアには、こういう騎士がいなかったから、あんな国外追放になってしまったのだ。
ハロイド・アンダーソン。聖騎士の名前、ジェニファー好みのガタイがしっかりしたタイプ。科目で、必要なこと以外は静か。
そういう無口なところも、ジェニファーの好きなタイプだ。男の喋りは、ジェニファーは苦手で、だからフィリップとも、チャールズともあまり会話が進まない。
「バルセロナ国って、グッジョブよね。」
何げなく、独り言をつぶやいていると、ハロイドがクスっと反応してくれるところが嬉しい。
それに、ジェニファーが疲れているタイミングで、お茶を淹れてくれる気遣いが嬉しい。
そう。できれば、こういう男性と結婚したい。そういえば、サラシアでの聖女の加護、そろそろ切れている頃だと思うけど、大丈夫かしら。何かあれば、フィリップのことだから責任逃れをするために、ジェニファーのところへ言ってくるはず。でも、今のところ便りがないということは、セレンティーヌ様とお二人で危機を乗り越えられているのだろうと思う。
あの二人、人目もはばからずイチャイチャし通しだったもの。
きっと、今でもあの調子でやっているに違いないので、しばらくはこちらからお伺いを立てることを遠慮しよう。
そうこうしている間に、バルセロナに逗留してから半年が過ぎてしまい、さすがにこれ以上居座ることは、無遠慮に等しい。
「そろそろハロイドとも、お別れの日が近づいてきたわね。」
「自分は、聖騎士なので、国境は関係ございません。聖女様の命であれば、他国も干渉できない立場にあります。」
「え?そうなの?頼もしいわ。では、これからもよろしくね。」
「はい。こちらこそ。」
笑いあう姿は、まるで恋人同士に見える。
チャールズz殿下がその様子を見咎めて、苦言を呈する。
「聖騎士のくせに、聖女様と馴れ馴れしすぎる。」
それをバルセロナ国側は、嫉妬ととらえずに、
「聖騎士と聖女様は、そもそもそういう関係であることが望ましい。聖女様が気兼ねなく、思う存分祈りに専念できるからで、教会としても都合がよろしいのです。」
「そういうものですかね。」
「そういうものです。」
その後の日程は、当初の予定通り、マドリード国に寄ることになり、チャールズ殿下は一度もアンドロメダに帰らず、そのままジェニファーと共に巡礼の旅を続けるつもりでいるようだ。
マドリード国でも、ジェニファーの歓待ぶりはすさまじく、到着したその日の夜には、歓迎パーティが催されるほどだった。
いつもハロイドは、つかず離れずの距離でジェニファーの側にいてくれるという安心感が心地よく、いつの間にか、ハロイドを聖騎士ではなく一人の男性として、愛し始めていることに気づく。
「ねえ。ハロイド、わたくしたち結婚しない?」
「ダメですよ!」
「え?」
ジェニファーは、初めて告白した男性から拒絶され、ショックで寝込むが、ハロイドはジェニファーを拒絶したわけではなかったのだが、言葉が足りずに、聖女様を混乱させてしまったことを悔いる。
ハロイドは、ジェニファーの熱が冷めるのを待ち、再び、ジェニファーの元に跪き、そのスカートの裾に唇を落としながら
「聖女様、心より聖女様を愛しています。ですから、自分の妻になってもらえないでしょうか?」
「え?だって、この前はダメって言ったじゃないの?」
「あれは、自分から結婚の申し込みをしたかったので、聖女様からしていただいたことに驚いてしまい、つい、出た言葉が……。」
「そうだったの?わたくしたち、やっぱりというか、これで両想いに慣れたのね!嬉しいわ。ハロイド。」
「自分も嬉しいです。」
そして初めて、手を握り合った二人は見つめあい、自然と唇が引き寄せられるように……!その時、ヴァルナガンドが二人の仲を裂くかのように割って入り、怒り出す。
「我を置いてけぼりにするではない!」
その姿に二人とも吹き出し、声をあげて笑いだす。
二人の間には、幸せオーラが漂い、聖女様を一目見ようと集まってきた信者さんたちも幸せ気分が伝染していく。
そして、何が楽しいかよくわからないまま、人々に囲まれたジェニファーは、その場に集まってきてくれた人々に祝福と加護を与える。
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