離婚から玉の輿婚~クズ男は熨斗を付けて差し上げます

青の雀

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マザコン

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 新婚スペースの寝室では、きちんと服を着た久志とお義母様が正座している。二人とも血の気を失っている。決定的な現場を押さえられたので、言い訳のしようがないのだろう。

 ベッドの側には使用済みのコンドームが散乱している。たまたま出来心で関係を持ってしまったわけではないことは一目瞭然だったのだ。

 最初は、衝撃的な浮気現場だったが、今まで久志とエッチしているとき、時々、久志が冗談か何かだと思っていたけど、智子のことを「ままー」と呼ぶことがあり、さらに「おっぱい、ちゅっていい?」という幼児言葉を遣うこともあったことを思い出す。

 男性の中には、エッチの時だけ、幼児返りする性癖を持つ人もいるから、それだと勘違いしていたのだが、もっと早くに気づくべきだったと今更ながらに後悔をする。

 社長である義父が、床に頭をこすりつけて謝罪をしている。

 「すまない。智子さん、嫌がっている智子さんに無理にこんなバカ息子と結婚させてしまって、今後の償いはどのように請求されようと、すべて俺が責任を取る。だから今夜のところは、黙っていてくれ。」

 「イヤだ。俺は智子と離婚なんてしないよ、絶対イヤだ。ママのことは感謝しているけど、愛しているのは、智子だけなんだ。智子みたいな女、初めて出会ったよ。いつも俺のルックスと社長の息子だってだけで、女の方から股を開いてやってくる。でも、智子は違った。俺は一度振られたんだ。だから余計に智子のことが欲しくなったんだ。我が儘だ。獣だと罵られてもいい。だから、もう一度チャンスをくれ。」

 「無理です。浮気相手がアカの他人の女なら、許せることもあるでしょうけど、その相手がお義母様だったなんて……、どうしても無理です。」

 「聡子、聞いての通りだ。今夜は出て行ってくれ。お前は決して許されない道を踏み外してしまったのだ。だから何も言わずに俺の前から消えてくれ。俺が聡子を殺してしまう前に出て行ってくれ。」

 「ヒィっ!」

 お義母様はそのまま裸足で、出て行こうとする。誰も止めない。止められない。何も持たずにドアが閉まる音だけが聞こえる。

 結局、お義母様は、行く当てがないので、マンションのエントランスに一晩中いたとか?

 その日は、マンションに戻ることもせず、タワーマンションの来客スペースに入り、そこで寝ることにしたのだ。

 翌朝、シャワーを浴びている久志のスマートフォンにケルベロスアプリを仕込み、朝食の支度にとりかかった。

 朝食は誰も一言も言葉を発しないまま、黙々と食べ食器を片付ける。

 そういえば、お義母様の朝ごはんはどうするんだろうと思ったけど、昨日の今日なので、放っておく。

 久志が何とかするのが筋だから、久志の浮気相手の食事の心配をするなんて、そもそもおかしな話だから。

 智子はいったん、前に住んでいたマンションに戻ることにする。

 今後のことを見据え、いろいろ準備しなければならない。

 新居スペースから近いエレベーターを使うとお義母様と鉢合わせしてしまう可能性があるため、北北西のエレベーターのところまで行き、そこから1階に出た。

 区役所で離婚届をもらうために寄り、ついでだから、お義父様の分もいるかもと思い、2通もらう。

 自宅マンションに帰り、名刺ケースの中を物色して、一枚の名刺を見つけることに成功する。

 離婚するとなると、浅利物産に勤め続けることはできないだろうから、転職のための参考書を探しに行くことにする。SPIなどを探していると、公務員試験の募集要項があった。

 何気にそれを手に取り、ペラペラ見ていると、28歳の智子でも上級試験なら受けられることがわかる。

 どうせ転職活動はしなければならないのだから、ついでに公務員試験も受けることにしよう。

 公務員試験関係の参考書も買い込み、マンションに戻る。
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