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介護
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結婚式では、新郎の父親と新婦の父親が、共に同じ大学の同級生であることがわかり、終始和やかムードで式は進んでいく。
新居となるタワーマンションも、神崎のお義父様が用意してくださり、すでに引っ越しも終わっれいる。
新婚旅行から帰ってくるまでは、絵にかいたような幸せ感いっぱいだった。
ところが、新婚旅行から帰ってくるや否や、康夫と別居生活を余儀なくされる。
お義父様方の祖母がスキルス性乳がんで、余命半年ということから大姑の家に出向き、付きっ切りで看病してほしいということ。
その大姑の世話を一手に引き受けているのが、義父の妻の姑で、義父は仕事のため義母に全権を依頼しているということ。
介護保険でいくらでも、介護や看護の給付が受けられるのに、所得に見合った自己負担額3割を支払うのがイヤで、無料の看護師兼ヘルパー兼介護士調達のため、康夫は美桜に狙いを定め1年かけて口説き落としたということを知る。
3割負担の金額は、康夫が毎日届けてくれたお花代のことを考えると、そう変わらない金額なのに、お花代は払えても、介護保険の自己負担額を払うことを拒否するという神経がわからない。
そんなバカなことが……、外で働けば、スキルアップと収入の両方が見込めるというのに、かといって若すぎる看護師に年寄りの世話は無理だ。だから28歳ぐらいの美桜が適任と判断したようだ。
大姑は、末期がん患者というより、重度のアルツハイマーを患っていて、頻繁に徘徊をする。だから、少しの間も目が離せず、家の中の用事は片付かない。それに少しでも気に入らないことがあると、孫の嫁であろうとなかろうと杖を振り回して暴れる。
看護の専門知識がある美桜でも手を焼くほどのワガママぶりに3日で根を上げてしまう。
美桜は、内科、外科の看護師経験はあるが、精神科は専門外なので、鎮静剤投与などは医師の指示がなければできない。だから実質、素人と同じで何もできないということが康夫も姑もまるで理解していないところが困る。
ある日、大姑さんを散歩させているとき、体温計を大姑さんの家に置き忘れたことに気づく。戻ろうかと思ったけど、ここからならタワーマンションの美桜の私物を取りに帰った方が早い。それに、まだにほどきをしていないから、ついでに洋服だけでもクローゼットにかけたいと思い、大姑を連れて、結婚後初めて自宅に帰ることにしたのだ。
タワーマンションは、セキュリティが万全で、エントランスを抜けたところにコンシェルジュがいる。
自分の部屋のカギは持っていたけど、一応声をかけて入るのが常識だろうと思い、
「1801号室の神崎美桜です。」
「おかえりなさいませ。」
大姑は、初めて見るタワーマンションに興味津々の様子。そうボケ老人には、こういうことが大事なのです。いつも同じ風景、同じ人との会話は、若い健常者であっても、脳の活動が停止してしまう。
たまには、違う景色を見て、違うものを食べ、違う空気を吸うことが脳の活性化につながるというもの。
大姑さんは、いつもの猫背から、背筋を伸ばして、コンシェルジュの案内のままシャキシャキ歩き出す。
大姑の瞳は少女のようにキラキラ輝いている。こういう時は、「おばあちゃん」呼びをやめ、大姑さんの本名?「艶子さん」と呼び掛けると、さらに元気になる。
エレベーター前の操作盤も自ら操作しようと、美桜からカードキーを受け取り果敢にチャレンジしようとしている。
エレベーターに乗ったら乗ったで、ガラスの向こう側の景色を楽しんでいらっしゃる。そのおかげで、なかなか降りようとなさらない。一番上まで楽しんで、希望階を通り過ぎ、1階まで行き、その後希望階までを乗ったぐらいに。
美桜は、最上階までを3回繰り返されたら、確実に酔うわ。と思っていたけど、1回だけになりよかったと胸をなでおろしている。
新居となるタワーマンションも、神崎のお義父様が用意してくださり、すでに引っ越しも終わっれいる。
新婚旅行から帰ってくるまでは、絵にかいたような幸せ感いっぱいだった。
ところが、新婚旅行から帰ってくるや否や、康夫と別居生活を余儀なくされる。
お義父様方の祖母がスキルス性乳がんで、余命半年ということから大姑の家に出向き、付きっ切りで看病してほしいということ。
その大姑の世話を一手に引き受けているのが、義父の妻の姑で、義父は仕事のため義母に全権を依頼しているということ。
介護保険でいくらでも、介護や看護の給付が受けられるのに、所得に見合った自己負担額3割を支払うのがイヤで、無料の看護師兼ヘルパー兼介護士調達のため、康夫は美桜に狙いを定め1年かけて口説き落としたということを知る。
3割負担の金額は、康夫が毎日届けてくれたお花代のことを考えると、そう変わらない金額なのに、お花代は払えても、介護保険の自己負担額を払うことを拒否するという神経がわからない。
そんなバカなことが……、外で働けば、スキルアップと収入の両方が見込めるというのに、かといって若すぎる看護師に年寄りの世話は無理だ。だから28歳ぐらいの美桜が適任と判断したようだ。
大姑は、末期がん患者というより、重度のアルツハイマーを患っていて、頻繁に徘徊をする。だから、少しの間も目が離せず、家の中の用事は片付かない。それに少しでも気に入らないことがあると、孫の嫁であろうとなかろうと杖を振り回して暴れる。
看護の専門知識がある美桜でも手を焼くほどのワガママぶりに3日で根を上げてしまう。
美桜は、内科、外科の看護師経験はあるが、精神科は専門外なので、鎮静剤投与などは医師の指示がなければできない。だから実質、素人と同じで何もできないということが康夫も姑もまるで理解していないところが困る。
ある日、大姑さんを散歩させているとき、体温計を大姑さんの家に置き忘れたことに気づく。戻ろうかと思ったけど、ここからならタワーマンションの美桜の私物を取りに帰った方が早い。それに、まだにほどきをしていないから、ついでに洋服だけでもクローゼットにかけたいと思い、大姑を連れて、結婚後初めて自宅に帰ることにしたのだ。
タワーマンションは、セキュリティが万全で、エントランスを抜けたところにコンシェルジュがいる。
自分の部屋のカギは持っていたけど、一応声をかけて入るのが常識だろうと思い、
「1801号室の神崎美桜です。」
「おかえりなさいませ。」
大姑は、初めて見るタワーマンションに興味津々の様子。そうボケ老人には、こういうことが大事なのです。いつも同じ風景、同じ人との会話は、若い健常者であっても、脳の活動が停止してしまう。
たまには、違う景色を見て、違うものを食べ、違う空気を吸うことが脳の活性化につながるというもの。
大姑さんは、いつもの猫背から、背筋を伸ばして、コンシェルジュの案内のままシャキシャキ歩き出す。
大姑の瞳は少女のようにキラキラ輝いている。こういう時は、「おばあちゃん」呼びをやめ、大姑さんの本名?「艶子さん」と呼び掛けると、さらに元気になる。
エレベーター前の操作盤も自ら操作しようと、美桜からカードキーを受け取り果敢にチャレンジしようとしている。
エレベーターに乗ったら乗ったで、ガラスの向こう側の景色を楽しんでいらっしゃる。そのおかげで、なかなか降りようとなさらない。一番上まで楽しんで、希望階を通り過ぎ、1階まで行き、その後希望階までを乗ったぐらいに。
美桜は、最上階までを3回繰り返されたら、確実に酔うわ。と思っていたけど、1回だけになりよかったと胸をなでおろしている。
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