離婚から玉の輿婚~クズ男は熨斗を付けて差し上げます

青の雀

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痴漢

7.

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 陽子は、というと四菱の専務とイイ仲になっている。

 正彦と別れてからの陽子の荷物は、そのまま25階から33階の部屋へ運び込まれ、ルームシェアをしている。

 実は四菱の社長の息子が代表取締役専務取締役で、つまり四菱の次期社長と同棲しているということ。

 思いがけずに玉の輿に乗りそうになり、内心慌てたものの、専務の俊平は、前々から陽子のことが気に入っていて、社長も、いずれ息子の嫁にしたいと思っていらっしゃったとか。それが1年半前にあった痴漢事件の後、あれよあれよという間に本郷とか言うコピーライターに横から掻っ攫われるという事態になってしまったから、苦汁を呑まされたというわけ。

 再婚禁止期間は、陽子の心とカラダの傷を治すのに、十分な時間。

 ただの一時しのぎの同居人から、友人、恋人へと移行するのに、時間はかからなかった。

 そして再婚禁止期間が終了する頃には、すっかり愛し合う関係になっていく。

 あれだけ頑張って引継ぎをしていたこと、最近は、退職話があったことすらウソのように消えてしまい、本郷陽子は最初から存在せず、飛鳥井陽子が社長秘書で、専務の婚約者としてのポジションを確立している。

 陽子自身も、あれは何か悪い夢を見ていたと努めて忘れようとしている。

 それから時は流れ、今日は飛鳥井陽子としての最後の出勤日で、しばらく有給休暇を取り、1か月後には結婚式を控える日となった。

 飛鳥井陽子が玉の輿に乗ったことは、丸の内界隈のOLの間では、かなり有名な話で、その恩恵にあずかろうと、それから社長秘書になりたがる者が増えたらしい。

 でも、計数管理や語学力を前に断念してしまう娘が後を絶たない。

 家柄としては、確かに飛鳥井陽子は玉の輿だったかもしれないが、仕事の能力という点においては、決して専務取締役と引けを取らない実力者だから、玉の輿というよりは対等婚といった感じが強い。

 そして、いよいよ結婚式当日の朝、純白のウエディングドレスに身を包んだ陽子は、2度目とも思えない幸せを味わっている。陽子の両親が駆けつけてくれ、

 「陽子、きれいだよ。おめでとう。今度こそ、幸せになってくれ。」

 「ありがとう。お父さん、お母さん、二度も続けてカスは嫌だから、今度こそ幸せになるわ。いえ、なってみせる!」

 陽子は結婚後も仕事を続ける意向で、社長の義父、専務の夫もそれを了承してくれる。

 新婚旅行はプーケット島で、しばらくのんびりする予定。急いで、子供を作らず新婚生活を楽しむつもりでいる。

 離婚後の前府の状況は知る由もない。
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