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王立学園の卒業記念祝賀パーティでのこと、卒業生のみならず、父兄、保護者、王太子夫妻も臨席いただいている。この物語の主人公オフィーリアの姉が王太子妃殿下なのであるが、姉とは、昔からそりが合わず、いわゆる犬猿の仲なのである。
そして、両親は姉ばかりを依怙贔屓していて、溺愛しているのである。姉妹喧嘩したら、理由も聞かずなんでもオフィーリアが悪いと決めつけられ、最後は体罰を加えられる。
「公爵令嬢オフィーリア・モンドバール、貴様とは今をもって、婚約を破棄とする。」
高らかに宣言される第2王子殿下のサイモン・ブルッスリン様、卒業と同時に我が公爵家へ婿養子として入られる方である。姉が王家に嫁いだので、かわりに、第2王子様を養子として迎え入れられるはずだったのに。
「なぜでございますか?理由をお聞かせくださいますか?」
「貴様は浮気していただろうが!」
「は?誰と?」
「公爵邸に何人もの男を連れ込んで、逆ハーレムを作っていたそうだな?」
「はぁ~?なんのことですか?わたくしは、知りません。人違いではありませんか?そんなお相手おりませんわ。」
「証人がいる。貴様の姉のイヴリージュ妃殿下であるぞ!観念いたせ。」
その時まで、オフィーリアの眼中にも入っていなかった姉が、突如として目の前に現れ
「わたくしが、偶然実家へ立ち寄った時、笑い声が聞こえるので、そっとオフィーリアの私室を覗いてみたのでございます。そうしてみたら、ふしだらな格好で何人もの男子生徒にカラダを弄りまわされているオフィーリアが嬌声を上げているではありませんか!驚きましたわ。この学園の制服を着ていたので、相手は、この学園の生徒だと思いますが、一度拝見しただけですから顔まではどなたかと断定できませんわ。」
姉は庇護欲が掻き立てられるようなタイプで夫であるガーファンクル王太子は姉にメロメロである。
「辛い現場を見てしまったんだね、イヴリージュ。」
「わたくしより、おかわいそうなのは、サイモン様ですわ。」
「なんと!お優しい。それに引き換え淫乱女のオフィーリアとは、大違いである。オフィーリアの処分は、イヴリージュ妃殿下に任せることにしましょう。」
姉が嘘をついているのに、誰も姉の嘘を気づかないでいる。
オフィーリアが、複数の男たちを公爵邸に招き入れていたら、使用人の誰かが気づき、両親に告げ口しているというのに、誰もしていない。両親を見ると怒りで顔を真っ赤にしている。だって、そんな事実ないもの。オフィーリアを嵌めようとして、イヴリージュがこともあろうに今日この日を選ぶなど、思いもしなかったことである。
「そうね。かわいい妹を断罪するなんて、わたくしにはそんな真似できませんわ。でもサイラス様がお可愛そうですし、オフィーリア、あなたを国外追放処分にいたします。お相手の取り巻き男子生徒を何人連れて行っても構いませんことよ。かの地で思う存分、励みなさい。」
「さすが!お優しいイヴリージュ様、寛大なご処分傷み入ります。」
なぜか、両親が感涙にむせぶ。
いや、だってわたくし無実なのですよーーー!と言っても誰も耳を貸してくれない。
その時、耳元でバっシーン!大きな音がしたと思ったら、わたくしは、真横に吹っ飛んでいました。また両親からの体罰です。両親は、いつも姉イヴリージュの味方である。
痛みよりも、またかというあきらめが強い。
「何をグズグズしておる!お前などもう娘でもなんでもないわ!さっさと出て行け!」
立つことも出来ないオフィーリアは、衛兵に引きずられて、会場を追い出され、そのまま罪人用の馬車に乗せられ、国境付近で捨てられることになったのである。
実は、オフィーリアは、以前、たまたま訪れた領地のさびれた教会で聖女認定をされているのである。その時は、だれにも言っていない。言えば、イヴリージュにどんな仕打ちをされるかわからないから、聖女認定は、純潔でないとされないものである。聖女に認定されれば、一生神様に仕えるか、その国の国王になるべく人と結婚するか二つに一つであるから。姉のイヴリージュは、すでにその時、ガーファンクル王太子殿下と結婚していたから聖女認定が明らかになれば、殺されるかもしれなかったのである。
今回の国外追放処分は、願ってもないことである。やっとイヴリージュから自由になれる。モンドバールの家からも自由になれるのである。
オフィーリアが聖女であることは、使用人は全員知っていたが、イヴリージュとの幼い時からの関係をよく知っていてくれていたので、皆、モンドバール家には一言も言わず、黙ってくれていたことはありがたかった。
オフィーリアが国境付近で捨てられられたという話は、領地と王都の使用人全員に伝えられ、衝撃が走ることになったのである。
使用人は、オフィーリアの後を追い、国境へ向かうものが続出したのである。
領地の使用人は、モンドバール家の馬車を、馬を使い、オフィーリアの元へ向かうのである。「お嬢様を一人にしてはいけない。」という思いから。
使用人の中には、アイテムボックス持ちがいたので、公爵邸の屋敷ごと、自分のアイテムボックスに放り込んで、立ち去っていく。
王都の使用人も同然で、着の身着のままで、オフィーリアの元へ向かうのである。
卒業パーティから戻ってきた両親が見たものは、公爵邸の門をくぐるとだだっ広い空き地だけが広がっていたのである。
「ええええええ~!なんじゃこりゃぁ!家は何処へ行った?屋敷は?いったいどうなっている?」
使用人のことなど、心配していない。自分の財産が失われていることを心配している。仕方なくイヴリージュに言って、王城へ泊めてもらえるように手配することにしたのである。
そして、両親は姉ばかりを依怙贔屓していて、溺愛しているのである。姉妹喧嘩したら、理由も聞かずなんでもオフィーリアが悪いと決めつけられ、最後は体罰を加えられる。
「公爵令嬢オフィーリア・モンドバール、貴様とは今をもって、婚約を破棄とする。」
高らかに宣言される第2王子殿下のサイモン・ブルッスリン様、卒業と同時に我が公爵家へ婿養子として入られる方である。姉が王家に嫁いだので、かわりに、第2王子様を養子として迎え入れられるはずだったのに。
「なぜでございますか?理由をお聞かせくださいますか?」
「貴様は浮気していただろうが!」
「は?誰と?」
「公爵邸に何人もの男を連れ込んで、逆ハーレムを作っていたそうだな?」
「はぁ~?なんのことですか?わたくしは、知りません。人違いではありませんか?そんなお相手おりませんわ。」
「証人がいる。貴様の姉のイヴリージュ妃殿下であるぞ!観念いたせ。」
その時まで、オフィーリアの眼中にも入っていなかった姉が、突如として目の前に現れ
「わたくしが、偶然実家へ立ち寄った時、笑い声が聞こえるので、そっとオフィーリアの私室を覗いてみたのでございます。そうしてみたら、ふしだらな格好で何人もの男子生徒にカラダを弄りまわされているオフィーリアが嬌声を上げているではありませんか!驚きましたわ。この学園の制服を着ていたので、相手は、この学園の生徒だと思いますが、一度拝見しただけですから顔まではどなたかと断定できませんわ。」
姉は庇護欲が掻き立てられるようなタイプで夫であるガーファンクル王太子は姉にメロメロである。
「辛い現場を見てしまったんだね、イヴリージュ。」
「わたくしより、おかわいそうなのは、サイモン様ですわ。」
「なんと!お優しい。それに引き換え淫乱女のオフィーリアとは、大違いである。オフィーリアの処分は、イヴリージュ妃殿下に任せることにしましょう。」
姉が嘘をついているのに、誰も姉の嘘を気づかないでいる。
オフィーリアが、複数の男たちを公爵邸に招き入れていたら、使用人の誰かが気づき、両親に告げ口しているというのに、誰もしていない。両親を見ると怒りで顔を真っ赤にしている。だって、そんな事実ないもの。オフィーリアを嵌めようとして、イヴリージュがこともあろうに今日この日を選ぶなど、思いもしなかったことである。
「そうね。かわいい妹を断罪するなんて、わたくしにはそんな真似できませんわ。でもサイラス様がお可愛そうですし、オフィーリア、あなたを国外追放処分にいたします。お相手の取り巻き男子生徒を何人連れて行っても構いませんことよ。かの地で思う存分、励みなさい。」
「さすが!お優しいイヴリージュ様、寛大なご処分傷み入ります。」
なぜか、両親が感涙にむせぶ。
いや、だってわたくし無実なのですよーーー!と言っても誰も耳を貸してくれない。
その時、耳元でバっシーン!大きな音がしたと思ったら、わたくしは、真横に吹っ飛んでいました。また両親からの体罰です。両親は、いつも姉イヴリージュの味方である。
痛みよりも、またかというあきらめが強い。
「何をグズグズしておる!お前などもう娘でもなんでもないわ!さっさと出て行け!」
立つことも出来ないオフィーリアは、衛兵に引きずられて、会場を追い出され、そのまま罪人用の馬車に乗せられ、国境付近で捨てられることになったのである。
実は、オフィーリアは、以前、たまたま訪れた領地のさびれた教会で聖女認定をされているのである。その時は、だれにも言っていない。言えば、イヴリージュにどんな仕打ちをされるかわからないから、聖女認定は、純潔でないとされないものである。聖女に認定されれば、一生神様に仕えるか、その国の国王になるべく人と結婚するか二つに一つであるから。姉のイヴリージュは、すでにその時、ガーファンクル王太子殿下と結婚していたから聖女認定が明らかになれば、殺されるかもしれなかったのである。
今回の国外追放処分は、願ってもないことである。やっとイヴリージュから自由になれる。モンドバールの家からも自由になれるのである。
オフィーリアが聖女であることは、使用人は全員知っていたが、イヴリージュとの幼い時からの関係をよく知っていてくれていたので、皆、モンドバール家には一言も言わず、黙ってくれていたことはありがたかった。
オフィーリアが国境付近で捨てられられたという話は、領地と王都の使用人全員に伝えられ、衝撃が走ることになったのである。
使用人は、オフィーリアの後を追い、国境へ向かうものが続出したのである。
領地の使用人は、モンドバール家の馬車を、馬を使い、オフィーリアの元へ向かうのである。「お嬢様を一人にしてはいけない。」という思いから。
使用人の中には、アイテムボックス持ちがいたので、公爵邸の屋敷ごと、自分のアイテムボックスに放り込んで、立ち去っていく。
王都の使用人も同然で、着の身着のままで、オフィーリアの元へ向かうのである。
卒業パーティから戻ってきた両親が見たものは、公爵邸の門をくぐるとだだっ広い空き地だけが広がっていたのである。
「ええええええ~!なんじゃこりゃぁ!家は何処へ行った?屋敷は?いったいどうなっている?」
使用人のことなど、心配していない。自分の財産が失われていることを心配している。仕方なくイヴリージュに言って、王城へ泊めてもらえるように手配することにしたのである。
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