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76神鳥

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 魔法鳥の案内で、空を飛んでいくと一つの檻が見えてきた。

 檻の横にいる兵士は、たばこを吸い、博打に興じているように見える。

 たぶん、アレだな?

 エリオットとオリヴィアは、目配せをして、隠蔽魔法をかけ近づく。檻のすぐ近くの木の枝に鍵をひっかけているようだったので、そーっとそのカギを外しに行き、鍵を開ける。

 中に入ると、エリオットの顔の部分だけを隠蔽を解き、助けに来たことを知らせる。

 両親は、驚きつつも安どの表情を見せる。全員に転移魔法をかけ、旧アンダルシアの王都、タウンハウスへと帰る。

 どういうわけか、魔法鳥も一緒について来てしまった。

 転移魔法をかけていないのに、おかしい。

 「もう、アナタは自由の身よ。だからどこかに飛んでいきなさい。」

 いくら諭しても、言うことを聞いてくれない。それどころか、オリヴィアの肩やエリオットの頭の上に載ってきて、甘えるしぐさをする。

 インプリンティング薬が効きすぎてしまったためだろうか?

 でも、懐いてくるとなかなか可愛い。そこでこの鳥に「ピーちゃん」と名前を付け、ペットにすることにしたのだ。

 そうすると、さっきからふくれっ面をしているのがライオンちゃんである。

 何が気に入らないのか、ピーちゃんを追いかけまわしては、オリヴィアに叱られている。

 オリヴィアは、ペットにしたつもりでも、聖女様が名前を付けたことから、ライオンちゃんと同じ神獣?神鳥?の一員になってしまったのだ。

 聖女様にティムされた神鳥は、不思議な能力を身に着けることになる。

 そのピーちゃんがついに!人間の言葉を喋った瞬間がある。

 「あのね。聖女様、さっきマルベールの上空を飛んでいたら、隣国のクランベールの兵士の姿を見たよ。きっとこれから戦争になるかもしれないよ。」

 「え?それ、本当なの?クランベールがマルベールに侵攻しているということ?」

 あり得ない話ではない。魔物にやられ、青菜に塩の状態を攻め落とすことなどいとも簡単であろう。

 そうなると、そこそこ両国の兵隊が出ているときに上からインプリンティングの雨を降らせれば、両国の兵士を服従させることができ、戦わずして、降伏させることができる。

 二国を支配下に治めることができるならば、もう男妾などと言うバカな発想は出てこないであろう。

 「ちょっと様子を見てこようか?」

 今度は、ライオンちゃんも行きたそうにしている。でも、空飛ぶの、コワイって言ってたじゃん。

 ピーちゃんへのライバル心からか、空を飛ぶ恐怖心より、負けたくないという思いが強いのかな?

 それでも空の上では、目を開けていないみたい。下を見ることが余程、怖いのか、前足を片方はオリビアと手を繋いで、もう片方はエリオットと手を繋いでいる。

 何のための視察か、本末転倒ということ。

 確かにクランベールとの国境を超え、マルベール側に侵攻しているように見える。その数10万軍はあろう。

 ただでさえ、焼け野原のところをさらに火をかけ進んでいく様は、見ていて気持ちがいいものではない。

 あの魔物が踏み荒らした後でも、まだ生き残っている人々を容赦なく斬り捨てていく。そして火をかけ、進んでいくのだ。まだ子供かと思えるような少女を馬の腹に括り付け、蹂躙していく様は、不快そのもの。

 「今すぐ雨を降らせられない?」

 「やってやれないことはないけど……。いいのか、本当にやって?」

 「いいわ。こんな光景見たくないもの。」

 「わかった。」

 エリオットは、異空間研究室から大型のタンクを取り出し、ホースでインプリンティング薬を撒き始める。ついでに噴霧器も使う。必然的にライオンちゃんの手を離し、ライオンちゃんは、恐怖におののきながら、空中に浮かんでいる状態になったのだ。

 そのライオンちゃんの周りをピーちゃんが面白そうに飛び回るものだから、ライオンちゃんはカンカンに激怒している。
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