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62慰め?
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オリヴィアへの縁談は止まることなく、隣国マルベールの王族からも来る。
マルベールは全滅したが、王族だけはうまく逃げおおせたようだった。
民衆を見殺しにしても、自分たちだけは助かるという根性に嫌悪感を覚える。
そのくせ、やけに高飛車な態度が気にかかる。やはりマリリンちゃんが言っていたように、ゲームの強制力というものが働いているのだろうか?
「お断りさせていただきます。どうしてわたくしが、敗北し全滅したような国の王子様と結婚しなければなりませんの?理解できませんわ。」
「何を無礼な!たかが辺境伯令嬢の分際で!聖女様でなければ、貴様など斬り捨てているところだ。」
その言葉にユリウス以下ヤーパン国の暗殺部隊は色めき立つ。
「どうぞ、ご自由に。アナタになんかがわたくしを斬れるものですか?やれるものなら、やってごらんなさいませ。」
「な、何を!」
マルベール王子は剣の柄に手をかけた途端、首元に数十本の剣が向けられる。
それをオリヴィアが制止して、
「やれるものなら、やってみなさい。そんなナマクラで聖女ひとりが斬れるものですか!」
ムキになって、王子はオリヴィアに剣を振り下ろそうとするが、何かに弾かれ当たらない。
そう、オリヴィアには結界が施されている。
「ほらね。でも聖女を、殺意をもって、殺害しようとしたことは事実として残りましたわね。ここは、旧アンダルシア国、この国の法では聖女殺しは大罪で、死罪となりますわ。連れて行きなさい!」
マルベール国の側近は、ただオロオロするばかり。
「放せ!俺を誰だと思っている?俺は、マルベールの第1王子だぞ!」
ズルズルと引きずられるようにして、去っていく王子の後ろ姿に向かって、側近の一人が言い放つ。
「あの男は、マルベール国とは、一切関係ございません。ですから存分にご処分してくださいませ。そのかわり、マルベールにはまだ第2王子に第3王子と言った優秀な男子がおりますゆえに、ぜひともまた縁談を進めさせていただきたく、色よいお返事をお待ち申し上げております。」
側近に見放されたことを知った王子様は、ガックリとうなだれ、その後の取り調べに素直に応じたということです。
もし、マリリンが言うように乙女ゲームの世界だったとして、あんな王子と結婚する羽目だったかと思うと、今さらながらにゾっとする。
やっぱり乙女ゲームの中身を知らなくて、よかったと心から思う。知らないからこそ、自由に動けるということもある。
もし知っていたとしたら、がんじがらめになって、たぶん悩んでいたと思うわ。
知らぬが仏
それにしても、世界各国からの縁談には辟易する。さすがにアデセア国からはない。
あの絨毯を仕入れたサイジア国からも、来ている。養子に入るつもりなのかしら?それとも、単なる聖女を嫁にしたいだけか、はわからない。
サイジア国の王子様は、前世で言えば、アラブの王子様風。きっと贅沢な暮らしをさせてくれそうだけど、第1夫人になれるかどうかは、わからない。
前世、第2夫人と聞けば、ニッポンでは2号さんのようなものを想像してしまいがちになるが、第2夫人と第1夫人のレベルは実は同じで、平等に扱われる。第1夫人だけが本妻で、後は妾ではないのだ。
だから第2夫人であろうが、第3夫人であろうが、構わないと言えば、構わないのだが、前世の記憶が頭をもたげ、どうしても妾と言う概念が離れない。
そうか浮気者の亭主として、旦那様を見てしまう。
いずれにせよ、まだオリヴィアは運命の人との出会いをしていない。たくさんの王子様の絵姿を見て、ため息をついている。
そこへお母様がやってきて
「大丈夫よ。リヴィちゃんにピッタリのコレという人が現れるわよ。焦ることないわよ。」
それ、慰めになっていないのですが……。
マルベールは全滅したが、王族だけはうまく逃げおおせたようだった。
民衆を見殺しにしても、自分たちだけは助かるという根性に嫌悪感を覚える。
そのくせ、やけに高飛車な態度が気にかかる。やはりマリリンちゃんが言っていたように、ゲームの強制力というものが働いているのだろうか?
「お断りさせていただきます。どうしてわたくしが、敗北し全滅したような国の王子様と結婚しなければなりませんの?理解できませんわ。」
「何を無礼な!たかが辺境伯令嬢の分際で!聖女様でなければ、貴様など斬り捨てているところだ。」
その言葉にユリウス以下ヤーパン国の暗殺部隊は色めき立つ。
「どうぞ、ご自由に。アナタになんかがわたくしを斬れるものですか?やれるものなら、やってごらんなさいませ。」
「な、何を!」
マルベール王子は剣の柄に手をかけた途端、首元に数十本の剣が向けられる。
それをオリヴィアが制止して、
「やれるものなら、やってみなさい。そんなナマクラで聖女ひとりが斬れるものですか!」
ムキになって、王子はオリヴィアに剣を振り下ろそうとするが、何かに弾かれ当たらない。
そう、オリヴィアには結界が施されている。
「ほらね。でも聖女を、殺意をもって、殺害しようとしたことは事実として残りましたわね。ここは、旧アンダルシア国、この国の法では聖女殺しは大罪で、死罪となりますわ。連れて行きなさい!」
マルベール国の側近は、ただオロオロするばかり。
「放せ!俺を誰だと思っている?俺は、マルベールの第1王子だぞ!」
ズルズルと引きずられるようにして、去っていく王子の後ろ姿に向かって、側近の一人が言い放つ。
「あの男は、マルベール国とは、一切関係ございません。ですから存分にご処分してくださいませ。そのかわり、マルベールにはまだ第2王子に第3王子と言った優秀な男子がおりますゆえに、ぜひともまた縁談を進めさせていただきたく、色よいお返事をお待ち申し上げております。」
側近に見放されたことを知った王子様は、ガックリとうなだれ、その後の取り調べに素直に応じたということです。
もし、マリリンが言うように乙女ゲームの世界だったとして、あんな王子と結婚する羽目だったかと思うと、今さらながらにゾっとする。
やっぱり乙女ゲームの中身を知らなくて、よかったと心から思う。知らないからこそ、自由に動けるということもある。
もし知っていたとしたら、がんじがらめになって、たぶん悩んでいたと思うわ。
知らぬが仏
それにしても、世界各国からの縁談には辟易する。さすがにアデセア国からはない。
あの絨毯を仕入れたサイジア国からも、来ている。養子に入るつもりなのかしら?それとも、単なる聖女を嫁にしたいだけか、はわからない。
サイジア国の王子様は、前世で言えば、アラブの王子様風。きっと贅沢な暮らしをさせてくれそうだけど、第1夫人になれるかどうかは、わからない。
前世、第2夫人と聞けば、ニッポンでは2号さんのようなものを想像してしまいがちになるが、第2夫人と第1夫人のレベルは実は同じで、平等に扱われる。第1夫人だけが本妻で、後は妾ではないのだ。
だから第2夫人であろうが、第3夫人であろうが、構わないと言えば、構わないのだが、前世の記憶が頭をもたげ、どうしても妾と言う概念が離れない。
そうか浮気者の亭主として、旦那様を見てしまう。
いずれにせよ、まだオリヴィアは運命の人との出会いをしていない。たくさんの王子様の絵姿を見て、ため息をついている。
そこへお母様がやってきて
「大丈夫よ。リヴィちゃんにピッタリのコレという人が現れるわよ。焦ることないわよ。」
それ、慰めになっていないのですが……。
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