47 / 80
47マリリン
しおりを挟む
マリリン・リンカーンを覚えておいでだろうか?
オリヴィアが学園を追い出されてから、サーカス団に拾われて、サーカスのお抱え専属医となったある日、興行先の子爵家領主へあいさつに行ったとき、転生者のマリリンと出会った。
オリヴィアの前世、神野太郎と同じく東都医科大学付属病院で看護師をしていた速水凛子だったのだ。
その彼女が看護業務の傍ら、ドハマリして遊んでいた乙女ゲームの世界に瓜二つが、今、この異世界らしいということを聞いた。
確か『救国の聖女様』という名の乙女ゲームと聞いた記憶がかすかにある。
オリヴィアは、乙女ゲームの中だと聞かされても、そもそも乙女ゲームに興味がなく、あらすじを聞かされたところで、何か行動する気は、サラサラなかったので、その時はそのまま聞き流していたのだが。
今、目の前にそのマリリンが鬼の形相をしながら、座っている。
「どうして、マルベールに行かなかったのよ?」
あの頃は4歳のおさなごで今は、7歳ぐらいになっているのだろうか?背も伸び、横にも大きくなっている。
「よくここがわかったわね。」
「パパがアデセルと通商しているのよ。それで、この国で誰かが聖女様に覚醒したって聞いたから、ピンと来たわ。リヴィは、マルベールに行って魔物退治して、それから王子様と結婚するのよ。それなのに、勝手にアデセルなんかに行ってしまって。」
「アデセルは、暖かくて、いいところよ。ほら前世のO県みたいでしょ。人々は親切だし、時間がゆっくり流れているような気がするわ。」
「あのねっ!ゲームには強制力というものがあるのよ?王子様と結婚したくはないの?」
「わたくし、もうしばらくしたら、アデセルの王子様と結婚するのよ。結婚式には招待させていただくわ。」
「えええー!それ、本当?おめでとう。Storyは、変わっても、やっぱり王子様と結婚する運命にあるのね。へぇー。」
少女から、しきりに感心されてもね。
「こちらには、しばらくいられるの?」
「そのつもりよ。マンゴーやパイナップルをたくさん食べるわ。ねぇ、旦那さんになる王子様を紹介してよ。どんな人?かっこいい?あ、……!それより、バーモンド殿下は行方不明になられたって話よ。知ってる?」
「え?それは、いつのこと?」
「うーーん、いつだったかな?リヴィと会って、そんなに時間は経っていないような?しばらくしてからの話だと思うわよ?」
そう言えば、この前、王都に絨毯を売りに行ったとき、ステファニーおばあさんの家ごとなかったわ。
あの時、「真の聖女様はステファニーおばあさんである」と告げたからか?ステファニーおばあさんもろとも連絡がつかなくなったのは、バーモンドと関係があるのかしら?
あれは、逃げるための時間稼ぎのつもりで言ったんだけど、軽はずみなことを言ってしまったみたい。
まさか?バーモンドがステファニーおばあさんを手にかけ、自責の念で出奔したとか?それとも、二人で駆け落ちしたこともあり得る話よね。バーモンドは、ああ見えて、マザコンなところがあったから。
頭の中をいろんな考えが浮かんでは、消える。かぶりを振って、そんな考えを打ち払う。
その姿を見て、マリリンは変に気を回す。
「あれれー?ひょっとして、逃がした魚は大きいとか、思ってる?」
「そんなわけないでしょ?」
と、そこへアールスハイド殿下がやってくる。
「これは、これは、可愛らしいお客様だったのですね。」
アールは、アンダルシアからの客と聞いて、身構えて、何かあれば、オリヴィアを守るつもりで部屋に入ってきたようだ。
「あっは。初めまして、マリリン・リンカーンでございます。アンダルシアでは、子爵家の令嬢をしております。」
マリリンは、やや緊張した面持ちで、ペコリと頭を下げている。
オリヴィアが学園を追い出されてから、サーカス団に拾われて、サーカスのお抱え専属医となったある日、興行先の子爵家領主へあいさつに行ったとき、転生者のマリリンと出会った。
オリヴィアの前世、神野太郎と同じく東都医科大学付属病院で看護師をしていた速水凛子だったのだ。
その彼女が看護業務の傍ら、ドハマリして遊んでいた乙女ゲームの世界に瓜二つが、今、この異世界らしいということを聞いた。
確か『救国の聖女様』という名の乙女ゲームと聞いた記憶がかすかにある。
オリヴィアは、乙女ゲームの中だと聞かされても、そもそも乙女ゲームに興味がなく、あらすじを聞かされたところで、何か行動する気は、サラサラなかったので、その時はそのまま聞き流していたのだが。
今、目の前にそのマリリンが鬼の形相をしながら、座っている。
「どうして、マルベールに行かなかったのよ?」
あの頃は4歳のおさなごで今は、7歳ぐらいになっているのだろうか?背も伸び、横にも大きくなっている。
「よくここがわかったわね。」
「パパがアデセルと通商しているのよ。それで、この国で誰かが聖女様に覚醒したって聞いたから、ピンと来たわ。リヴィは、マルベールに行って魔物退治して、それから王子様と結婚するのよ。それなのに、勝手にアデセルなんかに行ってしまって。」
「アデセルは、暖かくて、いいところよ。ほら前世のO県みたいでしょ。人々は親切だし、時間がゆっくり流れているような気がするわ。」
「あのねっ!ゲームには強制力というものがあるのよ?王子様と結婚したくはないの?」
「わたくし、もうしばらくしたら、アデセルの王子様と結婚するのよ。結婚式には招待させていただくわ。」
「えええー!それ、本当?おめでとう。Storyは、変わっても、やっぱり王子様と結婚する運命にあるのね。へぇー。」
少女から、しきりに感心されてもね。
「こちらには、しばらくいられるの?」
「そのつもりよ。マンゴーやパイナップルをたくさん食べるわ。ねぇ、旦那さんになる王子様を紹介してよ。どんな人?かっこいい?あ、……!それより、バーモンド殿下は行方不明になられたって話よ。知ってる?」
「え?それは、いつのこと?」
「うーーん、いつだったかな?リヴィと会って、そんなに時間は経っていないような?しばらくしてからの話だと思うわよ?」
そう言えば、この前、王都に絨毯を売りに行ったとき、ステファニーおばあさんの家ごとなかったわ。
あの時、「真の聖女様はステファニーおばあさんである」と告げたからか?ステファニーおばあさんもろとも連絡がつかなくなったのは、バーモンドと関係があるのかしら?
あれは、逃げるための時間稼ぎのつもりで言ったんだけど、軽はずみなことを言ってしまったみたい。
まさか?バーモンドがステファニーおばあさんを手にかけ、自責の念で出奔したとか?それとも、二人で駆け落ちしたこともあり得る話よね。バーモンドは、ああ見えて、マザコンなところがあったから。
頭の中をいろんな考えが浮かんでは、消える。かぶりを振って、そんな考えを打ち払う。
その姿を見て、マリリンは変に気を回す。
「あれれー?ひょっとして、逃がした魚は大きいとか、思ってる?」
「そんなわけないでしょ?」
と、そこへアールスハイド殿下がやってくる。
「これは、これは、可愛らしいお客様だったのですね。」
アールは、アンダルシアからの客と聞いて、身構えて、何かあれば、オリヴィアを守るつもりで部屋に入ってきたようだ。
「あっは。初めまして、マリリン・リンカーンでございます。アンダルシアでは、子爵家の令嬢をしております。」
マリリンは、やや緊張した面持ちで、ペコリと頭を下げている。
0
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
オルブライト公爵家の女たち~フェロモン女王を溺愛するためなら、えんやこら
青の雀
恋愛
婚約破棄から玉の輿 112話スピンオフ
本編では3女スカーレットの話からでしたが、長女、次女もストーリー展開します。
我がオルブライト公爵家は、代々顔だけ美人を輩出する家である。高位貴族は、とにかく美人を嫁にしたい。ブス・ブサイクな子供ができてほしくないからである。それで、生まれてすぐ女の子なら、即刻、縁談が決まってしまうのである。ちょうど血統書付きの愛玩動物のようなものである。もし生まれてきたのが男児である場合は、長男を除いて次男は、スペア価値があるが、三男以降は、皆、どこかの貴族の養子としてもらわれていく。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる