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44電気毛布
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オリヴィアが、アンダルシア王都で商売をした次の日のこと。
王城では、ちょっとした騒ぎが起こっている。
「なんだとぉ?マリンsyトーン怪我聖女様の絨毯を買い占めだと?」
最後の100枚足らずを、オリヴィアがいじめたと流言をしたマーガレットの実家の公爵家がすべて買い取ってくれたのだ。
「聖女様には、ウチの愚娘のせいで、大変なご迷惑をおかけしたのでございますれば、これぐらいのお詫びは当然のことでございます。」
言い値の倍近い値段で買い占めてくれたのだが、マリンストーン家では、廊下やリビングに敷かず、寝室にベッドの上に敷いて、寝ているそうだ。
まるで電気毛布のかわりに、それはそれで心臓に悪いような気もするけど、使い道まで指図できる立場ではない。
そのことを王家が怒っているのである。
「すべてとは、言わないが、せめて半分ぐらいは王家へ献上してもよかろう?」
「は?なぜでございますか?マーガレットはバーモンド殿下、クリストファー殿下の手により、処刑されたのでございますよ?さんざん辱めを受けた挙句に。」
「それは、帥の娘が聖女様からいじめを受けたと報告したからではないのか?」
「マーガレットがいじめられていると最初に言い出したのは、クリストファー殿下ではあらせられませぬか?それをウチの娘一人に咎を負わせ、ウチの娘は聖女様が処刑されるところを救ったのでございますよ。それなのに、今度はホットカーペットを献上しろとは、あまりに無体な要求ではございませんか?当家は、売価の3倍で買い取りましたが、王家は、いくらお支払いになってくださるのでございますか?」
「貴様っ!言わせておけば、図々しい!……(急に猫なで声を出し)……、さりとて100枚近くも不要ではないか?その温かい寝心地を儂にも、味わわせてくれぬものかなぁ。一晩で良いのだ。いや、昼寝でもよい。」
「ダメです!あれは、使用人のために買い与え、昨夜使用いたしましたものを陛下に献上やお貸しすることなどできません。」
「1枚も貸せぬと申すか?……ええいっ!不敬罪だ。」
これには、マリンストーン公爵も困り果て、
「そういえば、あの絨毯は、サイジア製のものでございました。すれば、聖女様はサイジア国のどこかにおいででは?」
「なぬ?まことか?ならばサイジア国へ密書を送り、聖女様の所在と安否を確かめさせようぞ。」
でも、国境警備からは聖女様が入国記録も出国記録も報告が上がってこない。ということは、聖女様はまだアンダルシア国内におられる可能性が高い。
ならば、今しばらくは猶予があるだろうとアンダルシアは睨む。まずは、タウンハウス周辺で聞き込みを行い、その後は、辺境領で異変がなかったかを探る。辺境領の入り口には、常に衛兵を見張りに立たせている。
話はそれで終わらなかった。暇乞いをして、マリンストーン公爵が帰り支度をしているとき、陛下も身なりを粗末なものに着替えておられる。
まさか?ついてこられるつもりではなかろうか?と心配していたら、案の定、
「たまには、マリンストーンの家で、くつろぎたいものよ。」
王家の紋章が入っていない馬車でついてこられることになったのだ。
マリンストーンの家に着くなり、陛下は使用人の制止も聞かず、家の中へどんどん入ってこられる。
「良いではないか、勝手知ったるマリンストーンだからな。ところで、どこにある?」
やっぱり、絨毯目的で押しかけて来たか?半ば諦めつつ、執事が自分用の絨毯を持って、陛下の前に。
「おお!これか!悪いな。ちと、帥の部屋を借りるぞ。」
陛下は言うが早いか、執事の部屋へまっしぐらに行く。執事は何かあった時のために1階の玄関近くに部屋を持っている。
王城では、ちょっとした騒ぎが起こっている。
「なんだとぉ?マリンsyトーン怪我聖女様の絨毯を買い占めだと?」
最後の100枚足らずを、オリヴィアがいじめたと流言をしたマーガレットの実家の公爵家がすべて買い取ってくれたのだ。
「聖女様には、ウチの愚娘のせいで、大変なご迷惑をおかけしたのでございますれば、これぐらいのお詫びは当然のことでございます。」
言い値の倍近い値段で買い占めてくれたのだが、マリンストーン家では、廊下やリビングに敷かず、寝室にベッドの上に敷いて、寝ているそうだ。
まるで電気毛布のかわりに、それはそれで心臓に悪いような気もするけど、使い道まで指図できる立場ではない。
そのことを王家が怒っているのである。
「すべてとは、言わないが、せめて半分ぐらいは王家へ献上してもよかろう?」
「は?なぜでございますか?マーガレットはバーモンド殿下、クリストファー殿下の手により、処刑されたのでございますよ?さんざん辱めを受けた挙句に。」
「それは、帥の娘が聖女様からいじめを受けたと報告したからではないのか?」
「マーガレットがいじめられていると最初に言い出したのは、クリストファー殿下ではあらせられませぬか?それをウチの娘一人に咎を負わせ、ウチの娘は聖女様が処刑されるところを救ったのでございますよ。それなのに、今度はホットカーペットを献上しろとは、あまりに無体な要求ではございませんか?当家は、売価の3倍で買い取りましたが、王家は、いくらお支払いになってくださるのでございますか?」
「貴様っ!言わせておけば、図々しい!……(急に猫なで声を出し)……、さりとて100枚近くも不要ではないか?その温かい寝心地を儂にも、味わわせてくれぬものかなぁ。一晩で良いのだ。いや、昼寝でもよい。」
「ダメです!あれは、使用人のために買い与え、昨夜使用いたしましたものを陛下に献上やお貸しすることなどできません。」
「1枚も貸せぬと申すか?……ええいっ!不敬罪だ。」
これには、マリンストーン公爵も困り果て、
「そういえば、あの絨毯は、サイジア製のものでございました。すれば、聖女様はサイジア国のどこかにおいででは?」
「なぬ?まことか?ならばサイジア国へ密書を送り、聖女様の所在と安否を確かめさせようぞ。」
でも、国境警備からは聖女様が入国記録も出国記録も報告が上がってこない。ということは、聖女様はまだアンダルシア国内におられる可能性が高い。
ならば、今しばらくは猶予があるだろうとアンダルシアは睨む。まずは、タウンハウス周辺で聞き込みを行い、その後は、辺境領で異変がなかったかを探る。辺境領の入り口には、常に衛兵を見張りに立たせている。
話はそれで終わらなかった。暇乞いをして、マリンストーン公爵が帰り支度をしているとき、陛下も身なりを粗末なものに着替えておられる。
まさか?ついてこられるつもりではなかろうか?と心配していたら、案の定、
「たまには、マリンストーンの家で、くつろぎたいものよ。」
王家の紋章が入っていない馬車でついてこられることになったのだ。
マリンストーンの家に着くなり、陛下は使用人の制止も聞かず、家の中へどんどん入ってこられる。
「良いではないか、勝手知ったるマリンストーンだからな。ところで、どこにある?」
やっぱり、絨毯目的で押しかけて来たか?半ば諦めつつ、執事が自分用の絨毯を持って、陛下の前に。
「おお!これか!悪いな。ちと、帥の部屋を借りるぞ。」
陛下は言うが早いか、執事の部屋へまっしぐらに行く。執事は何かあった時のために1階の玄関近くに部屋を持っている。
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