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38聖女様
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聖女認定を受けることになり、父とアールスハイド殿下が付き添ってくれることになったの。
アデセルの教会は、南国らしい教会で、風通しが非常にいい。通りすがりの人からでも、中の様子をうかがうことができる。
父の前でなんだけど、水晶玉を目の前にすると、緊張する。だって、聖女様になるには純潔でなければならなかったはずで、もう、アールスハイド殿下とは、その……、契りを交わした後で。
やっぱり、御領主様の口車に乗せられここまで来たけど、絶対ダメだわ。
司祭様はニコニコ顔をしていらっしゃって。オリヴィアが今にも逃げ出そうとするとは思っていないご様子。
でも、入り口も、窓も野次馬で、通れもしない人だかりができている。
ああ、やっぱり無理、無理。こんな大勢の人の前で、純潔ではないと知られてしまうのがコワイ。
もう、外へは歩けないかもしれない。
「大丈夫だよ。リヴィが、聖女様でなくても愛している。」
もう!他人事だと思って……。
「さ。こちらに手をかざしてください。大丈夫ですよ。フェンリルが今もこうやって、離れず、お傍にいるということは期待できますね。」
ライオンちゃんは、行くところがないから、ついて来ただけよ。
「やっぱり……、できません。コワイです。」
「大丈夫です。大きく息を吸って、はい、止めて。」
前世のレントゲン撮影みたいな掛け声に思わず笑ってしまう。
もう、どっちにしても逃げられないなら、さっさと済ませてしまおうとばかりに、水晶玉に手をかざす。
一瞬、何事もないかのような静まり方で、ほらね……、と振り返ろうとした刹那。
水晶玉からオリヴィアの手を突き抜けて、空高く金色の光が打ち上がった。そして、上空で、光が割れ、花火のように、アデセルの島全体に金色の光が包まれる。
それは遠目から見ても、わかるぐらいに華やかなおめでたい光だったのだ。
「な、な、なんだ?あの光は?」
「アデセル国からの光のように見える?」
「まさか?戦か?」
「いや、違う。これは聖なる光だ。」
「聖女様か!」
ちょうどその時、帰還途中の暗殺部隊にも見えた。
「全員に告ぐ!われら、ヤーパン国の騎士は、聖女様をお迎えに行くべく、これよりアデセル国へ戻るものとする。我らは聖女様とともにある。行くぞ!」
「おー!」
暗殺部隊が、再び、アデセルの港に着いたときは、アデセルはもう、お祭り騒ぎの真っただ中のことで、どこに行けば、聖女様に会えるかなんて、誰に聞いてもわからない。
常識的に考えれば、王都にいらっしゃるとは、思うが、その王都がどこにあるのかがわからない。
港からの道がわからない。仕方なく、丘の上の領主館を訪ねるものの、領主はあいにく不在だったのだ。
オリヴィアは、王都に居ず、領地へ引っ込んでしまったのだ。あまりにも、騒ぎが大きくなり、王都や王城への出仕は難しい。
アールスハイド殿下と共に、領地へ引っ込むことにしたのである。
まぁ、聖女様になってからは、アールスハイド殿下との婚約は、すぐに調ったことは良かった。
だれからも異議を唱えられることなく、晴れて殿下の許婚となる。
聖女様にならなければ、永久に殿下と婚約できなかったかもしれないことなので、それはそれでよかったと思う。
それまでは、得体のしれない流れ着いた医者の立場だったから。
「結婚式まで、まだ時間があるから一度、殿下を伴って、アンダルシアに帰っては、どうかな?あ、でも、もうアデセルの侯爵の地位を頂いたから、必要ないか?ただ、あのサイジアの絨毯をどこで売りさばこうかと思ってな。」
お父様から言われるまで、絨毯のことなどすっかり忘れていた。
ジェシードに頼んで、他の国で売ってもらおうかしらね。
アデセルの国で敷くには、あまりにも暑い。
アデセルの教会は、南国らしい教会で、風通しが非常にいい。通りすがりの人からでも、中の様子をうかがうことができる。
父の前でなんだけど、水晶玉を目の前にすると、緊張する。だって、聖女様になるには純潔でなければならなかったはずで、もう、アールスハイド殿下とは、その……、契りを交わした後で。
やっぱり、御領主様の口車に乗せられここまで来たけど、絶対ダメだわ。
司祭様はニコニコ顔をしていらっしゃって。オリヴィアが今にも逃げ出そうとするとは思っていないご様子。
でも、入り口も、窓も野次馬で、通れもしない人だかりができている。
ああ、やっぱり無理、無理。こんな大勢の人の前で、純潔ではないと知られてしまうのがコワイ。
もう、外へは歩けないかもしれない。
「大丈夫だよ。リヴィが、聖女様でなくても愛している。」
もう!他人事だと思って……。
「さ。こちらに手をかざしてください。大丈夫ですよ。フェンリルが今もこうやって、離れず、お傍にいるということは期待できますね。」
ライオンちゃんは、行くところがないから、ついて来ただけよ。
「やっぱり……、できません。コワイです。」
「大丈夫です。大きく息を吸って、はい、止めて。」
前世のレントゲン撮影みたいな掛け声に思わず笑ってしまう。
もう、どっちにしても逃げられないなら、さっさと済ませてしまおうとばかりに、水晶玉に手をかざす。
一瞬、何事もないかのような静まり方で、ほらね……、と振り返ろうとした刹那。
水晶玉からオリヴィアの手を突き抜けて、空高く金色の光が打ち上がった。そして、上空で、光が割れ、花火のように、アデセルの島全体に金色の光が包まれる。
それは遠目から見ても、わかるぐらいに華やかなおめでたい光だったのだ。
「な、な、なんだ?あの光は?」
「アデセル国からの光のように見える?」
「まさか?戦か?」
「いや、違う。これは聖なる光だ。」
「聖女様か!」
ちょうどその時、帰還途中の暗殺部隊にも見えた。
「全員に告ぐ!われら、ヤーパン国の騎士は、聖女様をお迎えに行くべく、これよりアデセル国へ戻るものとする。我らは聖女様とともにある。行くぞ!」
「おー!」
暗殺部隊が、再び、アデセルの港に着いたときは、アデセルはもう、お祭り騒ぎの真っただ中のことで、どこに行けば、聖女様に会えるかなんて、誰に聞いてもわからない。
常識的に考えれば、王都にいらっしゃるとは、思うが、その王都がどこにあるのかがわからない。
港からの道がわからない。仕方なく、丘の上の領主館を訪ねるものの、領主はあいにく不在だったのだ。
オリヴィアは、王都に居ず、領地へ引っ込んでしまったのだ。あまりにも、騒ぎが大きくなり、王都や王城への出仕は難しい。
アールスハイド殿下と共に、領地へ引っ込むことにしたのである。
まぁ、聖女様になってからは、アールスハイド殿下との婚約は、すぐに調ったことは良かった。
だれからも異議を唱えられることなく、晴れて殿下の許婚となる。
聖女様にならなければ、永久に殿下と婚約できなかったかもしれないことなので、それはそれでよかったと思う。
それまでは、得体のしれない流れ着いた医者の立場だったから。
「結婚式まで、まだ時間があるから一度、殿下を伴って、アンダルシアに帰っては、どうかな?あ、でも、もうアデセルの侯爵の地位を頂いたから、必要ないか?ただ、あのサイジアの絨毯をどこで売りさばこうかと思ってな。」
お父様から言われるまで、絨毯のことなどすっかり忘れていた。
ジェシードに頼んで、他の国で売ってもらおうかしらね。
アデセルの国で敷くには、あまりにも暑い。
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