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10お土産
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ステファニーおばあさんの手紙で、また聖女様を呼び出す。
オリヴィアとライオンちゃんに結界を張ってもらい、取り囲んでいる兵士を無視して進むと、バーモンドは護衛が止めるのも聞かず
「なんだ?なんの騒ぎだ?……!……オリヴィアではないか?会いたかったぞ。」
「ええっ!聖女様ぁっ⁉」
今までさんざん威嚇して、取り囲んでいた兵士たちが一斉に跪く。
「わたくしに無体なことをしておきながら、よくもおめおめとそのようなことをおっしゃいますわね。」
「まぁ過ぎた話はよせ。オリヴィアに話があって来たのだ。」
「わたくしにはないです。お引き取りを。」
「どうも話が見えておらぬようだな?人の話は最後まで聞く。これは基本だぞ?」
「アンタに言われたくないわよ。」
わざと怒らせようとして、「アンタ」呼ばわりしたと言うのになぜかバーモンドはニコニコしている。
「まぁ、そうカッカするな。話と言うのは、オリヴィアが聖女様と聞く。どうか私の妻になってほしい。」
護衛に「例のものを」と言い、濃い紫色のビロードの布に包まれた宝石箱のようなものを差し出してきた。
「は?殿下には素晴らしい女性がいらっしゃるではありませんか?」
「ああ、あの女は穢れてしまったので、処分した。」
「穢れた?そうですか?……。わたくしは聖女様ではございません。」
マリリンちゃんの話では、今この段階ではわたくしはまだ聖女様になる前のことらしいから、嘘ではないだろう。
「はて?国教会の調べによると、オリヴィアが聖女様で間違いないという話だが?」
「では、バーモンド殿下に特別にいいことを教えて差し上げましょう。真の聖女様は別にいらっしゃるということです。」
「それは誰かを教えてくれるのか?」
「はい。お人払いをお願いします。それともクリストファー殿下にお教えしてもよろしいでしょうか?」
「よかろう。皆のもの下がれっ!」
あんなに大勢に囲まれていたのに、殿下の号令ひとつで蜘蛛の子を散らすように、どこかへ去っていく。
「さぁ、みんな下がったぞ。約束通り言ってもらおうか?」
「はい。王都の学園近くに一軒家の元はブティックを経営していらっしゃった垢ぬけたステファニー様と言う方が住んでいらっしゃいます。その方が聖女様だと思います。わたくしとペットに結界を張ってくださいましたのも、そのステファニー様でございます。」
「ステファニー嬢が聖女様か。聖女様にふさわしい美しい名前だ。大儀である。」
それってどういう意味よ?と言いたいところをグッと堪える。
殿下は殿下で、さっき差し出した宝石箱をもう引っ込めている。きっとステファニー様に差し上げるつもりでいる。
「では、わたくしはこれにて。」
一礼して、バーモンド殿下の前を立ち去る。
たぶん、ステファニー様が真の聖女様だとは思うが、殿下には若い女性ではないということは言っていない。勝手に勘違いしている。でも聖女様であれば、誰でもいいのなら、お年寄りでも構わないのでは?と思ってのこと。
それにマーガレット様が穢れたとはどういう意味だろう?あんなに慈悲深い方が浮気するとも思えない。ただ、オリヴィアに冤罪をかぶせたことは許しがたいが。それ以外は完璧な淑女様だったというのに。
どうでもいいや。
先を急ごう。冬になる前に帰らなければ、雪で閉ざされる。
振り返ると大急ぎで支度をして、王都へ引き返す準備をしているのが見える。
こんなにうまくいくのなら、クリストファー殿下にも、この話を教えてあげればよかったと思う。
あともう一つ山を越せば、いよいよ辺境領だ。今さらながら、お土産を買って帰ることを忘れていたことに気づくが、しいていえば、ライオンちゃんがお土産かな?
オリヴィアとライオンちゃんに結界を張ってもらい、取り囲んでいる兵士を無視して進むと、バーモンドは護衛が止めるのも聞かず
「なんだ?なんの騒ぎだ?……!……オリヴィアではないか?会いたかったぞ。」
「ええっ!聖女様ぁっ⁉」
今までさんざん威嚇して、取り囲んでいた兵士たちが一斉に跪く。
「わたくしに無体なことをしておきながら、よくもおめおめとそのようなことをおっしゃいますわね。」
「まぁ過ぎた話はよせ。オリヴィアに話があって来たのだ。」
「わたくしにはないです。お引き取りを。」
「どうも話が見えておらぬようだな?人の話は最後まで聞く。これは基本だぞ?」
「アンタに言われたくないわよ。」
わざと怒らせようとして、「アンタ」呼ばわりしたと言うのになぜかバーモンドはニコニコしている。
「まぁ、そうカッカするな。話と言うのは、オリヴィアが聖女様と聞く。どうか私の妻になってほしい。」
護衛に「例のものを」と言い、濃い紫色のビロードの布に包まれた宝石箱のようなものを差し出してきた。
「は?殿下には素晴らしい女性がいらっしゃるではありませんか?」
「ああ、あの女は穢れてしまったので、処分した。」
「穢れた?そうですか?……。わたくしは聖女様ではございません。」
マリリンちゃんの話では、今この段階ではわたくしはまだ聖女様になる前のことらしいから、嘘ではないだろう。
「はて?国教会の調べによると、オリヴィアが聖女様で間違いないという話だが?」
「では、バーモンド殿下に特別にいいことを教えて差し上げましょう。真の聖女様は別にいらっしゃるということです。」
「それは誰かを教えてくれるのか?」
「はい。お人払いをお願いします。それともクリストファー殿下にお教えしてもよろしいでしょうか?」
「よかろう。皆のもの下がれっ!」
あんなに大勢に囲まれていたのに、殿下の号令ひとつで蜘蛛の子を散らすように、どこかへ去っていく。
「さぁ、みんな下がったぞ。約束通り言ってもらおうか?」
「はい。王都の学園近くに一軒家の元はブティックを経営していらっしゃった垢ぬけたステファニー様と言う方が住んでいらっしゃいます。その方が聖女様だと思います。わたくしとペットに結界を張ってくださいましたのも、そのステファニー様でございます。」
「ステファニー嬢が聖女様か。聖女様にふさわしい美しい名前だ。大儀である。」
それってどういう意味よ?と言いたいところをグッと堪える。
殿下は殿下で、さっき差し出した宝石箱をもう引っ込めている。きっとステファニー様に差し上げるつもりでいる。
「では、わたくしはこれにて。」
一礼して、バーモンド殿下の前を立ち去る。
たぶん、ステファニー様が真の聖女様だとは思うが、殿下には若い女性ではないということは言っていない。勝手に勘違いしている。でも聖女様であれば、誰でもいいのなら、お年寄りでも構わないのでは?と思ってのこと。
それにマーガレット様が穢れたとはどういう意味だろう?あんなに慈悲深い方が浮気するとも思えない。ただ、オリヴィアに冤罪をかぶせたことは許しがたいが。それ以外は完璧な淑女様だったというのに。
どうでもいいや。
先を急ごう。冬になる前に帰らなければ、雪で閉ざされる。
振り返ると大急ぎで支度をして、王都へ引き返す準備をしているのが見える。
こんなにうまくいくのなら、クリストファー殿下にも、この話を教えてあげればよかったと思う。
あともう一つ山を越せば、いよいよ辺境領だ。今さらながら、お土産を買って帰ることを忘れていたことに気づくが、しいていえば、ライオンちゃんがお土産かな?
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